↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱スライムテイマーは超特化の力で最強へと至る  作者: 伊藤ほほほ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/44

9

 家に帰ると、辺りはもうすっかり暗くなっていた。

 でも、まだ僕の一日は終わりじゃない。窓から漏れる明かりを頼りに槍を振る。


「せいっ!」


 強く大地を踏み締めて、腰の回転に合わせて横薙ぎ。

 歪んだ柄が抵抗で震え、刃が空気を切り裂きビュンと鋭い音がする。

 でも、武器の重さと遠心力で体が持っていかれてしまう。

 僕の体格と筋力では、斬るより突いた方が良さそうだ。


「てやっ!」


 鋭く踏み込み、穂先を真っ直ぐに押し出す。

 頭の中でオークの姿をイメージして、下から上に心臓を狙った突きを放つ。

 オークの体高は二メーターを軽く超える。ダグランス一号なら、僕の身長でも戦えそうだ。


 体を動かさずにはいられない。

 一週間なんてあっという間。もたもたしていたら、すぐに試合当日になってしまう。


「たああああっ!」


 踏み込んで突く。

 縦に横に斬る。

 回転して石突で叩く。

 一心不乱に槍を振り続ける。


 ダグランス一号は、普通の槍とは違う。

 丁寧に研磨されて整えられているとはいえ、枝の湾曲をそのままに少しだけ柄が蛇のようにうねっている。

 曲線が僕の手幅のちょうどいい部分にあるので、握りやすいし滑らない。まさしく僕専用の槍。込めた力が、そのまま穂先まで伝わる感じだ。

 もしかして、ダグラスさんはここまで計算して作ってくれてたのかな? 


「カイト、そろそろご飯よー!」


 ママに呼ばれてしまった。もうそんな時間か。

 槍を振るって、かなり疲れるんだな。滝のように汗が噴き出しているし、喉がヒューヒュー鳴って息が苦しい。


 椅子に座って呼吸を整えつつ、コップの水を一気飲み。失った水分が体に染み渡り、入ったそばから玉のような汗となっておでこに滲む。

 大慌てで両手を動かし、パンにスープ、川魚のフライも全部一気に胃袋へご案内。おかわりまで忘れない。


「ごちそうさまでしたー!」


 夕飯を食べて、また訓練を再開する。

 槍の基本なんて分からないから後日調べるとして、今は体を作るとともに重さに慣れるのが目的だ。


 途中から、疲労で頭が空っぽになってしまった。

 ひたすら無心でオークの幻影に立ち向かい、急所を目掛けて刺し続ける。

 自分の意思とは関係なく手から柄が滑り落ちたところで、膝から崩れ落ちてしまう。

 これ以上は動けない。訓練終了だ。

 手のひらは真っ赤に腫れ上がり、マメが潰れてヌルヌルと滑る。

 明日からは、手のひらを保護する何かしらの対策が必要かもしれない。


 シャワーを浴びると、両手が焼けるように痛む。

 筋肉は熱を持ち、全身が熱い。

 お湯から水に切り替えると、疲れが抜けていくような気がした。


 タオルで髪を拭きながらリビングに戻ると、パパとママが楽しそうに喋っている。

 どうやら僕が槍を振っているときに、パパが色々とアドバイスしてくれてたみたい。自分の世界に入ってしまっていたから気づかなかったけれど、もっと腰を落とせとか、踏み込みが甘いとか色々と。

 僕に無視されたって話を面白おかしくしているようだ。


「おうカイト、頑張ってたじゃねえか」


「うん、もうヘトヘトだよ。手のひらがぐちゃぐちゃになっちゃった」


「だと思ったぜ。ほら、これ塗ってママに包帯巻いてもらえ」


「パパありがとう!」


 パパは薬屋の店長で、店で調合した薬をいくつも家に置いている。炎症と化膿止めの軟膏を用意してくれたらしい。

 テーブルの上に両手を置くと、ママが優しく治療してくれた。

 薬草入りの軟膏は効き目が凄まじく、みるみるうちに痛みが引いていく。


「まったく、初日から無茶して。ほどほどって言葉を知らないのかしら。誰に似てお馬鹿さんなんでしょうね?」


 僕の槍より鋭くなったママの両目がパパを睨む。

 可哀想に、完全にとばっちりだ。


「ぼ、僕もう行くね! パパ……あとは頑張って!」


 まだやることが残っているので、早めに会話を切り上げて部屋に戻った。

 借りてきた本を読まなければならない。机に座り、齧(かじ)り付くように文字を追う。

 欲しい知識は山程ある。槍術だって覚えたいし、オーク以外のモンスターの情報もレベル上げには必要だ。


 体力の限界を迎え、上半身が勝手に船を漕ぎ始めたところでベッドに入る。

 ママの言う通り、初日から飛ばしすぎたのかもしれないな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。