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追放召喚者のダンジョンには、最強竜と魔狼(もふもふ)が住んでいます ~魔力SSSで始めるスロー・ダンジョンライフ~  作者: 黒猫ている


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59:月夜の祝福

『いいわねぇ、青春じゃなぁい♪』


響いた声は、やけに嬉しそうな女性の物だった。

私の前には湖を背に、ナイスバディの女性が立っている。

長い髪に、白い肌。

息を呑むほどに綺麗な人だ。


……いや、立っている訳ではない。

地に足が付いていない。

この人、湖の上にふわりと浮いている?


「えぇと……貴女はいったい?」

「なんだ、何一人でぶつぶつ言っている?」


私が戸惑っていると、ヴィルベルが怪訝そうに聞いてきた。


「……一人で?」


ヴィルベルが重々しく頷く。

改めて、相手の女性を見る。

……ほんのりと、向こう側が透けて見えている気がする。


「えーと……ひょっとして、貴女は精霊?」

『うーん、惜しい! まぁ、精霊みたいなものね~』


女性がふわりと舞い上がる。

すると、湖面から立ち上る雫までもが精霊達と一緒に、くるくると月光の中を舞い始めた。

あまりに幻想的な光景。

夜風が湖面を浚い、木の葉が揺れる。


「そこに居るのは、水の精霊王だろう」


事も無げに、ヴィルベルが答える。


「精霊王?」

「精霊達の王だ」


わーお。

水のってことは、他の元素にも精霊王が居るのかな。

確かに、普段見る精霊達はまるで子供みたいなのに、目の前の女性は落ち着きと奇妙な威厳みたいなものを身に纏っている。


『貴女には、精霊達がいつもお世話になっているわね。一度、ご挨拶をしなきゃと思っていたの』

「あ、いえ」


そう言われて、思わず頭を下げてしまうのが日本人というもの。


『良かったら、いつでも遊びに来てちょうだい。私はこの湖に住んでいるから』

「でしたら、今度お土産を持って来ます」

『あら、いいわねぇ♪』


私の言葉に、精霊王が嬉しそうに宙を舞う。

それにあわせ、水が粒となって舞い踊る。

なんて神秘的な光景だろう。


『貴女には、そこな古代竜が居るから必要ないかもしれないけれど……』

「え?」


不意に、湖の上に居た精霊王が、すぐ隣までやって来た。

頬に、細い指が触れる。

ひんやりとした感触。


『異世界から来た我等が友人に、幸多からんことを』


精霊王の顔が近付いてきて……一瞬だけ、額に唇が触れた。


「~~~~~~~!?」


慌てて飛び退くと、精霊王は揶揄うように声を押し殺して笑っていた。


「ビックリするじゃないですか!」

『ごめんなさい。でも、便利だと思うわよ』


便利?

今の悪戯の、何が便利だと言うのだろう。


「……精霊王の祝福だ」

「祝福?」


それって、あれかな。

加護と並んでファンタジー作品定番のスキルで、何かと便利なことが起きたりするんだろうか。


その割に、ヴィルベルはなんだか面白くなさそう。

ま、彼にしてみれば、祝福なんて必要ないって思っていそうだよね。


『そんなに怖い顔しないでよ。ほんのおまじない程度のつもりだったのに~』


……ヴィルベル、そんな凄い顔をしているのかな。

ま、元が強面だからなぁ。

機嫌が悪い時のヴィルベルは、そりゃもう、立っているだけで人を殺せそうなほどだ。


「……帰るぞ、スズカ」

「あ、うん」


低い声で促され、ヴィルベルの後に続いて歩き出す。

一度湖の方を振り返ったなら、水の精霊王と湖に住む精霊達が、元気に手を振っていた。


月夜の、不思議な体験。

こんな経験が出来るのも、異世界ならではだよね。


それにしてもヴィルベルったら、なんで急に不機嫌になっちゃったんだろう。

それに、湖に来た時の、あの言葉──一体、どんな意味があったんだろう。


……やめておこう。

考え過ぎたら、きっとドツボに嵌まる。


こういう時は、部屋に帰って寝るに限る。

明日朝起きたら、きっとヴィルベルの機嫌も直っているよね……?

なんと、本作が第1回やわらかスピリッツ女子部×小学館文庫キャラブン! コミカライズ原作小説コンテストで西洋風異世界大賞を受賞しました!

https://yawaspi.com/originalworkcontest2025/index.html


この59話までは事前に書いて予約投稿していたのですが、今後の投稿及び公開については、編集さんと相談の上決定したいと思います。

今暫くお待ちください。


小学館から書籍化&コミカライズされる予定ですので、是非お楽しみに!

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