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深い傷跡をみぜるように

(6・18 AM6:20 車内)


椿は車内を見てさらに驚愕した。

ちゃんと調理できるキッチンが装備されていたのだ。



「キッチンあるのに・・・・お弁当必要だったんですか?」



椿の質問に禮漸は、少し笑いながらこう答えた。


「車でいけるのは、途中まで。そこからは通れないから歩く。だから、現地に着いたときの食料はこのお弁当だけ。毎年そんな感じ。」


「ここで作ったりしないですか?」


「晩だけ。さっき頼んでた缶詰とか届いたから、それを使って簡単に料理する時だけなんだ。」


「そうなんですか・・・。」


そこに緑涼がやってきて禮漸に酒の事を聞いていた。


「酒も届いてるか?」

「さっき受け渡しのときに言ってたんすけど、一部の酒だけ、現地で受け渡しって事になったっす。」

「どの酒だべ?」

「水の雫と柘榴のリキュール。持ってくる時に事故ったらしくって・・・」

「そうか~。」

「無料で交換って事になりました。あと、ついでに頼んだんだんすけど、豆腐と油揚げ売り切れで1週間後入荷らしいっす。」


「うわぁ~・・・当分、味噌汁できないべ・・・。」


「そうっすね・・・。」


この話を火燐さんが聞いて無くってよかった。

椿の心の中にはその言葉でいっぱいだった。


その頃ベットルームでは、火燐と蓮流が眠っていた。火燐に至っては、ベットから転げ落ちたのか床で眠っている。


風燕は、目的地まで運転を担当。

眠気を紛らわすために時々、ブラックコーヒーに口をつける。


「がんばれ・・・あと少しだ・・・。」


そう言い聞かせながら・・・。



(6・18 AM 7:59)


「着いたべ!降りるぞお前たち!」

「「「「は~い!」」」」


緑涼の大きな声が車の中に響き、椿は目的地についたのだと感じていた。


車は、深い森の入り口の近くに止められた。


椿の目の前には、見るからに鬱そう押した森が広がっている。

その森の入り口には、2本の大木が立っていて、その間を太い縄がつないでいた。


「蓮流さん・・・。」

「ここをまだ2時間ぐらい歩くよ。といっても、山歩きみたいにアップダウンが無いから歩きやすいと思うよ。」


そういいながら、蓮流は森の中に入っていってしまった。

椿も迷ってはいけないと思い、蓮流の後をくっつくように森の中に入っていった・・・。


(森の中)


薄暗く


冷たい空気と葉が揺れる音


その2つしか広がらない空間のように感じる。



「すごく遠く感じる・・・。」



椿がそうつぶやくと、それを聞いた緑涼は、急に椿を持ち上げ、軽々と担ぎ上げてしまった。


「な・・・何するんですか!緑涼さん!」

「疲れたんだろ?止まる時間がそんなにねぇから、回復するまでこうして休むといいべや!ハハハハハ(笑)」

「な・・・なんか違う気が・・・」

「何がだべ?」


「いや・・・なんでもないです。」


その光景を見てしまった風燕と蓮流は、こんな話をしていた・・・。



「うわっ!椿担がれてる!」

「あいつ何したんだよ?」

「何もしてなかったよ。足でもつったのかな?」


「いや、それにしてもあれはだめだろう!どう見てもハハハハハハ(笑)!!」


「いきなり笑い出してどうしたの?風燕。」

「だって・・・どうみても山賊だろあれ!好みの女の子をゲットした後の山賊だろ!」



その言葉を聴いた途端、蓮流も堰を切ったようにゲラゲラと笑いだした。



「ハハハハハハ!ハ~ハハハ!本当だ!そう見えるよ!ハハハハハ(笑)」

「だろ?ハハハハハ!」


その声を聞いた緑涼は小声で「あいつら楽しそうだな~、椿。」とつぶやいた。

椿は「はい・・・。」といったが、彼らの笑う理由はきっと私達だろうと身をもって感じていた。

そんな椿と緑涼の後ろから、ものすごい走る音が聞こえてくる。



「緑涼さん!なんかすごい轟音がするんです!怖いです!」

「大丈夫だべ。」


「???」


音はドンドン近づいてくる。


「ドンドン近づいてますよ!」


「大丈夫!火燐だから。おら達も走ってみるか?」


「だ、大丈夫です。そのままで。」

「そうか?ならいいけど・・・」


その瞬間、椿の足と緑涼の背中にドンっと言う衝撃が走った。



「緑涼!ずるいべや!俺も椿ちゃん担ぐ!」



すると、緑涼は椿の顔を覗くようにみると「な?やっぱり火燐だったべ。」とつぶやいた。

椿は、その言葉と火燐がぶつかった衝撃で頭の中は大パニック!言葉も出なかった・・・。

そんな椿をよそに緑涼は、暴れる火燐を担ぎ始める。


「何で俺も担ぐべや!俺は椿ちゃんを担ぎたいの!」

「はいはい。でも、こうすれば椿と同じ目線で話できるべ。」


そういうと、火燐はすぐさま右肩を見た。そこにはパニック状態の椿が・・・。



「緑涼、邪魔だべや。」


「お前・・・そこに放り投げるぞ(怒)」


「ごめんなさい(泣)」


またまたその光景を見た風燕と蓮燕、それに禮漸も加わってこんな会話が・・・


「わ~すごいね。さっきからあんな感じなの?風燕?」

「そうそう。火燐はさっき捕まったけど、な?(笑)」

「そうなんすよ!その光景見て風燕が好みの女の子をゲットした山賊だって(笑)」

「ハハハハ(笑)本当だ。今のところは2人ゲットした状態と・・・。」

「そうなんすよ!!ハハハハ!!」


そんなこんなで目的地に到着した。

椿の視界に広がっていたのは、とても大きく、とても綺麗な湖だった。



湖のほとりに、妖艶な雰囲気を醸し出す着物の女性が立っていた。

着物の襟を肩まで下げ、胸の谷間を強調する様な着かたをした女性。椿はその女性を見た途端、椿の中に10年前の記憶がじわじわと映し出されていく・・・



「あっ!緑涼の旦那!火燐の旦那も!」



彼女は笑いながら、緑涼の方にどんどん近づいてくる・・・


「緑涼さん・・・」

「どしたべ?」

「・・・てください。」

「すまん。もういっ・・・」




「帰りたいんで降ろしてください!!」




あまりに突拍子も無い答えが出た為に、そこにいた全員が驚き、固まってしまった。


「い・・・いきないどしたべ?椿。」

「そうだべ。急に怒り出して・・・。」


緑涼と火燐の問い掛け聞かず椿はただ、緑涼に「降ろして」と復唱するばかり。

緑涼は仕方なく椿と火燐を肩から降ろした。すると椿は、何も言わず森のほうに向って行く。



「ちょっと待てよ!椿!」



風燕が咄嗟に椿の右腕を掴んだが、椿はそれを振り切って森の中へ入って行ってしまった。



「俺、行ってくるよ。みんな待ってて。」


そういうと、蓮流が森の中へ・・・



「あの子・・・」



その女性は、そうつぶやくと、緑涼は「知り合いか、凌縁りょうえん?」と少し申し訳なさそうに言った。



「正嗣の旦那の・・・そりゃ・・・あんだけ怒っても仕方ないわ。私が悪いから・・・」



凌縁は、俯きながら悲しさを堪える様にそう言った・・・。



(森の中)


椿は、来た道をただひたすら進んでいた。しかし行きと違い、森の雰囲気が違うように感じていた。



「同じ道を歩いてるはずなのに・・・それより、どうしてあいつがいるんだよ!あいつが!」



怒りが収まらない。


何年たっても収まらない。


椿の顔がどんどん心と比例していく・・・。



その時、椿の動きを2本の腕が止めた。

椿が振り向くと、蓮流が椿を抱きしめていた。



「これ以上行くな。」



といいながら・・・


(湖のほとり)


「どういうことだべ、凌縁?」


驚きと同時に緑涼の口からその言葉が飛び出した。



「私・・・正嗣の旦那が好きだったの、ずっと。どうしても・・・旦那の近くにいたくて・・・私は・・・お嬢さんと・・・奥様の前で、旦那にキスをしたの。誘惑するように・・・。」



凌縁は、急に堰をきったように泣き始めた。



「私が悪いの!!全部私が悪いの!!」



そう叫びながら・・・



(森の中)



「離して!!」

「これ以上行ったら、帰れなくなるから!!だから、行かないで!!」



蓮流の言葉が届いたのか、椿はパッと動きを止める。


「いったい何があったんだよ!!」


蓮流のその問いに椿は、怒った口調でこういった。


「許そうと思っても、許せない。あいつだけは・・・」


森の中に思い空気が広がっていく。

何分、何十分話さないだけなのに、その空間が重く、黒くなっていくように感じていた。


「俺も、許せない事いっぱいあるよ。長い間生きてると・・・。」


蓮流は、そうつぶやく。


少し安堵の表情を浮かべて・・・。


蓮流は、急に自分の過去を話し始める。



「この森で人間に攫われたんだ、俺とお袋・・・。」



椿は、黙ってはいたが、話は聞いて動揺していた。蓮流は、何も気にすることなくさらに話を続ける。



「悪い人間達が、俺とお袋を自分達の欲を満たすっていうのかな・・・まぁ、そんな為に利用しまくってんだよね。ガキだった俺は、何も助けられなかった・・・助けたいのにさ・・・お袋を助けられなかったんだ。」



蓮流の話は、椿の事などお構いなしにどんどんディープなところへと進んでいく。



「何日かして、親父が助けに来たんだよ。大立回りっていうの?中に入るなり、ばったんばったん薙ぎ倒してさ・・・すごかったんだ。俺を抱えると今度はお袋の所に行くんだけど・・・俺と親父の目の前で殺されたんだよ、お袋が・・・。首切られてさ・・・。」



椿が顔を上げると、蓮流の眼に涙が少し浮かんでいた。あの時と同じ悲しそうな赤い眼をして・・・。



「それで親父、ぶちキレて・・・まず、殺した奴を殺して、次に、お袋と俺を抱えてずっと上まで飛んで・・・その村ぶっ壊して・・・。誰一人生きてなかったよ。それでも気が済まなかったみたいでさ・・・毎日毎日暴れまくって・・・。」



その時、椿の眼に入ってきたのは、少し、はにかむように笑った蓮流。泣いてはいたが、少し笑っていた。



「そんな時かな・・・なんか、特殊な人間っていうの?私、いろんな術使えます的な奴が来て・・・さっきの湖で親父が殺そうとしたんだ。俺も殺されそうになったんだけど、たまたま正嗣が一緒に来てて、俺を殺さないようにってそいつに頭下げてくれてさ・・・。子供には何の罪のも無いじゃないかって・・・。」




「親父は・・・死ぬ前ぐらいかな、正嗣に俺のことを頼むって言ったんだ。その時の親父の顔は、いつもの優しい親父の顔でさ・・・」



泣きながら、蓮流が話す言葉一つ一つが、椿の中に刺さっていく。



「ごめん泣いちゃって。なんか思い出すと辛くって、辛くって・・・。」


「いえ・・・私も急に怒ってごめんなさい。私も・・・聞いてもらっていいですか?」


「いいよ。この際だから俺にもいろいろ聞かせてよ。さっきの事も。」



そうして椿は、自分の過去の傷を話し始めた・・・。


(湖のほとり)


「私が、正嗣の旦那にキスをした時に、奥様がその場で倒れられて・・・私の前で旦那が奥様に必死に呼びかけられていて・・・・その後、亡くなられた事も、お嬢様が、私が原因で家出をされた事も、噂で聞いて・・・」


凌縁は、無理やり言葉を出したかのような小さな声で話を続けた。



「本当はお詫びがしたいです。でも・・・私が旦那やお嬢様の前に出ることが怖くて・・・。」




「何が怖いだよ。」




そういったのは、火燐だった。



「100%、凌縁が悪いべ!謝らないで怖いって、何もせずにそのままにするのか?それじゃ逃げてるべ!!ちゃんと椿ちゃんに謝れよ!」



あまりの迫力に、同じことを言おうとしていた緑涼も言葉を呑んでしまった。



(森の中)



「あの女・・・私の家族をばらばらにしたんです。毎日、親父会いに来て、母さんを精神的に追い詰めて・・・そのせいで母さん倒れちゃって・・・死んだんです。あの女が殺したも一緒で・・・。私も見てるの嫌で家出したんです。親父は死ぬ前にそのことも手紙で謝ってたんですけど・・・いざ、張本人見るとやっぱり許せなくって・・・。」



椿の話に、蓮流は言葉を聞いて、しっかり受け止めようとしていた。


泣いて、詰まってしまう椿の言葉を・・・。


椿は、自分のことを話し終えると、気力を失ったのか、その場で倒れこみそうになった。

蓮流は、さっと椿の肩を持つと、そのままそっと抱きしめた。



「そりゃ、許せないよな・・・そんなことされたら。俺でも嫌だわそんなこと。」



そういって、蓮流は椿をなで、同情する。



「許さなくってもいいと思う。事が大きすぎるもん。でも、凌縁がもし、謝ってきたら聞いてあげてもいいんじゃない?判断するのは、椿ちゃん自身だけど・・・。」



「そう・・・ですね・・・。あの女、凌縁っていうんですね。」


「うん。女郎蜘蛛の凌縁。禮漸が贔屓にしてる観穂詩酒造みほししゅぞうの女将さん。まさか、正嗣と知り合いだったとわね~・・・。歩け・・・そうもないね。もう少し休んでいく?」


蓮流はそういうと、浴衣の胸元から一本の竹筒を取り出し椿に渡す。

中身は水。とても冷たく、とてもあっさりとした水だった・・・。



(湖のほとり)


椿は、蓮流に抱っこされるような感じで湖に戻ってきた。

恥ずかしいのか、それとも、凌縁がいることを見据えてか蓮流の胸元に顔をうずめている・・・。


「ただいま~!!」

「あっ!椿ちゃん帰ってきた!!・・・って蓮流ずるいべ!俺も、椿ちゃんだっこしたいべや!!」

「仕方ないだろう!足が動かない状態なんだから!!」

「我儘言うでねぇ!火燐!」

「やだやだ!俺も抱っこしたいべや!!」


「火燐いいかげんにしろ!!」


あまりにも火燐が我儘だったので、緑涼は、思わず火燐を殴ってしまった・・・。


「痛い・・・痛いべや(泣)」

「お前が、緑涼をキレさす様な事するからだろ!馬鹿だわお前。」


風燕は、苦しむ火燐に湖で濡らしたタオルを渡しながら言った。





「お嬢様・・・。」





椿に弱々しく呼びかける凌縁。しかし、椿は、凌縁を見ようとしない・・・。


「申し訳・・・ございませんでした!!私が・・・」


「もういい。」


椿が、蓮流の胸元でそうつぶやいた。それを聞いて安心したのか、蓮流は、椿をそっと地面に降ろした。


椿は、凌縁に向ってゆっくりと歩を進める。その足音を聞いていた凌縁の身体はブルブルと震え、明らかに怯えていた。


椿は、凌縁の前で足を止めると頭を下げ続ける凌縁の前でしゃがみ、顔を上げるように言う。しかし、良縁は顔を上げようとはしない。



「親父の遺言だから・・・あんたのした事、水に流すわ。まだ許せないことあるけど・・・。」



凌縁が思わず顔を上げると、そこには泣きながら微笑む椿の姿があった。



「あと、親父からあんたへの遺言。」





「俺みたいな馬鹿な人間のことなんか忘れて、お前らしく生きていけ・・・だってさ。」





凌縁は、また深々と頭を下げた。

泣きながら

ただ泣きながら申し訳ございませんといいながら・・・。


「もういいですから!顔上げてください!!」

「だって私は・・・」

「そうだべ、凌縁!もう椿ちゃん許してるんだからさ~・・・」



椿の後ろから火燐が凌縁を諭すが、どさくさに紛れてしゃがみこむ椿を後ろから抱きしめていた・・・



「そうかそうか・・・お前そんなにギュってしてほしいんだな、火燐(怒)」



そんな火燐の後ろには、大きな刀を持った緑涼がスタンバイをしていた・・・。


「ぅわぁ~~~~~~何で怒るべや!!!!!」

「おめぇが、俺の言う事、聞かないからべや!!!」



「お嬢様・・・本当に私を・・・」

「親父が言ってるからそうするしかないの!だから・・・もういいよ。」

「いつ、亡くなられたのですか?正嗣の旦那・・・。」

「今年の初め。」

「お墓・・・行かせていただいても・・・」

「いいですよ。いつでもどうぞ。」



「ありがとう・・・ございます。」



「あのさ・・・」



彼女達の会話の中に禮漸が割って入ってくる。



「あっ!禮漸の旦那!うちの若い子が粗相をしてしまって、申し訳ございません。」



凌縁はそういうと、手をパンと叩いた。

すると、凌縁の前に白い光の球体が現れ、それが地面に付くと中から2つの瓶や紙袋、それと様々な食材が現れた。


「こちらの手違いで・・・遅れるとお伝えしていた味噌と豆腐なんですが・・・」

「届いてたって訳か。」

「・・・はい。本当に申し訳ございませんでした。」

「とりあえず、全部そろったことだし・・・お昼ここで食べますけど凌縁さんも・・・」

「いえ、私はこの後も仕事があるので。」

「そうですか・・・」

「お嬢様。」


凌縁はそういうと、椿にあるものを渡した。それは、手帳サイズぐらいの本だった。


「これ・・・親父の?」

「はい。初めてお会いした時、旦那がお忘れになられたものです。なかなかお返しすることが出来なくて・・・」

「ここまで持っちゃうと・・・もう凌縁さんのものですよ。親父の遺品と思って・・・・」

「でも・・・では、こちらだけでも・・・。」


凌縁は、そういうと本を開き中にあった写真を椿に渡した。

そこに写っていたのは、生まれてすぐの椿とその椿をあやす正嗣、それと母の美紗子だった・・・。



「ほ~これが椿ちゃんのお母さんか。」



禮漸は、写真を見ると少し笑みを浮かべ椿より先に写真を受け取ると・・・



「お~い!!お昼にしようぜ!!いいつまみも入ったぞ!!」



と、写真を高らかと掲げみんなに呼びかける。



「正嗣嫁の顔が見たいか!!!!!!!!!!!」


「ちょ、禮漸さん!」


「椿ちゃんの母君の顔がみたいか!!!!!!」


すると、みんなの顔が一斉に禮漸の方向へ・・・


「うそっ!まじで!」

「見たい見た~い!!」

「椿ちゃんのお母さん!!見たいべ!!」

「ふ・・・禮漸にはかなわねぇな~・・・(笑)。」


「ちょっと禮漸さん!!」

「こうでもしないと、緑涼さんは怒りが収まらないしね。さ、お昼にするか!」



「では、わたしはこれで・・・失礼します。」



そういうと、凌縁は静かに姿を消した。



お昼ごはんのお弁当


から揚げに、きんぴらに、おにぎりと稲荷寿司とポテトサラダ。豚肉のウィンナーに卵焼きにきゅうりと大根の浅漬け・・・朝からたくさん作ったのに、あっという間に減っていく。

私の料理の腕、意外によかったんだ・・・なんかみんなに教えてもらった気がする。


「椿ちゃんのご飯のおいしいべや。」


相変わらず、火燐さんは私にくっついてくる。さっきの事もあるから、離れてくれません。

しかも酔ってます!大変です!!いつも以上に離れてくれません!



禮漸さんと風燕さんは、届いたお酒を引っ掛けてベロベロ・・・。

帰り・・・禮漸さんが運転なんだけどな・・・

横で我慢してる緑涼さんがなんか可哀想です。


蓮流さんはというと、お弁当の一部とお酒を持って湖に飛び込んでしまいました。

緑涼さんに聞いたら、この湖のそこにご実家とご両親のお墓があるそうです。

近況報告といったところでしょうか。

ちなみに、緑涼さんによると、私達がそこに行くことは出来ないそうです。

代々、魚人の血をひく方しか入ることが許されないらしく、親父も入れなかったとの事。なので、この小旅行があるらしいです。みんなで御参りに来ましたよって意味もこめてだそうです。


(車の中)


「俺~は・・・椿ちゃんと結婚すんの~・・・zzz・・・」


火燐さん暴睡です・・・やっと寝てくれたので身体が軽くなりました。

車に戻るまでずっと火燐さんにお姫様抱っこされて・・・身体ガチガチです(泣)


横では禮漸さんと風燕さんが飲みなおしてます。母さんの話を酒のつまみにして・・・


「嫁、綺麗過ぎる!本当に正嗣の嫁なのか?禮漸。」

「本当。椿ちゃんも凌縁もそういってたから。」

「正嗣に不似合いの嫁だな。もったいない。」

「美女と野獣だな。俺もそう思った。」

「どっかから、かっ攫って無理やり嫁にしたのかな?正嗣。」

「豪快だね。俺の嫁になれ!とか脅して?」


「いや・・・そうじゃないですから。」



思わずそう言ってしまいました。

馴れ初めはなんとなくは知っていたのですが・・・いうのやめました。

だって、2人の見解が違うから。

どっちが正しいかわかんないし・・・。


「へいっ!おまちっ!」


蓮流さんがキッチンから戻ってきました。

おつまみを手に・・・


「お前も飲めよ!蓮流!」

「俺も?後で飲むからいいよ。もう、飲むのやめたほうがいいんじゃない?二日酔いで苦しむよ!風燕。」

「大丈夫だよ。な、禮漸?」

「多分な。大事をとって寝てたほうがいいかもな。」

「は?飲み足りないんだよ!俺は・・・」

「はいはい(呆)」


家に着くまでこんな感じでした。


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