09:朝の姉さん
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入学式翌日、いつもより早く起きて朝食の準備をする。寒い……。
今日は酒花さんと一緒に生徒会長に会いに行く日だ。とはいえ、会長さんは私一人で来ると思っていると思う。
なんにせよ、誤解が解けるといいなぁと思いながら豚汁を作る。寒い朝には栄養たっぷりの豚汁がよく合う。多めに作っておこうかな。カレー粉とカツオダシを足してうどんにかけ、カレーうどん風にもできるし。
料理といえば、食堂のランチが美味しいらしいし、昼が楽しみだ。
豚汁が完成した。あとはご飯をよそって、ふりかけでもかければいいかな。
しかし、まだ6時にもなっていないので、姉さんは起きてこない。学校の準備はもう出来ているし、時間もある……うーん、どうしようかな。
一人で朝食を採るのはなんか寂しいし、姉さんと食べよう。
いつもどうりなら寝ぼけてぼーっとしてる時間だし、とりあえずお湯を湧かしてあったかいおしぼりを作るか。熱いお湯の入ったやかんに水を足して適温に、それを畳んだ大きめのタオルにかけて絞ったら完成!
おしぼりを持って二階の姉さんの部屋へ。
「姉さん、入っていい?」
「はーぃ」
気の抜けた返事が返ってきたので遠慮なく。
しかし、毎度ながら、この部屋の女子力の無さはすごいな……。まず、机やタンスは、ばあちゃんの家にあった百年前の物を修理したもの。竹刀が傘立てに数本ささっており、壁には無数の賞状と和紙に書かれた『日々精進』の文字。床に転がる重りがアクセント……。
そんな部屋の主はアンティークなベットにのんびり腰掛けていた。
「おはよう、姉さん。はい、あったかいおしぼり」
「ん、ありがと……ひの……」
あったかいおしぼりを顔に当てると、とても気持ちいいんだよなぁ。
「どういたしまして。目は覚めた?」
「んぅ……もう少し……」
「了解」
っと、そろそろかな。
「ふぅ、おはよう氷野。目が覚めたよ、ありがとう」
「おはよう姉さん。ご飯出来てるから食べよう?」
「いつもすまんな。どうにも朝と料理には弱くてな……」
「気にしないで。今日は豚汁だよ」
「いただこう」
姉さんと朝食を採る。やっぱり、豚汁はうまい。
「ところで姉さん、生徒会長ってどんな人?」
「なんだ藪から棒に。……また厄介ごとか?」
「そんなとこだよ。で、どんな人なの?」
「そうだなぁ、私は本人と関わりはないが、友達に生徒会の金折ってヤツがいるし聞いてこよう」
「えっ」
「なんだ? 知り合いか?」
「っていうか、勘違い組筆頭だと思う……」
姉さんの友達だったのか……姉さんは人と仲良くなるのがうまい。いいなぁ。
「あぁ……あいつ、臆病な癖に正義感がとんでもないやつだからな……。中学の頃泣きながら不良を更生させたって伝説があるくらいだ」
「えぇ……。じゃあ、姉さんは私のことは知らないふりしてもらっていい?」
「別に構わないけど、どうしてだ?」
「学校でどんな風に噂されてるか知りたいからね。家族ってばれると姉さんに遠慮したり、逆に更生させるみたいな厄介ごとになりそうだし……」
調べれば分かるだろうけど、わざわざバラすこともない。
「わかった。……あ、噂で思い出した。新入生に頭脳犯とヤクザっぽいのがいるってやつ、頭脳犯の方は氷野かもな」
「はぁ……。……で、でも私昨日一人クラスメイトと仲良くなれたし!」
「えぇ?! まじで?」
「うん。自分でも驚くくらいだし……」
「そっか……最初の一人が難しいっていうし、おめでとう」
「……ありがとう」
その後、女子であることにまた姉さんが驚いたりしたが朝食は終了した。
電子時計は4月8日火曜日6時43分。出発しなきゃな。
「じゃあ姉さん。用があるからもう出るね」
「そうか、無理すんなよ。……氷野」
「ん?」
姉さんに抱き着かれた。
「氷野の言うように高校では他人のふりしとく。ただ、お前は私の大事な弟だ。困った事があったら言え、そうでなくとも言え。私はお前の姉だ……甘えていいぞ?」
「姉さんかっこよすぎ……惚れるよ?……」
「構わないよ。さて、頑張ってきな」
「うん。いってきます」
てなわけで、私のシスコン度が上がるだけ上がった朝だった。
次回は今週中には。