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「コロマル、お疲れ様。そろそろお家に帰ろう」
"は~い! 楽しかったぁ!"
コロマルの頭を撫でて帰路につく。
人目を避けようと少し遠回りをしてみたが、どうしたって人とはすれ違う。
現状ヒュージスライムという種族を知っているのは、僕とパパとママだけ。
ふとした拍子に、コロマルを隠しているシートが飛んでしまうかもしれない。
……少し不安になってきた。
リアカー以外にもいい対策があればなぁとは思う。
「……て、感じでさ。どうしたらいいかな?」
というわけで、家に帰って夕飯を食べながら早速パパとママに相談してみた。
僕には考えつかなくても、パパは頭がいいしママはちょっと変わってるから、一人で悩むよりいいと思って。
「でかくなったんなら、ちっちゃくなれねえのか?」
パパのアイディアはもう試したけど無理だったんだよね。
「そうねぇ、お洋服を着せるとか? コロマルちゃんは形を変えられるでしょ? 練習したら人みたいに動けるんじゃない?」
いやいや、それは流石に……できるのか?
何を突拍子もないことを言ってるんだろうと最初は呆れたけど、ありかもしれない。
「コロマル、僕みたいになれる? 顔があって、首があって、その下に体。そこから手脚を生やしてさ」
"どうだろ? ちょっとやってみるね!"
コロマルの体が、ウニョウニョと動いて変形していく。
まずは頭か。ツンツルテンの楕円形だ。
そこから首が伸びて、体ができた。ちゃんと肩があるし、ウエストにくびれもある。
バランスが取りにくいのか、フラフラと倒れそうに慣れながら二本足を生やす。
両手ができれば……すごい、完璧じゃないか!
見上げるほどの巨人が現れた!
「こりゃダメだな……。でかすぎて逆に目立っちまう。カイトの二倍くらいあんじゃねえの? いや、すげえはすげえんだけどな。普通のスライムにこんなことはできねえし、これも超特化ってやつのおかげなんかね?」
まあそうだよね。
パパから真っ当なダメ出しを食らってしまった。
"ごめんねカイト……"
しょんぼりしながら、コロマルが元の姿に戻っていく。
謝ることないのに。だって、この子は初めての変化で人の形を再現してみせたんだから。
どんどんイメージが湧いてくる。コロマルと僕が、どんどん強くなる姿が目に浮かぶ。
「コロマル、やっぱり君は最高の相棒だよ! 確信した。僕とコロマルなら、世界最強になれる!」
"えぇ、本当? やったぁ! コロ、もっともっと強くなりたい!"
飛び跳ねて喜ぶコロマルだが、家の中でそれはやめて欲しい。棚の中の食器が揺れて、ママが不安そうな顔をしているからね。
「おっ、今日は軍師アイデルン・バランティーヌの試合か!」
テレビを見始めたパパが興奮している。
みんなでソファーに移動して、モンコロの観戦を始めた。
試合を見るのは久しぶりだなぁ。
アイデルン・バランティーヌ……サモナーの中でも強さは下の方になってしまうゴブリン特化なのだが、戦略と指揮能力が素晴らしい。
つば広のとんがり帽子がトレードマークで、全体的に薄紫色をした吟遊詩人みたいな格好をしている。
どんなモンスターが相手でも、ゴブリン達は簡単に倒されていく。しかし、劣勢を巻き返して最後に降参するのは相手の方だ。
誰の目から見ても、技術で勝っているのが分かるから、アイデルンさんの試合は面白いんだよね。
今回の相手は勢いのある新人闘士で、ラッド・マックスマンという名前らしい。僕はよく知らないけれど、女性から人気がありそうな爽やかイケメンだ。
紺色の長髪をさらりとかき上げ、手を振りながら登場すると、黄色い歓声が上がる。
もうスポンサーがついてるみたいで、アイデルンさんと戦わせて人気を押し上げようという魂胆が見え見えだ。
こちらは、珍しいメギュラス特化。硬い皮膚に頑丈な角が強力なサイ型のモンスターで、攻守に優れている。
これは盛り上がりそうだぞ。
「――バトルスタートッ!」
実況による試合開始の合図で、両者が動きだす。
アイデルンさんの布陣は、ゴブリンキングを最後尾にして、その前にアーチャーたちが弓を構えている。
前列にレッドゴブリンとゴブリンリーダーがまばらに混じっている感じだ。
ゴブリンは、少ない魔力で召喚できるってメリットがあるから、数が多いんだよね。
対してラッドさんは、アイロンアーマードメギュラスを5体横並びに召喚した。
金属鎧みたいな皮膚に、体長4メーターを超える巨体。圧倒的な重量で相手を押し潰すつもりだろう。
先手を打ったのは、アイデルンさんのゴブリンアーチャー。ラッドさん本体を狙って矢を放つ。
そんなもの気にしないとばかりにラッドさんは前に出て、真ん中のメギュラスを盾にして躱す。
そのまま両翼を上げ、4体の鎧に包まれた巨獣がゴブリンの集団を囲い込み、蹂躙していく。
ゴブリンキングがなんとか耐えることでぎりぎりのところで凌いでいるが、個の力の差がえげつない。
……一方的かと思われた。
しかし、いつの間にか召喚されていたゴブリンエリートがラッドさんに迫る。
「そう、そこよ! アイデルン、やっちゃいなさい!」
ゴブリンエリートは、主人を守るメギュラスの角で串刺しにされてしまう。
その瞬間……エリートの背に隠れていたレッドゴブリンシーフが飛び出す。
低い姿勢で地を這うように距離を詰め、真っすぐに突き出された青白く光るナイフがラッドさんの首に刺さる手前で止まった。
両手を上げたラッドさんが降参を宣言し、ゲームセットだ。
アイデルンさんらしい見事な試合だった。
ふとママを見ると、大興奮して立ち上がり、シュッシュとパンチを繰り出している。
僕はコロマルを見て、あぁ……あれか……と笑った。




