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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん
第一章 退屈からの脱却

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夢散策

5/2テコ入れしました

「な、なんだこれ…?」


俺の問いに答えてくれる声は聞こえてこない。

誰もいないのだから当然であるが、なにもかもが異常である。

駅のロータリーにも車はたくさん止まっているが、誰も乗っておらず、道路を見ても通行していたはずの車までもがなぜか停まっている。

まるで時間が止まってしまったかのようだ。


「白昼夢ってやつか…?」


この現象はどう考えても現実的にありえない。

いつの間に寝てしまったのかは全く分からないが、俺はそう結論付けた。


「それならそれでこんなホラーテイストじゃなくて、時間停止モノのAVみたいな夢が良かったぜ。」


姉さん以外の女に興味は無いとはいえ、俺にだって性欲はある。

せっかく時間が止まってても肝心の女もいなければ、男すらいないので子供の悪戯の真似事だってできやしない。


「せっかくだし普段できないことでもやってみるか。起きるまでに俺の想像力の限界を見てみよう。」


そう気分を入れ替えて、なんとなくで駅に向かう俺。

先ほどまでは人混み溢れていた駅にも人っ子ひとりいない。

機能していない改札口を素通りし、横目に見た改札窓口の部屋の中がどんな風になっているのかと気になりつつ、足を駅のホームへと続く階段に向けた。


そっちへ行かないといけない気がしたから。


少なくてもロータリーにいた時には自分が発した音以外には何も聞えなかったが、階段を上っているときにパキッというラップ音のようなものやピチャピチャという水音のような音が聞こえてきた。

普段の生活で聞いていたとしたら気がつかない…というよりは意識できない類の音だろうが、この異様な空間であれば『今話題のあの曲』みたいなやつよりも俄然、興味がでるというもの。


果たして俺の夢はこの状況でどんなシチュエーションを創造してくれるのか?なんてことを考えて階段を上がりきった俺は、『それ』を見た。


「ふむ…」


それを見たときの感想は『でかい』だった。それが何であるかを判断する知識を持ち合わせていなかったため、そうとしか感じようがない。

強いて言えば動いているが、ブヨブヨした肉塊のようで機械ではない。

つまりは生き物であるかとは思うが、それがどういう生物かが分からない。

どうせならかわいい猫に囲まれる夢のほうが良かったが、俺の深層心理はよく分らんバケモンを生み出してしまったらしい。


まぁこれはこれで面白いかもしれん。

足を止めることなく、それに近づいていく。

そして近づくにつれて、気づく。


「…くっさぁ…、何の臭いだ、こりゃあ?」


今までの人生では嗅いだことのない酷い悪臭に加え、水音の正体も判明することとなった。

そのブヨデカの下には赤い液体が広範囲へと広がっていた。

ピチャピチャ鳴ってたのはあれだな。

やつの血だろうか?臭いもその血、もしくは奴自身の体臭かもな。


…ってかなんで夢でこんなくっさい思いをしないといけないんだ…


自分の夢のクオリティの高さに辟易してしまうが、気にせず近づきブヨデカのがあるのかもわからんがを拝んでやろうと回り込もうとしたとき、足が見えた。


人間の足だ、床に落ちている。


膝上辺りから指先までの足が一本。

見慣れたスカート。

ハルカも着用していたウチの学園の制服だな。

よく見たら手の指のようなものや、臓物のようなものも汚く散らばっていた。


「…スプラッター映画はわりと好きだけどな。」


床に散らばっていた臓物を目で追うと、ブヨデカの『大きな口』に繋がっていた。

後ろから見ていた時は、ナメクジみたいなのを想像していたが、正面に立って見たそいつはでかい顔だった。

体のパーツがほぼ顔で占めていて、申し訳程度にちょこんと手足が生えている。


「きもっ!?」


と、同時に夢の正体に合点がいった。


「ああそっか。進◯の巨人か…」


最近読んだ中で最も印象に残っていた神漫画だ。

どうやら俺の深層心理はあの作品をリスペクトし過ぎて、こんなモンスターを生み出してしまったらしい。


「ふむふむ、さすがは俺。おぞましさとグロテスクさを見事に表現しているな。」


自身の夢に感心しながら、マジマジとブヨデカを観察していると、チュルチュルっと大腸だか小腸だかをうどんのように啜ったあと、虚空を見つめていたその大きな目をぎょろっと動かし、俺を視界に入れた。

くちゃくちゃと咀嚼を続けながらこちらの様子をうかがっているようだ。


「ぶっさいくだなーお前。まぁでもこういうやつのほうが読者の恐怖心を煽るんだよな。」


うんうんと一人納得していると、左頬の辺りから生えていた奴の右腕が急にボコボコと膨張し始めた。

そのまま膨れ上がった巨大な手をホームの床につき、ビタンと大きな音を立てて血溜まりが弾け、こちらまで頭から血まみれになってしまった。

ヌルヌルとした感触に加え、ひどい悪臭に身を包まれる。

最悪だ…と同時に、その全身に浴びた血が妙に生暖かいのがとても気になった。


…なんか、リアル過ぎないか?夢ってこんなにはっきり感覚あったっけ?ここまで意識・思考がクリアな上に、嗅覚、触覚と全てを感じられる夢なんてあるのだろうか?


そう思い込んでいる、という夢なんだろうが…。


その微妙な違和感が無ければ、無理だっただろう。

こちらを鷲掴みにしようとする巨大な手から逃れるのは。


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