第二話
「たっだいま〜」
ついに来てしまった。孫呉の陣。その中に、見覚えある二人を見つけてしまった。
「雪蓮、やっと帰ってきたか。全く、自分の立場ってものを――」
「あー、ごめんごめん」
全く反省してないようだ。昔から、だから、仕方ないのかもしれないが。
「全く……それで、そこの者は誰だ?」
「蒼鬼よ」
「蒼鬼じゃと!?策殿本当なのか」
「そうよ。ねぇ、刹那」
「全く、勝手に変な名を付けられて、迷惑です」
被っていた布を外し、素顔を見せる。
「刹那!?」
「生きておったか」
「お久しぶりです。冥琳殿、際殿」
二人供驚いてはいるけど、際殿は酷くないか?
「………………」
その後、すぐに冥琳殿が近づいて来た。うわ〜、怒ってる。
ドガッ!
「へぶっ!」
一瞬、思考が追い付かなかったが、頬から来た痛みから殴られた事がわかった。
「全く、皆がどれほど心配していたと思っている!」
「…ごめん……なさい」
何だこの威圧感は!?昔はそんな威圧感は出していなかったはずだが……
「まあ、帰ってきたから良いじゃろう。それで刹那、お主はこれからどうするのじゃ?」
「もともと、この地にいる賊を殲滅してから、呉に戻るつもりでした」
「そうか。よくぞ戻ってきたな」
「何度か死にかけましたが」
「まあ、その事は、おいおい話してもらうとして、やる事はやったし帰りましょ」
と言う事で、冥琳殿に殴られ、館の方に帰った。その間に、呉の現状を聞いた。
雪蓮seid
「ふぅ……。あぁ~~……腹立つ~……」
いつも袁術のところに行くと、腹が立つわ。
「お疲れ様。……その様子では吉報はなさそうね」
「また約束をはぐらかされたわ。……むかつくったらありゃしない」
これで何度目だったかしら。
「……袁術さんの狙いは、精強で鳴る孫家の軍団をこき使うことでしょうからねぇ~」
「本人たちは意図を隠しているつもりらしいがな」
「ミエミエ過ぎるから余計にむかつくのよ!」
「全くじゃ」
「しかし、腹が立つからといって、今、袁術に楯突くのは得策では無かろう。……雪蓮。もう少し機が熟すのを待ちましょう」
「分かってる。分かってますってば。でも……むかつくのは止めらんないのよ」
「まぁまぁ~そういうときは深呼吸と気分転換ですよ、孫策様♪」
気分転換ね~。あっ!そうだ!
「刹那は今、何処?」
「ええとぉ~刹那さんは、部屋で寝てますよぉ~」
「なんで?」
「策殿が袁術のところへ行かれてから、旅のことを少し聞いたのじゃ」
「ここ数日はまともに食事も取ってなく、あの戦いの前にも数度、賊と戦っていてボロボロだった。部屋に案内したら、すぐに眠ってしまった」
今のあいつを見たら、鈴蓮も悲しむ。と付け足した。そうね、少し心配だなぁ。
「それよりも、私は雪蓮の方が心配だがな」
「それ、どういう意味よ?」
「そのままの意味だ」
冥琳に心配されるような事したかしら?
「まあ、いいわ。今から刹那のところに行ってくるわ」
「襲うなよ?」
「分かんない」
冥琳の拳骨を喰らって、刹那がいる部屋にむかった。
刹那seid
雪蓮が館に帰ってくる少し前。
「うん……ふぁ~~。結構寝たな」
外は、もう夜になっていて、月が地面を照らしている。
「…………」
特にする事がなかったため、姉上からもらった笛を手に外に出た。
「……―――♪♪――♪――」
中庭で、椅子に座り演奏をはじめる。暇な時によく演奏しているが、姉上のように上手ではない。
「――♪――♪♪―♪」
この今演奏している曲は、一番最初に教えてもらった曲で、一番気にっている曲だ。
「♪♪――♪―♪♪♪――………」
ぱちぱちぱち
「上手くなったわね」
拍手していたのは、壁にもたれていた雪蓮様だった。
「いえ、姉上にはおよびません」
姉上には、何もかなわなかった。武術も勉学も笛も。でも、そんな姉上だから尊敬していた。
「冥琳から聞いたわ。無茶してたようね」
「………………」
「無茶をするな。とは言わないわ。でもね、自分の限界は弁えておきなさい。あなたが死ぬのを鈴蓮は望まないわ」
「御意」
「そう――」
ちゅっ
「しぇ、雪蓮様っ!」
頬に感じた柔らかい感触に、顔が熱くなった。
「照れちゃって、可愛い。また明日ね」
すぐに去っていった。
俺も与えられた部屋に戻った。一度寝ていたのと、さっきのせいで、直ぐに眠れなかった。