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実家に帰りました。部屋にこもりました。


(5・6 AM10:25 )


様々な言葉が行き交う空港。



「さ、行くか・・・」



私は、苦痛で仕方なかった実家に戻ることになった。


バスの景色は、緑色しか広がっていない相変わらずの風景。

私が飛び出した時と同じ。まるで時間が止まった世界みたい。

バスはどんどん山の頂上に向けて走っていく・・・



(5・6 PM12:05)


バスは、薄暗い山のふもとに到着。私はそこで降りて、バス停の後ろから延びる砂利道を、キャリーバックを引っ張りながらとことこと歩いていく。

数分後、見慣れた2階建ての洋館(=実家)に着いた。



「やっと着いた・・・」



私は、息を切らしながらその洋館に入った。



(5・6 PM12:35)


屋敷に入ると、少し異様な雰囲気がするような気がした。

でも、私は気にせず家の掃除を始めた。

数時間後、引越し業者が家具などいろいろ運び入れた時、外は少し赤く染まり始めていた。



“アレダレダ?”


“ダレダロウネ?”


“モシカシタラ、マサツグノムスメジャネ?”


“マジデ!マジカワイイ!オレタイプダベ!”


“オイ、アノコハニ・ン・ゲ・ンダゾ!ムリムリ!ゼッタイムリ!”



そんなやり取りが聞こえた気がした。


(5・7 AM9:35)


親父の納骨式。

山奥の教会にあるお袋の墓の横にもう墓を建ててやがった。

そんな所はきっちりしている・・・と改めて感じた納骨式だった。


(5・7 PM11:00)


パソコンのメールを確認していると、1階のほうからガタガタ音がする。

嫌な予感しかしないので、前の家で使っていた折り畳みの椅子を持って下に下りた。


「誰だ!」


そういいながら電気をつけると、そこには5人の男がいた・・・

明らかに現代とはかけ離れた身なりの男たちが・・・


「お前こそ誰だ!」


執事・・・いや貴族のような服の男が私を指差しながらそう言い出した。



「私は、ここの住人!人の実家に土足に上がってんじゃねぇよ!」



思いっきり椅子を振り下ろしたが、いきなり出てきた一番背の高い男に軽く止められてしまった・・・。

男は、椅子を取り上げられると、私の腰を掴んで持ち上げた。


まるで“高い高~い”をされるみたいに・・・


「やっぱり・・・」

「やっぱり?」


「お前、正嗣(まさつぐ)の娘だろ?」

「正嗣・・・お前ら親父のこと知ってんのか?」


私がそういった途端に、男たちの表情が少し変わった・・・


「やっぱ、正嗣の娘っ子か!」

「んだ!話し方まで正嗣そっくりだべ!」

「襲い方まで一緒とはね~♪さすが親子だわ(笑)」

「かわいい・・・かわいいべ~!」

「人間のドコがいいんだよ!眼覚ませ!」



(誰だよ・・・こいつら・・・)



男たちは口々にいろいろ言い始めた。

とにかく、ウザイ。



「とりあえず、降ろせ。」



私は、あえて高圧的な態度で相手にそういった。

すると男は・・・



女子(おなご)が、そんな口の利き方するもんじゃねぇ!」



あたかも父親かのように怒り出した・・・。

そんな時、あることに気づいた。



頭に何か付いてる・・・



どう考えても、人間には付いていないものが・・・


「とにかく降ろして!!」

「もうそんな言い方しねぇな?」

「気をつけますから!」



・・・やっと降ろしてもらえた。



「あ・・・あの・・・」

「あぁ?何だ?」

「頭に何か付いてましたけど・・・」

「おらぁ鬼だ。角ぐらい付いてるのは当たり前だ。」



・・・?


・・・鬼?



「お・・・鬼?」

「そうだ。」

「ってことは、ほかの方も・・・」

「そうだ。みんな人じゃねぇ。」




・・・



この時、改めて親父のことを恨んだ。

私が出て行った理由もそこにあるからだ・・・。



「戻ってくるんじゃなかった・・・」



私は、思わず口に出してしまった・・・。

もう、昔のことは水に流そうと心に決めていたのに、口にしてしまった・・・。

気づくと足は自分の部屋に向いていた・・・。



(2012・5・08 AM00:05)



「お~い~!!出てこんね~!」



さっきの鬼が部屋にまでやってきた。意地でも部屋は開けない!

でも、さっきから誰かに見られている感がするんだけど・・・



「ね~ね~・・・」



声のほうに眼を向けると、そこには小さな子狐・・・



「ね~ね~」



子狐はそういった瞬間、人の姿になっていく。



「俺、お前に惚れた!俺の嫁さんになってくれ~!」




・・・




完全に変化した姿は、白色の着物に橙色の袴、目尻を紅く塗った男・・・

さっき1階にいた5人のうちの一人だった。

どうやってこの部屋に入ってきたのか怖くなってきた・・・。

おまけに思いっきり肩掴んでる・・・。



「ぃ・・・いやぁぁあああ~~~~~!!」



ドンっ!



ドアが勢いよく開くと、さっきの鬼が入ってくる。

手には、牛刀のような形の大きな刀・・・。


「大丈夫か?!」

「大丈夫じゃないです!助けてください!」

「って・・・お前・・・何やってんだ?」



「ん?プロポーズだべ♪」



鬼は狐の顔を刀の側面で顔をバンっ!

フルスイングという言葉が似合うくらい大振り。


「痛てぇ~よ~(泣)何するべ!」

「馬鹿かおめぇは!女子の部屋に勝手に入って!失礼すぎるべ!」



そういいながら、狐の首根っこを掴んで投げるような形で部屋からつまみ出した。


少しの沈黙の時間が始まった。




「なぁ・・・。」




鬼は、私に背中を向けながら声をかけてきた。



「・・・」


「腹割って話さんか?今。」


鬼は私のほうを向きなおし、真剣な目でそういった。



「出て行っ・・・。」

「正嗣に頼まれたんだ俺。お前さんのこと。」



・・・



「俺が死んだら、娘のこと頼むって。何もしてやれなかった俺の代わりにってさ。だからさ・・・」



「親父は、どこまで私を苦しめたらいいんだよ!もうマジ帰ってこなきゃよかった!」



そういって近くにあったクッションを鬼に向かって投げた。

鬼の身体に当たったが、鬼は悲しそうに私を見つけるだけで何も動じない。

むかついて、近くにあったいろいろなものを投げまくった。

それでも鬼は動じなかった・・・。




「いつもそうだった!私や母さんの事ほっといてばっか!私たちより妖怪だのお化けだの、なんだのって・・・私達の何も見てないんだよ親父は!!私たちのことなんて!だから・・・だから・・・」





涙が止まらなかった・・・。



とにかく止まらなかった・・・





「思いっきり愚痴っていいから。思いっきり吐きまくれ。だから・・・」




そういって、鬼は私を抱きしめた・・・。




「思いっきり泣け。全部吐き出せ。」



私はなぜか、その鬼の胸の中で思いっきり泣いていた。

ガキの時に感じることの出来なかった暖かい感じがしたからかもしれない・・・。



「おらが、お前さんの親父だ。今から新しい思いで創っていこう。いまか・・・」



そんな時だった・・・



「ぅわぁ~~~~!!ずるいべ!!俺もギュってする!」



そういって狐は、背中から私に抱きつく。




「はいはい(怒)」




狐の脳天に拳をガンッ!

狐は、私から手を離し頭を抑えながらうずくまっている・・・。



「もう大丈夫そうだな。」



・・・



「じゃ、下に戻るか。」



鬼は、狐の襟元を掴みながらそういった。

鬼の問いかけに私は応じて、部屋を出た。




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