雪の日 1
長くなりそうだったので分割しました!
分割すると短い、合体させると長い。難しい…。
翌日、あまりの寒さに目が覚めた。窓の外を見ると、一面が雪で真っ白に覆われていた。夜中にかなり降ったのだろう。
「こんなに積もるんだ。すごいね」
「これだけ降るのは珍しいですよ。年に一度あるかどうか…」
今日なら、あれが見られるかもしれない。
「わたしは出かけますけど、タクヤさんも一緒にどうですか?」
「えっ、この雪の中、出かけるの?」
「はい」
雪が大量に積もる日にしかない実があるのだとタクヤに伝えると、一緒に行くと言ってくれた。タクヤが作ってくれたスープで身体をあっためる。最近のお気に入りはコーンスープだ。
「まずは、家の外に出られるか確認しないと」
玄関の扉は、あまり抵抗なくすんなりと開いた。しかし、玄関から地上へと続く階段は、ほとんど雪に覆われている。幸い、雪はやんでいたので、防寒具を着込んで外へ出た。手に持ったスコップを使って、階段のあたりだけ雪かきをする。これで出入りの心配はないはずだ。
「そんなに遠くはないですから、ゆっくり行きましょう」
慎重に歩かないと、足を取られそうになるくらい雪が積もっている中を、2人で歩いていく。銀世界の中に、雪を踏みしめたわたしたちの足跡だけが残されていた。
「正直、賭けです。あるといいんですけど」
話しているときに息が白くなるのが少し楽しくて、意味もなくハーッと息を吐いてしまう。
「最近外に出てなかったし、運動にもなるからね。なくても気にしないよ」
10分ほど歩くと、大きな池がある場所に出た。完全に凍っているのが見てとれる。
「ここ、大きな池になってるんです。凍ってるので気をつけてくださいね」
「わかった」
「この池の近くにある植物なんです。雪の上にオレンジ色の実が…」
タクヤに説明しながら歩いていると、視界の端に待ち望んでいたものが見えた。
「あった!ありました!」
少し小ぶりだが、去年は実がなっているところを見ることができなかったので、見つけられただけでも良しとしよう。
「滅多に見られないんですよ!良かった!」
そばに行き、タクヤと2人でしゃがみ込む。触ることはなく、眺めているだけだ。
「……ところで、これ何?」
そうだった。タクヤには説明していなかった。あまりメジャーなものではないので、図鑑には記載されていないし、薬にしないのでわたしのノートにも書かれていない。
「この実、トーミンっていうんです。すごく珍しいものでして…」
「うん」
「えーと…、珍しいから、見た人には幸運が訪れるっていうもので…」
「うん」
「……だから、タクヤさんに見て欲しくて」
だんだんと恥ずかしくなり、タクヤの顔を見られなくなる。わたしの耳が赤いことなんて認めたくない。これはきっと寒さのせいだ。
「………うん?」
「でも、もし見つからなかったら、がっかりさせちゃうと思って言えなかったんです…」
「え、ちょっと待って。この実を薬に使うんじゃないの?」
「特にこれといった効果はないですね」
タクヤからの返事がない。隣にいるはずのタクヤを見ると、肩が小刻みに震えている。
「フフッ、そっか、僕のためだったんだ。ありがとう、サラ」
「喜んでもらえて良かったです」
タクヤの笑った顔につられて、わたしも自然と笑顔になる。タクヤに一緒に来てもらえてよかった。
「……かわいい」
「へ?この実ですか?たしかに小さくてかわいいですよね」
「……………そうだね」
タクヤが微妙な顔をする。
……もしかして、この実が欲しいのかな?
「貴重なものなので、いつもは見るだけなんですけど…。1つくらいなら持って帰っても大丈夫だと思いますよ?」
「いや、いいよ。そっとしておこう」
タクヤが首を振る。それならもうここに用はないからと、わたしは立ち上がった。
「それじゃあ、帰りましょうか」
タクヤにトーミンを見てもらいたいという目的は果たした。そろそろ帰らなければ。
「そうだね。ずっと外にいると、さすがに寒い」
わたしは、トーミンを見れたことが嬉しくて、すっかり忘れていたのだ。そばに池があったことを。
お読みいただき、ありがとうございました!
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分割しないほうが読みやすいのかな…
合体させるかも。悩み中です。




