第1話 ありがちな立ち位置と始まり
早速1話目からゾンビが出ますので最後までお読み頂けると幸いです!
今日は友人カップルのデートに無理矢理参加させられ、巨大なモールだかアウトレットだかに向かっている。
理由は単純明快で、俺がこいつらの恋のキューピッドだからだ。
高3でこいつらは両片想いでまどろっこしいから「お前の好きな人から大事な話があるって」って2人にウソを吹き込んだのがきっかけで、何かと記念日などの前後に呼ばれる事になっちまった。婚姻届の証人も俺予定だ......
そしてその俺は社交的で(多分)おしゃべりクソ野郎の躁鬱不眠症チビで、ゾンビ作品が大好きで名作からZ級のクソ映画に、漫画に小説、ゾンビゲーなども網羅している。
運動音痴だが工作と修理が特技だからゾンビの世界でも生きていける............気がしたい。
それによくある陰キャの妄想で俺はゾンビの世界で何度も生き残っているぜ!って言いたいけど知識豊富な為にいつも数日で死ぬ長くて1週間......妄想の中でくらいは自由に生かしてくれよな、俺......
「......お......おい......おい!ツッキー!何ボーッとしてんだよ?着いたぞ?」
と小谷は運転席から振り向きながら一応主人公の肩を叩く。
ちなみに彼氏の小谷一はハンサム身長約195センチの細マッチョで運動神経抜群だ、何が小谷だ、お前は実質メジャーリーガーかガブリアスもしくは承太郎だろ。つまり俺と正反対。
そしてお次の彼女の方は橋本未奈だ、めちゃくちゃ美人で1000年に1人レベルかもしれない、それに苗字的にもね。
こいつとは高校で同じ剣道部だったが強さが段違いで彼女は大会で日本3位という化け物。俺?聞かないで。
「......ん!ああ、めんご。なんか最近色々考えちゃってな。まあ仕事していないから考える事は、そんなに無いけど」
いちいちマイナスな事を言ってしまう、だって自信が無いのだから。だが橋本はそのマイナスを打ち消す元気の良さで声をかける。
「なぁにまた卑下してんのよ!今日は私達のキューピッドのツッキーに対してのお礼なんだから〜てか車降りなよ」
そう笑いながら手で俺の顔を挟む、橋本は美人な上にボディタッチが多いので勘違い男子を馬鹿ほど出していた事を思い出す......もちろん俺もだ。
「何度も言うけどそんな事しなくて良いよ?確かに俺は二次創作の絵とかで小銭稼ぎする様な生活だから、正直言って助かるっちゃあ助かるけどよっ。別にマジで見返り求めてやった訳じゃないよ」
そうこの俺、月城朔は二次創作者としてSNSではフォロワー約6.5万人の絵師兼SS書きだ。(あとゾンビ作品レビュアー)そして好きなゾンビは一歳関係なくアダルトパワーでゴリ押しで活動している。
「でも俺たちの結婚式の招待状の絵も描いてくれたし、似顔絵も描いてくれた。しかも、金取らねえとかお人好しにも程があるだろ!ったく、金ねーのによ!!」
ため息をつきながらもデカい声で笑い話す。
「ダチの為だからな」
ダチとの友情はプライスレス、金じゃ買えないからね。
「なら、親友として見返りを求めなかった分更に豪華な何かをお前にやりてぇんだよ!単車とかゲーミング?PCとかだって贈るぞ!!」
小谷は大盤振る舞いに何でも奢ると言う、金があると違うね。
「あ......そういえば今更だけどツッキーってめちゃくちゃ色々な人と遊んでいるけどお金どうしているの?」
彼女は不意に思い出した様だ、何故この俺は金もないのに色々な人と遊び歩いているのか。
「あー......なんかさ、みんな同情なのか奢ってくれるのよね......2人にもだけど何か早く借りを返したいよ。っても最近物騒な事っていうか......変な事ばかり起きていてバリバリ病む病む......」
馬鹿みたいな事を言いながら、最近は変な事ばかり起きている事を憂う。それについて小谷が反応する。
「気にするな、変な事なぁ〜ここ数週間各地で行方不明者が増えたり、薬中が人を襲ったりとかな......SNSでの陰謀論ではゾンビが出たとか何とか......あ!出番だぞ!ツッキー!」
そうゾンビといえばこの男〜!!月城朔!!
「そんなポケモンじゃねえんだから............おほん!ゾンビマニアの意見としてはB級テンプレでアメリカ製のゾンビ映画の始まりに酷似しているね!つまり、これからは二流以下作品が始まるよ!」
ん?......もしそうなら立場的に俺死ぬな、美人カップルの友人枠とか7割くらい最初に死ぬ奴じゃん。いやカップルが死ぬのもあるな......
内心思い嫌な汗をかく。
「うわー、なら私達スプラッター映画で良くある最初に死ぬカップルじゃん......」
そう言えば、そういう視点もあったなと思う。
「まあ俺が何が何でも守ってやるからよ!」
と頼もしそうにありがちな死亡フラグを言う彼氏。
「もーツッキーじゃなくてもわかる死亡フラグじゃーん」
と笑う俺たちに向かって一直線で走ってくる不審者。まさかまさかのゾンビか?そうなのか?
「お、おい?あの人下向いたまま腹を抱えて一直線に走っているぞ......そっ、それもこちらに!」
周りに他に人がいない、いるのは走ってくる人物だけ。俺は嫌な事を思いつき小谷と橋本に言う。
「ちょっと......流石に本当にある訳ないんだけどね......これ普通の人じゃ無いかも。小谷は橋本を守れ、俺が1番死んでもいい」
そうカッコつけてないけど、カッコつけている様な風に言いながら近くにあった椅子を持つ。
「いや、ゾンビ作品見過ぎだって!」
俺はその制止を振り切り叫ぶ。
「すみません!!止まらないと殴ります!!!」
シンプルにイカれた暴力宣言をするが、相手は無視して走り近寄る。
よく見るとゾンビにありがちな噛み跡や血などが無いので椅子を防御しやすい持ち方で様子見をすると走り抜けて行った。その途端に橋本は笑う。
「ぷぷっ!!やめてよ〜!あの人トイレの方に入って行ったじゃん!」
俺を指さして大爆笑する橋本。そんな笑うなよ、こちとら怖かったんだぞ。
「いや、Wの意味で安心したわ......」
と何だかんだ小谷も不安だったので、大丈夫な事に胸を撫で下ろした。だが俺は周りの異変に気がつき始める。
「いや......あの人は関係無いかもだけど、周りを見てみて......」
そう言われて2人は見るが息が荒く足を引きずっている人や、蹲って動かない人などがいる。
それに呻きながら頭を掻きむしりながら体を捩って動き回る奴もいた。
「......一早く車に戻ろ、ツッキーの言う通り変だよ。ゾンビとか関係なくテロでサリン?とか毒物ばら撒かれていたら怖いよ......それに店は他にもあるしさ」
毒物やウイルスに知識の無い橋本は無闇に不安になる。だが確かにこの光景は異変である。
「わかった未奈。ツッキーは悪いけど後ろの周りを見てくれないか?俺は前方を見る」
やはり、こいつは出来る男なのだろうか、彼は即座に警戒態勢に入った。
「う、うん......ちょっと店には悪いけど椅子持っておこう......」
毒物ならもう俺らも死んでいると思う......それより、やばいやばいやばい!これがマジなら憧れていたイカれたポストアポカリプス世界に!......じゃない、落ち着けよ......俺の立場はゾンビ作品だと死ぬ。
この時の死因は慢心だ、椅子を持っておこう。そして次に危ないのは俺が2人を庇って死ぬ。こればかりは見捨てるしか......でも気分が悪い......いや、それなら俺は死を選ぶ。取り敢えずこれも......
そう事を考えて色々と思いながら飲食店の順番待ちの道を作る為の三角コーンに付いている棒を小谷に渡す。
「これはリーチが長いが本当に脆い、慎重にな。ああ......一番良いのは俺らの勘違いで怒られる事だなぁ」
そう思いながら移動していると通路の横にある、トイレに繋がる狭い道があるのを見る。何故だかものすごく嫌な予感がする。
「ちょっと待って......これ映画のセオリーだと絶対飛び出してくる......」
そう小声で言いながら椅子が壊れない程度に壁を思い切り叩きつけると同時に通路から音に反応して飛び出てくるなにか。
即座に対応する俺だが慌てすぎて転びかけるが、何とか僅かにある根性で椅子で壁に取り押さえた。
「っ!ほ、本当になのかっ!お前ら変なサプライズ仕組んだんじゃないよな!??」
そう飛び出てきたのは正真正銘の女のゾンビであった。見た目こそは出血は少ないが鼻が抉れて首が切れていた上に目が酷く濁っていて、どこを見ているかわからない。それを俺は椅子の4つの足で挟んで壁に押さえつけている。
「ば、ばか!んな訳無いでしょ!驚いてないで早く一もツッキーに加勢して!」
その言葉を俺は聞き、嫌な事が脳内に過ぎる。
これって......あいつは良いから逃げるぞパターンじゃあ......
と押さえつけながら勝手に絶望している俺だったが、小谷は棒でゾンビの足を掬い転ばして背中を自慢のフィジカルで踏みつけ動きを封じた。
「よくわかないがあるんだろ!?トドメをやれーっ!!」
そう言われ椅子の足で何度も殴り首の骨を折った。理由は血液感染の場合は下手に頭を砕くと危険だからだ、と言っても俺に頭を破壊する程の力はないがね、頭がスイカみたいにバンバン砕けるのは創作物だけだ。
それに、こう言うのは血液感染がメジャーなので避けるに限る。だから脊椎を破壊する事が最適解と思った。幸いほぼ動かなくなった。
だが不意打ちで、こんにちはと現れるゾンビは連続で起こる。なので念のため顎と膝を破壊してそいつが着ていた服で縛っておいた。
目の前の女のゾンビで周りの音があまり聞こえていなかったが、冷静になると叫び声ばかりが店内で響き渡るのがわかる。だがその中でも感謝の言葉を忘れない。
「やっぱり映画とは違うな、ありがとう」
これ治せるタイプだったら俺ただの殺人や......
そう言いながら小谷に手出す。
「いいや、こんな状況でこんなふうにわざわざ握手するのは映画くらいだ」
(これ殺人にならないかな......)
小谷はニカッと笑い、俺たちは足早に車に戻る為に移動を始めたのであった。
こうして、俺の知っている「ゾンビ作品」の世界が始まった。
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