第4話 グループ内で弱い奴は最初に死にがち
最初の正念場
俺たちは無駄な戦闘を避ける為にゾンビらしき人を見つければ足音を極力消し、目の前に立ちはだかるならば石を投げて意識を逸らしたりして友人宅に到着した。
「ふぅ......逃げ専のホラーゲームは嫌いなんだよね......筋トレしときゃ良かった......あ、ここです。ここに同年代の小谷っていう男と橋本という女がいます」
そう言いながら指を刺した。
「あら?本当に失礼ですが、ご年齢に釣り合わない良い場所にお住みの方ですね」
と近づきながら大きめの綺麗なアパートを眺めて言う彼女。
「あー、橋本が剣道道場の講師?師範?で、小谷は公務員だからじゃないすかね?給料は良いのか知りませんがよく奢ってくれますね」
気持ちはわかるが本当に失礼なの吹き出すかと思ったわ。ブランさんお淑やかで綺麗な顔しているけど、中身は割と雑なのかな。
なんて思いながらアパート入り口の呼び出し機械に番号を入れて待つ。
すると機械から『早く入れ』と一言だけ発してドアが開かれた。
「あっ、ブランさんがいるの言えなかった......まあ大丈夫ですよ、ダメなら安全な場所に逃げれるまで手伝いますよ」
「そこまでして頂かなくても大丈夫です!自身を優先してください!」
(それでもこの方はしてくださるのだろうなぁ)
そう言いながらエレベーターに乗ろうとするので腕を掴んで止めた。そうまたオタク知識だ!......いや常識かな。
「待ってください!止まったら最悪ですし、外で出待ちされていたら詰みです!」
「あー都市伝説でも殺人鬼が待っていたなんてありますしね!助かりました〜」
「まあ被害妄想に近いですけどね、階段で行きましょ」
そして何にも無く家のドアまで来た、大体こういうのは脳みそ剥き出しの化け物とかが這い出て来るのに......いや木刀で対処不可だから良いか......
そう思いつつ俺はインターホンを無言で連打すると、ブランさんが後退りして引いている。
「えっ、えぇ〜?流石に押しすぎじゃないですか......?」
冷や汗が出るほどにビビってる......
「あ、いや。ここ接触が悪くて反応しない事が多いのでいつもの事なんですよ〜」
笑いながら連打続行。
そうすると流石にドアが開き橋本が出迎えた。
「随分と遅かったじゃ......デ、デッカッ!?誰?誰なの?ねぇ一〜ツッキーがナンパして外人の学生の子連れてきたよ〜」
ブランさんは顔を赤くしてしまった......そりゃあ俺のナンパに従った尻軽なんて思われたくないよな......
「声が大きい!いいから2人とも入りな、どうせツッキーのいつもの善意で助けたとかで連れて来たんだから大丈夫だろ、多分」
と妙に俺のことを信頼してくれる、嬉しいじゃないの。
そんな事を思っていると彼女が2人に自己紹介を始めた。
「お邪魔します!私〇〇高校3年生のアレクサンドラ・ブランです!ボクシングとかしているので自衛は出来ます!よろしくお願いします!」
と玄関で笑顔のまま深々と頭を下げるブランさん。それを聞いた小谷は何故か驚く。
「その学校で外人の女ボクサーって言ったら、あの有名なベアクロウの異名を持つアレクサンドラか!!」
「えっ?有名な方なの?」
知らんぞ、この子有名人なのか??
「ミドル級日本一位で今後に期待されていた人だよ。ニュースはお前変に早い時間に起きて時代劇と共によく観てるとか言っていたろ?」
「いや、今薬が変わって遅い時間に起きてる......てか、申し訳ない気持ちに......なんかチビが守るとかほざいて申し訳ないです......」
待てよ、俺以外全員運動できるじゃん......流れ的に俺死ぬぞ......それよりチャンピオンにイキって恥ずかしい......
俺は手汗が出てきてズボンで拭う、なんだか気持ちも悪くなって来た。
そんな中でもブランさんは気を遣ってくれた。
「え!?興味のない分野は知らなくて普通ですよ!私だって映画見ると言ってもヒーロー系は興味が無くて知りませんし気にしないでください!」
「ありがとうございます......」
「そんな落ち込まないで!何より私を思い遣って助けてくれた事実は消えませんから!」
それに対して人間できているなぁと年下の子に劣等感を抱く矮小な俺。
これは小谷ハーレムのポストアポカリプスの作品かな?俺は死ぬ前に離脱しなければ......
外伝でも無ければ離脱キャラは生存しているからな......俺ってそもそもネームドキャラ?
こうやってどんどん悲観的になり勝手に吐き気が強まる。その中で小谷が口を開く。
「2人とも玄関で会話してないでリビング来なよ、ブランさんも実家だと思ってゆっくりして......あ、そう言えばご家......」
マズい、その話題はやめてくれ。
俺は無理に割り込んで遮る。
「ああ!思い出した!荷物はまとめた?早く俺の家に行かないとだから、休息は一旦少しにして!!」
事情を知らないのだから聞くのは当たり前だがやめてあげてくれ......
さっき両親と兄が実質死んだんだ忘れさせてやりたい、俺だったらそんなの正気でいられねえ。
そうやって必死にジェスチャーを交えて俺は話す。ブランさんも笑顔のままだからバレてない筈だ......
(ありがとう、月城さん......心も護ろうとするなんてやっぱり騎士だよ)
「ああ、大体詰めた。逆にそちらの家にお邪魔する話は通したのか?」
大事な話だから思惑通り逸らせた!......でも俺の親に送ったメッセージに既読が付かないんだよなぁ......
「いや、既読すらない。だから早く行きたいんだ。俺の親は災害にうるさいから充電切れは無い。藤原さんの家の様に襲われていたら、事の大きさによっては命に賭けて報復する」
俺は家族や友人を1番に生きて来た、何かあれば絶対に許さない。
俺が、こんな真面目に言う事は無いからか橋本は気を遣って話す。
「きっと大丈夫。気休めにしかならない言葉でごめんね。早く行こう、一。私たちの両親の安否は確認とれたんだから、友達の番だよ」
そう言うとリュックを背負い自前の木刀を持った。
「ああ......俺はボストンバッグ2つにリュック2つ持つから護衛してくれ、中身はツッキーのアドバイス通りだから」
そう言うと総重量十何キロもありそうなバッグを持つ。こいつは本当にタフだな、軸がブレずに歩けている。
「わ、私も何か手伝います!文字通りお荷物にはなりたく無いです!」
本当に偉い子だな、しつこい様だが感心させられるよ、怠惰な俺とは違うね。
「じゃあライト照らしたり見張りをお願いしたいです、護衛は剣道経験の私たちが木刀で頑張ります」
「分かりました!」
元気よく返事をする彼女。......でもよく考えたら武器なしはやばいな。
「......って言っても武器無しは危険だな、2人ともなんかない?」
「んー......あ!ちょい待ち!」
橋本は押し入れを漁り始めるともう一本の木刀と剣道の小手を出した。
「これ昇段試験用の細い奴だけど気休めになるかも!あとは小手をつけて直接殴っても良いかなぁ」
ブランさんは受け取ると物珍しそうに眺める。
「刀みたいなのに憧れていたのでありがたいです!頑張ります!」
そう喜ぶ姿を見て少し胸を撫で下ろした。なるべく忘れさせてあげたい。
「素振り用じゃないから鍔もあるしね......学校のバッグは振るのに邪魔なので小谷の首に掛けておきましょうか」
床に置いてあったバッグを彼の首に引っ掛けた。
「ぐぇえ!!これ中学生がふざけてやるやつだろ!......まあ軽いから問題なし。......ここにいつか戻れるのだろうか......」
部屋を眺め寂しそうに呟くので肩に手を置き話しかけた。
「戻れるさ......それはそうと誰か家に入ったかわかる様に仕込みをする」
俺は部屋の端に捨ててあったチラシの紙を引きちぎった。
「ん?どーすんの?」
「これをドアに挟んでおく、一度挟まった紙が玄関に落ちているかで判別する。漫画で見た気軽に知識で当てになるかわからんがやっとく」
そもそもゾンビ作品の知識頼みの俺が今更だな。
そんなこんなで紙を仕込んだ全員外に出てアパートのエントランスに行くと、見たくも無いモノがそこには居た。
「ヒィッ‼︎блядь‼︎」
まあ母国語で暴言が出るのは仕方ないな、困ったなこりゃあ......
「なんだよこれ......どうすんだよ......」
小谷もげんなりしている。
施錠されたガラスの扉越しに3人のゾンビが居た。
立ち尽くすモノ、何故か寝転び続けるモノ、扉を解除する装置のボタンを押しまくるモノ。
精神不安定の俺は漠然と死を感じた。
あー、この作品での俺の役目は終わりかな。ここでダチ守って死ぬのかな、嫌だ、怖い。
「あのボタン押している奴やばいぞ......しっかり3桁打ち込んでコールに成功して、住人が許可したらドアが開くぞ......」
「知ってた?そもそもあれってドアの隙間に紙を刺すだけで開くんだよ?ねぇ?裏口あるだろ?そこから出よう」
いつものくだらない豆知識を大事な場面でも言ってしまう......悪い癖だ。
「あるけど施錠されているし乗り越えられるほど低い柵じゃないし良い策じゃないよ朔」
「未奈......ツッキーがラップ好きだからって韻を踏んでいる場合じゃ無いぞ」
「ふぅ......じゃあ、正面突破するよッ!」
そう言うと彼女はバッグを全部落として長さの違う木刀を2本持ち構えた。
「えぇ!?二刀流!?宮本武蔵!!かっこいい!!」
とはしゃぐブランさん。意外にも能天気?......いやカラ元気だろうな......
「そう、こいつは日本にほぼ師範はいない二刀流を、我流で行い大成した珍しい奴なんですよ」
(※本当に二刀流は廃れていて皆、我流が殆どです)
俺はノーマルの中段の構えだけどね。素質は上段の構えだけどチビで意味無し......
「じゃあ開けるぞ......俺らなら乗り切れる!」
小谷もバッグを下ろして家具をバラして手に入れた鉄の棒を構えた。
「い、いくぞ......」
小谷はいつもイケメンムーブをするな、つくづく思うよ、ホントに。
そうして地獄の門は開かれる。
「汝らここに入る者、一切の望みを棄てよ」
なんてダンテの神曲の地獄の門の一節を呟く余裕がある俺。もうヤケクソよ......何回俺は今日でヤケクソになってんだよ......
そうして開かれたが全くと言って良い程に、こちらに興味を示さない。あまりに拍子抜けで俺以外は呆気に取られているが安全できない。
「気を抜くな、映画なら最初の正念場だ!」
そう言いながら石をエントランス内部に投げつけた。
「ぐぶぶるるっ」 「がぎぐぬっつうへ!??」
とボタン連打マン以外は石に向かって飛びついたが、ただの石とわかると先ほどと同じ行動を続けた。
「こっわ......あの間すり抜けて行っちゃえば良いじゃん!なんて完全に思っていたよ......これどうすんの......」
「こいつらは反応できる範囲が狭いらしい、ゾンビにも個性があるんだろう......橋本......行くぞ。安心しろ!運動できない奴なりに死んでも守るさ」
「きゃー2人にも死んでも守るなんて言われちゃったよ〜......笑えないから、これが死亡フラグって奴でも言うよ」
そう言うと息を呑んで続けた。
「絶対にここで全員生き残りツッキーの実家まで行くよッ」
そう言うと構え直した。
「ブランさん、ライトを奴らに当ててください!そして当てながら後退してっ」
これで1匹釣れる筈だ、過敏なゾンビは光に反応する。
ってこいつ走ってきた!?
「こいつ走るのかよっ!」
そう言いながら小谷は棒で殴ったが避けられた。
マズい!俺の速度では間に合わないっ!小谷ッ!!
「なっ!?マズッ......」
焦っていたところでブランさんが思い切り蹴り飛ばしてくれたおかげで奴は転がっていく。
「ナイス!首や関節をやれ、橋本!!」
「わーってる!ナメんなッ」
首に一撃、その上から二撃目で首の骨は砕けた様だ。
「やっぱり現役は強い......俺って口だけじゃないか......」
そう萎えていると小谷が励ましの言葉をくれる。
「知識深い指揮官や研究者と考えろ!」
「それって......大体中盤で死ぬんすよ......酷いと序盤で転けて持っていた拳銃が暴発して自爆とか......でもありがとう!」
少しメンタルが回復した俺は残りの棒立ちと寝そべりの2人の対処法を考えた。
「あの2体は音には鈍感だ、石を人と勘違いする事から視力も落ちている。そして棒立ちは何とでもなるが寝そべりが危険、いつ起き上がるかそれとも寝そべったまま足を掴んでくるのか......だから橋本と小谷は棒立ちを仕留めて、俺は寝そべりを1人で殺す気でやるが足止めをメインでやる」
この俺の自己犠牲的な案は否定されてしまった、特に役目を与えなかったブランさんは怒ってしまう。
「もっとご自身を大切にされたらどうでしょうか?貴方には守るべきご家族がいるでしょう?」
俺の胸を指で指して言う。
「っ......ああ、ブランさんすまねぇ......じゃあ、私の手伝いをお願いしても?」
そう頼むと笑顔に戻った。
「喜んで」
そして再度話を合して決行。
「はーっ!!」
慣れない木刀をバットみたいにフルスイング。
「あんたに恨みは無いし可哀想なのはわかっているんだけど......」
なんてブツブツ呟きながら押さえつけることに成功。
「ぶるぶるるがばぅば!!」
「あーやめてくれ......俺だってしたくないんだよ」
俺は顔を背けて罪悪感に苛まれていると、橋本は頭部を殴りつける。
「くたばれぇっ!!!」
その瞬間に俺は退避、小谷も棒で殴りつけて動かなくなるとみんなでバッグを持って走り車に到着。
「やったー!みんな生きている!!」
と橋本は俺たち全員を抱き寄せた。
「本当に良かったです!」
と流れでブランさんは俺に抱きついてきた、気まずくなったが顔を見合わせて、乗り越えた事に喜び笑った。
「法律守りながらかっ飛ばすぞ!!」
と笑顔でエンジンをかけて発進する。
こうして、こう言う時の死に役に無い友情パワーでその場を凌げた。
法律違反済の車で丁寧な運転をして俺の家に向かうのであった。
主人公の家にレッツゴー




