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感極まってしまい、しばらく立ち止まってしまった。
色々とあったから、心が弱くなっているのかもしれない。
もっと気持ちを強く持たなきゃ。こんなんじゃスラマルに笑われちゃうよ。
「僕ったら男なのに、泣いてばっかりだな。よし、気合いを入れ直そう!」
僕は、自分の両頬を手のひらで叩く。
パシンと乾いた音がして、心が引き締まった気がした。
「さて、次はどうしようかな?」
もう一体テイムしたいし、スラマルにも強くなって欲しい。
僕のレベルも上げないとだから、やるべきことが盛りだくさんだ。
何から手をつけるか迷うけど、まずは二体目をテイムかな。それぞれのレベルを上げてやれば、その分だけ僕も強くなるし。超特化を活かすにはそれが一番だと思う。
レベルが上がったら、危険だけど自由に行動させてスライム同士で戦わせるのもありか?
ステータスは嘘をつかないし、うちの子たちが勝ってくれるだろう。
考えれば考えるほど楽しくなってくる。そうか、これがテイマーなんだ。
「さあ、行こうかスラマル!」
僕が歩き始めると、スラマルは体を伸び縮みさせ、ズリズリと地面を這いずりながら一生懸命に後ろをついてくる。
仲間って感じがするし、とっても可愛いんだけど……。
「ねえスラマル、もっと速く動けない?」
しゃがんで目線を近づけ、質問してみた。
頑張ってるのは分かるんだけど、あまりにも遅い。
"カイト様、ご期待に沿えず申し訳ありません……"
スラマルがクネクネと体を左右に捻り、それは無理だと否定の意思を示す。
スラマルったら、すごく困ってるみたい。何を考えているのか分かるから、余計に可愛く思えてくる。
「うーん、どうしようかなぁ。……そうだ! 転がるのはどう? こんな感じにさ!」
今は重力に負けて半球状になっているスラマルだが、元はボールのようにまん丸のはず。
だったら転がればいい。
僕は草の上で、何度もでんぐり返しをしてみせる。
"な、なるほど! そのような移動手段があったとは感服しました。カイト様、もしや天才では? さっそく試してみます"
了解とばかりにポヨンと前に跳ねたスラマル。空中でぐにゃりと体を変形させて丸くなり、全身を固めているらしく地面に着地しても崩れない。
そして、飛び上がった勢いを助走として転がっていく。
うん、なかなかに速い。
地面のでこぼこで弾んでいるのが不安だけど、転がれば転がるほどに加速する。
これなら問題なさそうだ。
……と、思いきや。スラマルが平たくなって、原っぱにへばりつくようにして動きを止めてしまう。
「あらら? どうしたんだよ、いい調子だったのに」
"……はぁ、はぁ。これ疲れますね。もう無理かもしれません"
どうやら体をボール状に維持するのはかなりの力を使うようで、ヘトヘトに疲れてしまったらしい。スラマルから弱々しい謝罪の気持ちが伝わってきた。
ステータスが低いから、今は少ししか進めないのかも。レベルが上がって強くなれば、そのうち出来るようになるだろう。
それよりも、僕のお願いを聞いてくれたことが嬉しい。自慢の相棒だよ。
実はスライムって、感情豊かなんだね。どんどんスラマルのことが好きになってくる。
「もう、しょうがないなぁ。君は友達だから、特別だよ?」
最適解に気づいてしまった。
槍を背負い、ふんわりと優しくスラマルを抱っこして、再び森の中を進む。
両腕がひんやりと冷たい。
"そ、そんな! 光栄ですカイト様!"
スラマルはずいぶんと大袈裟だなぁ。
大したこと言ってないのに僕が天才だとか、今だって持ち上げただけなのに恥ずかしそうに喜んでる。
「今日はいい天気だね」
とぐろを巻くスネークウッド、長く細い幹の上でこれでもかと枝葉を広げるスカイパラソル、甘い紫色の実をぶら下げたパープルペア。どの木もたくましく、生命力が感じられる。
葉っぱの間から差し込む木漏れ日が気持ちいい。
影ができたところでは光苔が生い茂り、薄ら緑色に光っている。
小さな翼を生やした妖精を思わせるキノコ――フェアリーマッシュは、ぼんやりと白く輝く。
放出された胞子が、暗闇の中で夜空を彩る星々のように宙を漂う。
すごく幻想的な光景だよね。
「ラビちゃんともよく遊びに来てたんだ。薬草を摘んでパパに持っていったり、果物を採って食べたり。楽しかったなぁ……」
つい最近の出来事なのに、思い浮かべるとずいぶん昔のことのように感じてしまう。
"ラビちゃんとはまさか、カイト様の思い人ですか? 主君に見初められるとは羨ましい限りです"
「うん、大切な幼馴染なんだ。ドラゴンサモナーになって、領主様の館に連れていかれちゃった」
"では、その領主様とかいう悪人を成敗せねばなりませんね! スラマルは燃えてきました!"
「あはは、そんなことしたら捕まっちゃうよ。でも、ありがとう。スラマルと話してると元気が出てくる」
……会いたい。またラビちゃんと話がしたい。僕の気持ちと、僕の可能性を伝えて安心させてあげたい。
きっと、一人で不安だろうから。




