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スーサイド・カンパニーへようこそ(3)

「ご愁傷様です。今際の際へようこそ」


 しんしんと雪の降り積もる静かな夜だった。

 数日前にいつもより遅い初雪を観測したばかりだというのに、あっという間にその雪は街を覆い尽くし、かすかに残った秋の匂いを追い出してしまった。


 店長のフローラは、月末に行われる、第三区の店長と幹部が集まる会議、通称『区会』に出席している。

 夜の9時には出勤すると言っていたけれど、こんな積雪の中を歩くのはあまりにも不憫だ。

 もう家に帰ってゆっくり休めばいいのにとアリスは思った。ただでさえ良く働いているのだから。

 フローラは、アリスが会ったどの社員よりも時間外労働をしている。

 まず出勤時間が早い。

 最低でも就業開始の2時間前には店に来ている。

 それを知ったのは、アリスがいつもは持って帰るはずの靴磨き用の道具を忘れたときのことだった。

 アリスは身だしなみを整えることに人より強い執着を持っており、制服や靴を新品以上に美しくすることは仕事を超えて最早趣味だった。

 寝る前には必ずメイド服をアイロンでプレスし、靴を黒い鏡面のように磨き上げる。

 いつものように会社支給のトランクから靴磨きセットを取り出そうとしたがーー入っていない。

 会社のロッカーに忘れてきた。

 そういえば今日は出勤前に気になる汚れを見つけて、それを直すためにバックヤードで靴磨きセットを使用してそのままロッカーに入れてきてしまったのだった。仕方なくアリスはいつもより2時間早く店に出勤した。


『あら、早いわねどうしたの?』


 それはこちらのセリフだとアリスは思った。

 アリスは理由を説明する。


『ああ、道理で毎日完璧な着こなしなのね。毎日一糸乱れぬ美しい銀髪、ヘッドドレスもリボンもずれない。靴は光り輝きすぎて朝日が登ったかと錯覚するほどだもの』


<つづく>


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