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退屈は僕を殺したい  作者: おどろん
第四章 特訓篇

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龍堂菊(クソババア)の能力

相変わらず時間がかかってしまってます。

矛盾がないように確認しながら日々書き続けておりますが、変にこだわってしまい中々指が動きません。

とりあえず修行前のパートとしては今回がラストになり、今後本格的な能力に関しての話や、その後は戦闘描写など入れていきたいなーと予定しております。

毎度のことですが、お気づきの点はもちろん、感想等いただければ大変励み、モチベーションの向上になるかと思いますので、助けると思って何か頂けたりすれば嬉しいです。

「アカネ。コヤツの修行にはあの場所を使いなさい。」


話が決まるなり、そう指示してくるババア。

あの場所とはどこのことだろうか。


「えっ?でもあそこの修練場は他の狩人も入ってくるじゃん。他のヤツには見られないほうが良いんだけど…」


「ばかもん。そっちではないわ。昔使っていたおまえの折檻部屋じゃ。」


「ああ…」


折檻部屋、と聞いたアカネは何か悪いことでも思い出したのか嫌な顔をしていた。


「でもあそこは狭いだろ。」


「ワシの力で拡張する。維持はおまえがやりなさい。」 


「なるほどな!わかったよ、婆ちゃん。」


「あの部屋か、懐かしいわね。ふふっ。」


「あら?神楽も昔はお仕置きされていたの?案外ヤンチャな子だったのかしら。」


「いいえ、アカネがお仕置きされる度に世話係をさせられていたのよ。」


「ああ、そういう…」


懐かしそうに笑う姉さんと、呆れたように納得する杏。


「ただあの部屋はここ数年誰も入っとらん。先に掃除をしたほうがいいじゃろう。終わったらワシに言いに来ると良い。()()をしよう。」


「承知しました、菊お婆様。それじゃあ私が2人を案内するわ。ほら、アカネも行くわよ。」


姉さんはそう言って俺たちを先導してくれる。

杏と嫌そうなアカネが続き、最後に俺が部屋から出ようとしたところに、声をかけられた。


「…もし、お主が何か良からぬことを考えておるのなら…」


最後まで言葉は続かなかったが、それまで鳴りを潜めていた殺気を十二分に浴びせられた。

俺は無視して部屋を後にした。


姉さんは過去の思い出話を杏に話ながら前を歩く。

杏はそれを面白そうに聞きながら姉さんの隣を歩いていた。


もうひとりは、


「なぁユウト。おまえ、本当に婆ちゃんに何をしたんだ?」


歩くペースを落として俺の隣に来るとすかさず小声で尋ねてきた。


「俺が知るか。むしろおまえがあのクソババアに聞いてこい。別に下手(したて)に出るのは構わないが、原因もなにも分からない内は俺としてもなにもできん。」


「そんなこと言ったってな。婆ちゃんは意味もなく人を嫌ったり、ましてやあんな態度なんて取らないぞ。ひょっとしたらユウトが外でなんかやらかして、それを見られてたとかじゃないか?」


可能性で言えば無くはない。

基本的に俺が見られている気配に気づかないことはないが、ババアだけは例外である。

昨日のようにおバカさんたちを()()しているような現場でも見られていた可能性はある。


とは言えだ。


「お前にも姉さんにも話してなかったと思うが、俺がババアに疎まれてるのは初見の時からだ。だから普段の行いとか、そういうのは関係ないはずだ。顔が気に入らない、のほうがまだ可能性が高いだろうな。」


「ふむ。確かにユウトは小さい頃から生意気だったが、それであの扱いは無いよな。」


「姉さんの手前、強くも出れん。アカネ、あのクソババアを何とかしろ。」


「クソババアなんて言ってやるな。頑固だけど普通の婆ちゃんだ、ユウト以外には。」


それがめんどうだという話なんだが、まぁコイツはコイツで一応助け船を出してくれたし、とりあえず感謝はしておこう。

心の中だけでな。


「さっ、ここよ。」


ババアの部屋から然程時間もかからず、特に変哲も無い扉の前に立つ。

『関係者以外立ち入り禁止』の文字さえなければ見ても何も感想など出ないだろう。


「なつかしいなぁ…。昔はここで婆ちゃんによく吊られたもんだ。」


言い方的には懐かしい思い出に浸っているようにも聞こえるが、顔は険しいアカネ。

それを聞いてクスッと笑った姉さんは特に何も言わずに扉を開く。

かなり埃っぽく、ろくに人が入っていないことは容易に分かる。

かなり薄暗い中を迷わず進んでいった姉さんは、軽く咳き込みながら窓を開けた。


「これは…今日中に片付くかしら…。」


苦笑いでこちらに問いかける姉さん。

困り顔も素敵だ。


「菊お婆様の能力を使う前に掃除というのは正解だったわね。とはいえこれはかなり骨が折れるわよ。今は10時過ぎ…少なくてもお昼までの2時間弱では無理でしょうね。お昼までやって、昼食をとってから再開。まぁ夕方までには終わるんじゃないかしら?」


「料理ほどではないけれど、私はそんなに掃除が得意じゃないというか…ユウ君にほとんど任せっきりになってしまってるから、足を引っ張ってしまうかもしれないわね…。情けない姉でごめんなさい。ユウ君…。」


「俺は掃除好きだから大丈夫だよ!姉さん!」


「アタシは…」


「おまえは床の雑巾掛けでもしていろ。」


アカネは整理整頓、掃除といった類の物とは完全に無縁の人種だ。

ガサツなくせに女子として見てほしいだか何だかで、部屋の中も可愛い感じのキャラクターや動物のぬいぐるみなどで溢れかえっている。

そして足の踏み場も無くなってくると決まって俺に頼ってくる始末だ。

邪魔なら捨てろとも言ってみたが、


『女の子とのデートでの戦利品だー』


とか


『可愛い女の子は可愛いものを持っていないといけない』


などと謎理論をぶちかまし、そもそも自分で片付ければ良いと言ってみたが、


『片付けが苦手って女の子もギャップがあって可愛いだろ?』


と意味不明なことを言い出したが、俺はハッキリ言ってやった。


『多分お前が言っているのは可愛い女子ではなくて頭が悪い女だ。何を参考にしたかは分からないが、多分お前のビジュアルが無かったらただのウザい女判定だと思うぞ。』


ちなみにお前が片付けできません、って言ってもギャップは発生しない…

と続けたところでアカネと戦闘になった。

戦闘中にも、


『むしろお前がぬいぐるみを持っていること自体がギャップだ』


と挑発したら見事にボコられたことを思い出す。

あまりにも理不尽なので姉さんにチクって無理やりにでも掃除させようとしたが、結果は散々なものであった。


ガサツな性格に加え、その有り余るパワーで色んなものを壊しまくっていったアカネに、姉さんは急遽ストップをかけて不本意ながら俺に掃除係を任命したのだった。

そんなアカネに下手に部屋の物を触らせられない。

こいつには床の雑巾がけが丁度いいだろう。


「えー。でも雑巾がけってつまらねーし、下の者がやるやつだろ。ユウトが雑巾やれよ。アタシは箒で掃き掃除するから。」


「なんだ、下の者って。カースト上位の馬鹿な小学生みたいなこと言ってないでさっさとやれ。」


きつい雑巾がけはアカネにやらせて、掃き掃除は姉さんにやってもらおう。

杏子は掃除が苦手ということもないようだし、俺と手分けして細かい所を回るとするか。

アカネの文句は無視して姉さんと杏子と俺でそれぞれやることを確認する。


「こんなんだったらユウトを閉じ込めて二人っきり大作戦のほうがマシだったかな~」


などと背後から恐ろしい声が聞こえてきたが、誰もそれに返事をすることはなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


時刻も17時を回ろうとするところでようやく掃除を終わらせることができた。

部屋自体は大して広くもなかったが、至る所に張り巡らされた蜘蛛の巣や埃やチリが積もりに積もっていた部屋は中々に大変であった。

特に蜘蛛の巣や他の小虫などの対応は姉さんも杏子も虫が苦手ということで全て俺が対応した。

ちなみにアカネは虫は全く問題ないのだが、


アタシの仕事は雑巾がけだから関係ないな


とクソ生意気なことを言っていたので、雑巾がけをしている途中のケツに思いっきり蹴りを入れてやったが


「いやん♪ユウトのえっちぃ♪」


に留まる。

早く神通力の無力化(ニュートラライズ)なるものを鍛えてこいつをボコボコにしてやろうと、俺はそう固く誓ったのであった。


「そういえば今更だけど、婆さんの能力ってどういう力なの?姉さん。」


ふと疑問に思った()()()聞いてみる。

訓練として使うというのなら普通の道場くらいの広さを想像していたが、この程度の広さの部屋では派手に動くことはできないだろう。

能力を使う、と言ってはいたがどういう力なのか。

単純に考えれば空間を拡張する的なものが考えられるが、それだと俺の力がババアに通じないことの説明がつかない。

それに誰も外から入れない的なことを言っていたのも気になる。


「菊お婆様の力は領域の操作、【エリア・コントロール】と呼ばれる力よ。」


領域(エリア)()操作(コントロール)…じゃあその力で部屋を広くして使うってことかな?」


それだけではないはずだ。

凄いは凄いがとても地味だし、そんなのが日本支部でのトップだとは思えん。

まぁババアの場合は血筋ってことも考えられるが。

このでかい神社の代表的立場でもあるしな。


「なんというか偉い人のわりには能力は地味なんだね。」


「いえ、ユウト君。あの人も大概おかしい…ていうのは失礼ね。物凄い力なのよ。」


すかさず杏子が言葉を挟んでくる。


そう、そこだ。俺が知りたいのは。


「確かに似たような力を今まで発現してきた狩人もいて、地味だし戦闘には向いてない能力と言われていたんだけど、菊お婆様のソレは次元が違うの。さっき言っていた空間の拡張なんかはもちろん、ありとあらゆる操作を可能とする。」


「なんか急に凄そうに聞こえますが、具体的には?」


「菊お婆様が定めた領域、その領域内ではさっき言っていた空間の拡張なんかはもちろん、気温や湿度、明るさから重力、酸素濃度だろうがなんだろうが思いのままなの。まぁ本来無い物質を生み出すとかは流石にできないけどね。で、それだけでも凄いのだけど、一番凄いのがその領域が『菊お婆様だけの物』という点ね。」


…やはりよく理解できない。

ババアが作ったものであるなら、ババアだけの物であるというのは当たり前だと思うが。


「婆ちゃんが指定した領域には、婆ちゃんか婆ちゃんが認めた人間以外は全く干渉できないんだ」


よく分からないという表情をしていたであろう俺に、言葉を継いだのはアカネだ。


「干渉ができない…。それがさっき婆さんが言っていた『外からは~』ってやつか?でもやはり地味に思えるが。」


「説明が難しいのだけれど…言ってしまえば菊お婆様だけの小さな世界を作れる、って言ったほうが分かりやすいかもしれないわね。部屋とか空間って言葉だけで考えるとスケールが小さいように聞こえてしまうけど、例えば恐ろしく強い鬼憑きが出てきて戦闘が困難ってなった場合、菊お婆様がその空間に逃げ込んでしまえばもうその鬼憑きは一切手を出せなくなる。いえ…わざわざそんなことをしなくても、その空間に鬼憑きを閉じ込めてしまえばいいのよ。もうその段階で実質勝ちね。そいつはどう足掻いても脱出できないし、アカネをそこに入れるだけでゲームセットよ。多分、最初はユウト君をそういう風に閉じ込めようとしたのでしょうね。」


再び杏の補足が入る。

なるほど、その力は確かにとても厄介だ。


そして理解した。

俺には感知できなかったが、俺と対面しているときにババアはその力を使って俺の、感情を読む力を封じていたのだろう。


つまりはババアの力の要とは、空間の操作というよりも『断絶』と言ったほうがいいかもしれない。

ユキなら何とかできるのかもしれないが、それ以外の鬼憑きなら出会ったらほぼ摘みなのか?

確かに狩人の、日本のトップと呼ばれるにも相応しい力なのだろう。


しかし弱点はあるはずだ。

少なくても、その力でアカネを制することはできないのだろう。

確認したわけではないが、あの頑固ババアがアカネの意見で折れたのはアカネに対して

『強制的に言うことを聞かせられない』

からだと推測できる。

それができるなら、反対するアカネを俺同様に閉じ込めてしまえばいいからだ。


条件やデメリットはまだ分からない。

疑問も残る。

俺の力を防いだのは分かったが、そもそも何故俺の力に気付いたのか。

いや、そもそも力を気づかれているのか?

干渉を感知した程度なのか?

今後、隙を見てよく探っていくとしよう。


あのクソババアは必ず俺の未来の障害となるだろう。


早々に…葬送してやろう、なんてな。

5/7テコ入れしました

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