会いたい、だから・・・。
(あの世)
「役所でもだめだったね(泣)」
「こっちにもプライバシーって言葉があったんだね・・・。」
正嗣は、役所で美佐子の事を調べてもらおうとしたが、だめだった。
正嗣と月見は、しょんぼりしながら役所を後にする。
「付き合ってくれてありがとう・・・」
「いえいえ。」
「何かおごるよ。何がいい?」
「いいよ、別に。」
「そっか。」
月見は、悲しそうな正嗣の顔て、何かしてあげなければと考えていた。
その時、ふとあることを思い出した・・・。
「正嗣。一か八かの賭けにでてみない?」
「どうしたんだ、いきなり・・・。」
「奥さんのこと。もしかしたら分かるかもしれない。」
その言葉に、正嗣の眼の輝きが戻り始める。
月見は、ほっとしたが不安要素もいっぱいな賭けであった・・・
「私の友達に頼むんだけど・・・正嗣も知ってる・・・」
「あぁ・・・みんな・・・個性ある・・・。」
正嗣は何かを思い出すかのように、黙ってしまった。
「でも、月見の友達だもん。ほかの子達が思ってるような悪い子じゃない。」
正嗣は、腹をくくり、最後の賭けに出ることにした・・・。
月見は、その場で友達に電話をかけ始める・・・。
「もしもし、朱桜おひさ!今、ちょっといい?これから会える?」
数十分後、正嗣の家のドアにノックをする音がこだまする。
月見がドアを開けると、そこにはたくさんの女の子がいた・・・。
「久しぶりじゃねぇか!月見!」
「久しぶり、朱桜!結構たくさん連れてきたね・・・。」
「あぁ。話したら協力してくれるって、こいつらも。」
月見の友達、朱桜。化け猫の女の子。
二又である月見とは、昔からあの世でも、この世でも大暴れしてきた仲間である。
朱桜には、たくさんの部下とも言える仲間がいる。
今回は、その部下のみんなも協力してくれるとの事みたいだ・・・。
「で、おっさんは?」
「おっさんはここにいますけど。」
そういって、月見の後ろからコーヒーを入れたカップを持って朱桜たちの前に現れた。
「じゃ、邪魔すんね~。」
団体様のお越しです。
定員オーバーぎりぎりの・・・。
「おっさん、結婚してたなんて知らなかったし。それよりさ~こっちの世界にいるって事は、死んだの?」
「今年の春に死にました。」
「ふ~ん。」
朱桜がキセルを出すと、横にいた部下がさっとキセルに火をつける。朱桜はキセルを口から離すと、ふーっと息を吐く。
「月見から簡単には聞いたんだけど、先に死んだ嫁がどこにいるか探してほしいって事でいいんだよな?」
「あぁ、役所にも行ったんだけど門前払い状態でさ・・・」
「あんなとこ行ったのかよ・・・あたいは嫌いだわあそこ。嫌な思い出しかねぇもん。」
「私も。でも、そこしか思いつかなかったんだよね・・・。」
たわいもない会話も交えながら話は進んでいく・・・。
「で、嫁の写真とか見してよ。」
「OK!」
正嗣はそういうと、窓際においていた写真たてを朱桜に渡す。
すると、朱桜も一緒に来ていた部下も、写真を見るなり開いた口が塞がらない状態になっていた。
「おっさんの嫁、綺麗過ぎるよ!なぁ!」
「はい!びっくりしたっすよ!姉さん!」
「そうっすよ!ありえないくらい綺麗っすよ!」
「だろ?まじありえねぇ!おっさんにこの嫁はねぇわ!」
「悪かったな、ありえなくて。美佐子は、こんな俺にも、ずっとついてきてくれたかわいい妻なんだ。だから、会いたいんだよ。美佐子に・・・」
その言葉の上に月見の言葉が被さる。
「誤解を解きたいってのもあるんでしょ?」
「誤解ってなんだよ、おっさん。まさか、こんな綺麗な嫁がいるのに浮気したとか?」
「浮気はしてないんだけど・・・そう見られた。」
その言葉に、朱桜は愕然とする・・・。
「マジかよ。」
「昔、女郎蜘蛛にマジ惚れされて、毎日家に押しかけられて迫られたらしい。それを見られたんだって。」
「それで誤解されたと・・・。」
「奥さんそれで精神的に疲れて、死んじゃったんだって。娘もそれで仲悪くなって家出。」
「まじで・・・てか、娘もいたの?」
「いるよ。椿っていうんだ。一人娘。死ぬ前の2ヶ月で、関係は修復できたとは思う。」
「で、後は嫁だけと・・・」
空気が少し重くなった。
「わかった。大事なきょうだいの頼みだ。引き受けるよ!」
その答えに、月見も正嗣も少しだけ安心した。
「お前らも協力するんだったら手抜かずにとことん調べろよ!」
「「「はい!」」」
「正直、断られると思ってた。」
「何でだよ。」
「だってさ・・・いきなりチーム抜けて足洗っちゃったし。怒ってると思ってた。」
「正直、怒ってる面もあるけどさ、それでもあたい達、きょうだいだろ!断る理由なんてねぇって!」
その言葉を聞いて安心したのか、月見は泣き出してしまった。
「何で泣くんだよ、月見。」
「そうだよ。月見。大事なお友達の前でいきなり泣いたらびっくりするだけだよ。ちゃんとお礼言わなきゃ。」
「ありがとう・・・よろしくね朱桜。」
「俺からも、どうぞよろしくお願いします。」
正嗣は朱桜に、深々と頭を下げた。
「あたいらのネットワークで、嫁の居場所見つけてくるから。待っとけよ、おっさん!」
そういうと、後ろに控えていたたくさんの部下に向ってこう叫ぶ。
「いいかてめぇら!手抜くなよ!!大事なきょうだいの頼みだ!全力でおっさんの嫁探すぞ!」
「「「「ぅおおおおお~~~~~~~~っ!!!!!!!!!!!!!!」」」」
こうして、美佐子探しが大々的に行なわれる事となった・・・。
「正嗣。やっぱ私、幸せ者なんだね。」
「そういってんだろ。」
微笑む月見の頭を正嗣は、ガシガシと力強くさすった。
それから数週間後・・・
正嗣の家の電話が部屋に鳴り響いた。
「はい、もしも・・・」
「おっさん!!有力情報GET!!」
「え?本当に!」
「あぁ!その情報持ってる奴、直接連れてくから。」
「ありがとう!待ってる待ってる!待ってるから!!」
ガチャ・・・
「どしたの正嗣?」
「月見!!美佐子の有力情報GETしたって朱桜から!!」
「マジで!よかったじゃん正嗣!」
「あぁ!これからその情報持ってるお友達連れてくるっていうから待ってよう。」
「うん!」
どんな情報でもいい。
美佐子に会えるのなら
あって謝ることが出来るのなら
正嗣の心の中は、その言葉でいっぱいだった・・・。
コンコン!!コンコン!!
「「来た!!」」
正嗣がドアを開けると、そこには朱桜とひょろっとした男が立っていた。
正嗣はすぐさま彼女達に家に入ってもらった。
「この幽霊のおっさん、あたいらがだべってる店の店員なんだけど、本屋で見たって。な?」
すると、その幽霊はたんたんと話し始める。
「僕の家の近くにある本屋なんですけど、そこの店員さんにすんごい似てるんですよ!こうすらっとしてて、顔が小さくて、眼が大きいとことか!」
「あの、本屋さんの場所教えて・・・」
「今から行った方がはやくねぇ?」
「とにかく行ってみようよ!案内お願いしてもいいですか?」
「は・・・はい、喜んで!」
朱桜と月見の迫力に正嗣も、連れてこられた店員も圧倒されながら、その噂の本屋に足を運ぶこととなった。
(本屋)
「ここっす!」
「古書専門店・・・桔梗・・・堂。」
昔の武家屋敷のような重厚な店構えをした店がそこにあった。あまりの大きさに正嗣も朱桜も月見も驚きを隠せないでいた。
書店の中に入ると、天井近くまである本棚にきちんと収まっていて、まるで図書館のような店内。
「すごく広いね!!」
「おっさん・・・これ探すの一苦労だな。」
「本当だね・・・。」
あまりの広さに愕然とする朱桜と正嗣。それとは対照的にテンションが上がっている月見。
「俺が見たのは、一番奥の図鑑のフロアーでみたっす。」
その店員の情報を聞くと、正嗣も朱桜も月見も覚悟を決めた。
「よっしゃいくか。みんな。」
「おう!」
「奥さん探しスタートだね!!」
そういって、店員の後を付いていくように彼らは足を進めていった。
図鑑のフロアー着くと、そこにはたくさんの客が本を品定めし、店員が本を積み上げたり、接客をしていた。
正嗣がきょろきょろ見回していると、店員がいきなりぽんぽん背中を叩きだす。
「正嗣さん!!あそこ!」
「どこどこ?」
「ほら、奥で本運んでる・・・」
正嗣たちの目の先には、黒く長い髪を一つに纏め、華奢な身体で何冊もの図鑑を運ぶ女性がいた。
「美佐子・・・」
正嗣は、いてもたってもいられず、その女性に向って歩き始める。
歩くことと同じくらい不安と高まる気持ちが一緒にこみ上げてくる感覚がする。
近づくにつれ気持ちがこみ上げてくる。
月見たちも見失わないように正嗣の後を付けていく・・・。
その女性は、天体図鑑のコーナーで止まり、本棚に図鑑を補充しようとしていた。
美佐子で・・・
この人・・・もう人じゃねぇわ。
この女性が
俺の愛した美佐子でありますように
正嗣は、意を決してその女性の肩をぽんぽんと叩いた。
「はい・・・どう・・・」
「美佐子・・・だよな。」
「正嗣さん・・・なの・・・?」
間違いなかった。
そこにいたのは、間違いなく美佐子だった。
「俺も、つい最近こっち来ました。・・・会いたかった、美佐子。」
「うん。不謹慎かもしれないけど・・・私も会いたかった。」
笑う美佐子の笑顔に、正嗣の不安は、氷のようにすっと解けていくように感じていた。
「この後、時間あるかな?」
「今日は、あと少しでお仕事終わりだから。」
「じゃ、俺、待ってるわ、外で。」
「後ろの方たちも?」
正嗣が振り向いた先には、涙を必死にこらえる月見と朱桜と店員の姿が・・・。
「あの子達も一緒に、美佐子の事探してくれたんだ。」
「そうなんだ。」
美佐子は、月見達のところへトコトコと足を進める。彼女達の前で止まると
「主人がお世話になりました。」と深々と頭を下げた。
「こ、こちらこそお世話になってます!」
「あ・・あの、あたいらここで退散するんで、ご夫婦で・・・」
「僕もそろそろお店に戻んないといけないんで。」
そういうと、美佐子は頭を上げ彼女達に微笑みながらこういった。
「また、いつでも主人に会いに来てくださいね。」
月見は見とれてしまっていた。
あまりにもやさしくて、あまりにも繊細で綺麗な美佐子に・・・。
美佐子はバックヤードに帰って行った。月見は、正嗣に声をかける。
「やっと見つかってよかったね。正嗣。」
「ありがとう。」
すると今度は、朱桜が後ろから方に腕を掛けながら耳元でつぶやく。
「このチャンスしくじんなよ、おっさん。もう後がねぇぞ。」
そういうと、背中をぽんと叩き、月見と店員を連れて本屋を出ていった・・・。
「しくじんねぇよ。ありがとな、みんな。」
そういって、正嗣は本屋の出口に足を向けた。
正嗣と美佐子は、公園の噴水の前のベンチに腰掛け、温かいコーヒー片手にあの後の生活の話をしていた。
そんな時、美佐子が急に正嗣に問いかける。
「正嗣さん。」
「何?」
「今日何の日かわかる?」
「うん?何々?教えて。」
「向こうの世界の今日は・・・七夕だよ。」
「七夕か。そういえば、椿が小さい頃はずっと笹飾ってたな。」
「うん。椿が5歳ぐらいの時かしら、七夕の時に、正嗣さんお仕事で日本にいなかったの。」
「う~ん・・・あったなそんなこと。たしか一週間イギリスだった時かな。」
「椿のお願い事なんていてたと思う?」
「何々、なんて書いてたの?」
「お父さんのお嫁さんになりたいって書いてたの。その短冊の事、正嗣さんに言おうと思ったんだけど、椿が言わないでって。」
「そっか・・・」
正嗣は少し黙った後、美佐子にあの事を謝ろうと腹をくくった。
「美佐子。」
「何?」
「あの時のこと・・・まだ怒ってるよな・・・。」
「怒ってないといったら嘘になるけど。」
「そうだよな。俺は、凌縁とは・・・」
「わかってます。何もないでしょ?」
美佐子は、そういうと笑いながら正嗣のほうを向いた。
「私も悪いの。正嗣さんを信じられなかったのが悪いの。死んでからそのことに気づいちゃった・・・ごめんなさい。」
「俺もごめん。美佐子の気持ちうまくわかることが出来なくて・・・本当にごめん。」
互いに頭を下げたものだから、ぶつかってゴツンって音が身体に響いていった。
それに気づいた正嗣と美佐子は、ハハハと互いの顔を見て笑い始める。
彼らの間には、もう蟠りはなかったのだ。
「なぁ、美佐子。」
そういうと、正嗣はズボンのポケットから封筒を取り出した。
それは、お盆の帰省列車のチケットだった。
「もう一度プロポーズをさせてください。俺と一緒に帰って、それから・・・俺のそばにずっといてくれませんか?」
美佐子は、笑って正嗣の手を握り「はい。」と返答した。
(7・7 PM8:47)
椿達は、近くの林から採ってきた笹に、思い思いの飾りをつけて七夕の夜を楽しんでいた。
「七夕♪七夕♪」
「火燐、お前なんて書いたの?」
「椿ちゃんと結婚!!」
「100%無理な願いだな。」
「何でそう決め付けるべ?」
「願いをかなえる織姫と彦星の所に行く前に、正嗣が止めるぞ!」
「そんなのわかんないべや!」
火燐と風燕が軽く揉めている横で、蓮流がすっと願い事を飾る。
「さ、おらも飾ろうかの~。」
「じゃ、俺も飾るっすわ。」
そういって緑涼と禮漸も短冊を飾る。
「椿~なんて書いたべや?」
緑涼の問いかけに、椿は少し恥ずかしながらも2つの短冊を見せる。
そこに書いてあった願い事は・・・
“これからもみんなと家族でいれますように。”
“父さんと母さんがむこうで一緒に暮らせますように”
この2つだった。
「1つ目は、おらも一緒だ。」
緑涼が短冊を見てそういうと、禮漸も蓮流も「俺も」といった。
すると、火燐と風燕も同じ事を書いた短冊を椿に見せた。
「みんな一緒だね。」
「それじゃ、一斉に飾るか!同じところに。」
緑涼の提案で、その願いの短冊を笹の同じ茎の所に飾ることにした。
先に飾っていた緑涼の短冊の場所にみんなで飾っていった。
その場所だけが、すごく明るい色で輝いていた。




