74 俺に勝って
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「このボタンでドリフト」
「う、うん……」
由乃の手を握りながら、ZLを押してドリフトする。
人の手を握ってのゲームはやりにくいかと思ってたけど、案外できるもので現在順位は2位を取れている。
「ちゃんと吸収してるか?」
「う、うん」
さっきから由乃に操作を教えてるけど、帰ってくる言葉はずっと同じ「うん」のみ。
「お兄、うまいのなんで」
「まあ、レースゲームは感覚でできるから。泥ネコよかぁ、簡単に出来るからな」
このレースゲームは、泥ネコほどやり込んでた訳じゃないけど、簡単なアクションさえちゃんと覚えていれば、そこまで難しくは無い。
「で、ここを押してアイテム。でも1位の時は、こうやって防御に使うのがおすすめ」
「ん!?」
ZR押し込みを維持して、カートの後ろに防御のための攻撃アイテムを構える。
「ちょ、ちょっと手、手」
「あ、痛かったか?」
由乃から手の力に関する苦情が来たため、手の力を緩めて操作を続行する。
「ゴール」
由乃の手を握りつつ、さっきのまま1位を維持して、ゴールへ着いた。
「まだまだだな、優來」
「お兄、なんでそんなできる」
「さあ、俺にもわからん」
ただ、前と同じ感覚でやってみたら、意外とうまくいっただけだし。
「で、由乃操作わかったか?」
「あ、うん」
妙に上の空気味な声で、手の甲を見つめる由乃。やっぱ、手の力強かったかな。
「じゃあ、由乃もちゃんと覚えたみたいだし、俺も混ざるか」
「は!?あんたもまざるの!?」
「嫌だったか?」
そこまで拒絶されると、流石の傷つくんだけど。
「ち、違くて、コントローラーのこと」
「そういうことね。大丈夫、優來と由乃のとは形が違うけどあるから」
2人が使ってるコントローラーは、ゲーム機本体を買った後に買ったコントローラー。俺が今から持ってくるのは、本体付属のコントローラーになる。
「ならなんで、最初から混ざろうとしなかったのよ」
「由乃の初心者ぶりがみたくて」
「陰湿……」
「ほんと、陰湿」
ほんとに、由乃のプレイが見たいってのもあったけど、もう1つ普通に休憩したいってのもあったけど、とりあえずそれは黙って、コントローラーを取りに行こう。
「ただま戻りましたよー」
「遅かったわね」
「いやー、使ってないものを探すのには時間がかかるから」
今、優來達が使っているコントローラーを買ってから、今俺が持っている初期コントローラーを使うことが無くなったから、前にどこにやったか忘れて時間がかかった。
「さーて、やりますか」
「お兄、そのコントローラなら私勝てる」
「お前はそんなに俺に勝ちたいのか」
優來の言う通り、使い慣れてないこのコントローラーなら負けても全然おかしくは無いけど。
「由乃もさっきのプレイを思い出して、頑張れよ」
「さっきの!?わ、わかった」
由乃は操作方法をしっかり教えたし、俺と優來に追いつかないにしても、最初より順位は上がることだろう。
「いえーい。また1位、2人ともまだまだだなー。特に由乃」
「しょうがないでしょ!」
「いい加減慣れろよな」
「2日かかるわ!」
俺が違うコントローラーで参戦してから、5レース現在俺は由乃の時の分も含め、6連勝中。
優來らそれに続いて、2位を独占。由乃のは未だに慣れないらしく、最下位を独占。もしや由乃、相当ゲーム下手だな。
「というか、由乃は慣れるとかの話の前に、今日大丈夫か?」
俺が教えてる時も、さっきからもそうだけど今日の由乃は心ここにあらずみたいな感じで、集中力がないイメージだ。
しかも、何故かコントローラーのボタンを押そうとする度、なんかビクビクしてるし。まさか由乃、コントローラー恐怖症なのか。
「体調悪いなら看病してやろうか」
「あんたにできるとは思えないけど。でも、大丈夫よ健康体そのもの」
「嘘じゃないよな」
「ほんと…………ヒッ!」
由乃のおでこの温度と、俺のおでこの温度の違いを確かめて、由乃が嘘をついてないか調べる。触っ感じ、嘘はついてないっぽい。
てか、「ヒッ!」って酷くないか?一応心配してるのに。まあ、急にこれされるのは怖いか。
「俺と同じくらいだな」
「お兄、私も」
「なんで?まあいいけど……お前は冷たいな。大丈夫か」
優來のおでこは、触ってみた感じ暖かいというより冷たい。
「大丈夫、心以外は健康……」
「ツッコミずらいネタ出さないでくれよ」
心の健康に関しては、マジっぽいからネタになってない。
「まあ、とりあえず再会しようか」
人の健康どうこうは置いといて、もう一度レースをはじめた。
「よーし、また1位」
15レース目、俺は安定の1一応ゴールを決めた。ここまで俺は、負け無し無敵のレーサーだ。
「もう1回」
「俺は、いいけど由乃が……」
由乃の方に目をやると、長時間ゲームになれていないからか、明らか疲れた顔をしている。
「悔しいのはわかるけど、そこまでしておらに勝ちたいかね」
「勝者の余裕……」
「そういう意図はなかったんだけど」
今までの戦績からかんかえて、今の言い方は少し煽りに聞こえるかもな。
「あと、お兄に勝って、お兄の高校行きたいの言いたい」
「そうか、俺と同じ高校か、それは良いここr」
「「は!?」」
「滑った」
唐突に優來の言った言葉に、俺と疲れて眠そうにしていた由乃がその場で大声を上げた。
「お、おま高校って……」
「この間の文化祭、気になった」
「妥当な理由ではあるけど」
言われたことがあまりにも唐突すぎて、頭が上手く回らない。
「あと、お兄、学校行って楽しそう……」
「え、そう?それは嬉しいな」
「なにデレデレしてんのよ!」
真面目な話の途中でデレたからか、由乃のからいっぱつ叩かれた。
「とりあえず話を戻して、優來ほんとに、俺達と同じ高校に行きたいのか?」
言ったら悪いけど、今の状態の優來だと試験に合格できるレベルの学力があったとしても、高校への登校は難しいと思う。
「まじめ。じゃなきゃ、お兄に勝ってから言おうとしない」
優來のなかで、俺に勝つことはそんなに重要なことなのだろうか。
「そうか、とりあえず母さんたちに話してみるか」
この間の文化祭の時に聞いた、優來のやりたいことを考えた結果なんだろうし、そこは尊重してあげたい。
「結構軽いわね」
「まあ、言っちゃえば俺の人生じゃないし」
「ぶっちゃけたわね」
突き放すような言い方をしたけど、優來の人生なのだからしょうがない。それに、俺には優來の進路方向を決める決定権は、母さん達ほど持ってないし。
「でもさ、今から私たちの学校は難しくない?内申とかあるわけだし」
「大丈夫、記念受験って言葉もあるしさ。それに俺の妹は天才だからな」
「お兄……ほめすぎ」
「いやまじまじ」
「あんたら兄妹は」
でも実際のところ、優來は俺より全然自頭いいし学力は死ぬ気でやれば行けると思う。
運のいいことに、俺達のいる高校は学力の比重が高いし。
「まあ、とりあえずおばさんたちに話すんでしょ。それに私は参加できなそうだけど」
「なんで由乃が参加する前提なんだよ。家族じゃないのに」
初愛佳さんの時にも言ったけど、家族じゃない人がそこまでこっちの心配してくれなくていいという話だ。
それでいくと、由乃は関わりすぎなレベルではあるんだろうけど。
「な、なによ。そこまで言わなくたって、私達長い付き合いだし、私優來ちゃんのことは他の誰より理解してるつもりだし……」
「それはそうかもだけど、ただ幼馴染ってだけでなぁ」
「なによ!あんた、彼女いないくせに。まだ、わかんないじゃない!」
え、急に罵倒するじゃん。確かに今の俺は、「年齢=」だけど。
「わかったよ。なにかあった時は、相談するから」
まあ、家族じゃない客観的視点が貰えると考えると、由乃に相談出来るというのは結構便利だけど。
「そう、それならいいわよ。とりあえず、私そろそろ支度しなきゃだから、帰るわね」
「そうか、打ち上げ楽しんでこいよ。彼氏できるといいな」
「だまれ!」
最後に蛇足をつけたら、勢いよくリビングの扉を閉めて、怒って出ていってしまった。
「まあ、俺達はゲームしながら母さん達待つか」
「そうする……今度は勝つ」
久々にゲームやって思っけど、やはりゲーム楽しい。これは、相手がいるからというのもあるかもだけど。
♦
「2人共ただいま、起きてる?」
「母さんは、俺達をなんだと思ってんの」
ゲームしたり、休憩したりを繰り返していると、由乃が帰ってから10分程で母さんが帰ってきた。
「なら良かった。てか、優あんた今日ずっと家に居たの?」
「何も予定ないし。優來と由乃と楽しくゲームしてましたよ」
そう考えると、今日の俺って寝るかリビングでゲームするしかしてないんだな。
「あと、優來から話があるから、父さん帰ってきた来たら話聞いてやってよ」
優來からだと言いにくそうだし、俺の行動は間違ってないよね。
「なによ、急に真面目な顔して。まあ、いいけど」
きっかけは作ったし、あとは優來がしっかり言えるかだな。
「母さんただいまー」
「お父さんおかえりなさい。早かったわね」
「母さんに会うためだよ」
「あらやだ」
母さんが料理を作るなか、俺達はソファにぼんやり座ってテレビを見ていると、父さんが帰ってきた。今日は、少し早めに帰ってきたみたいだ。
「もうご飯できるから、早く着替えてこっちに来て」
「はーい」
母さんが父さんに言うと、甘い声を出しながら父さんは寝室へ上がっていった。
「だから、あんた達もお皿置くの手伝って」
「「はーい」」
母さんに言われ、ソファから立ち上がって、言われた箸と皿を食卓に並べる。
「おおー、2人ともお手伝いか。いいねー」
出来た料理を運んでいると、着替え終わった父さんがリビングにまで降りてきた。
「全部運び終わったみたいだし、早く座って」
母さんが仕切ってから、母さんの隣に父さんが、俺の隣に優來が席に座った。
「それじゃあいただきま……」
「で、優來話ってなに?」
「え?何の話?」
席に座った瞬間、父さんのいただきますを無視して、母さんが切り込む。
「ほら、優來頑張れ」
「だから何の話?」
俺の横に座る優來が深呼吸をして、母さんの方を真っ直ぐみる。
「私、お兄……同じ高校行きたい」
「へー、優と同じ……へ?」
「そういう話しね」
結構重要なことなのに、母さん結構落ち着いてるな。
俺はもうちょっと、由乃とか俺みたいな大袈裟レベルな反応、なんならフィーバーにでも入ると思ってけど、予想の斜め下をいったな。
「母さん、結構落ち着いてるね」
「まあね、一応優來が出てきたタイミングで、そうなる可能性を考えて沢山調べたりしてたから。最近外出が多かったのも、そのせいね」
「母さんはすごいなー」
「1回あなたは黙ってて」
「はい……」
母さん黙ってと言われ、父さんは悲しそうなを目をしながら、ご飯を食べ始めた。
にしても、母さんすごいな。優來が出てきただけで、そこまで考えて行動するなんて。ただ父さんと、惚気けてるだけじゃないんだな。
「それで、調べた結果だけど、別に不登校でも公立高校にはいけるみたい。内申がない分の不利はあるかもだけど」
ということは、俺の考えていた死ぬ気で勉強すればが通用するわけか。
「でも優來、ほんとに優と同じとこに行きたいの?別に今の時代、通信制限とかもあるわけだし。それに、いまの優來には到底学校が行けるようには思えないけど」
「母さんそれは、言い過ぎじゃ……」
「優」
母さんのきつい物言いに、少し言おうとしたら、1人悲しく白米を食べている父さんに、名前を呼ばれ止められた。
「私、普通が……」
「普通って何?別に、通信制に行くことだって普通って言えるでしょ」
人のには、人の基準があってそれぞれの普通があるから、母さんの言い方は間違っていない。
そして今の母さんの言葉で、さっきまでわ優來の顔にあった自信が消えつつある。
「私、お兄の学校ならやって行ける……」
「それは、確証があるの?ただ思っただけなら、また不登校になってはい終わりでしょ?」
「うん……」
だめだ、口論に置いて相手のことを肯定したら、ほぼ負けと同じになる。
「でしょ、だから行くにしても通信制にしなさいよ。それなら、家でできるし人との接触もない」
ほんとは、何かしらで仲裁、というか優來の加勢に入りたいけど、さっき父さんに目で口止めされたし俺には何も出来ない。
「でも…………私はお兄と同じ高校に行きたい!お兄、高校行ってから楽しそうだし、それにお父さんとお母さんに安心してほしいし!」
最後の悪あがきかのように、いままでの優來のカタコト気味の喋り方ではなく、ハキハキと言葉を口から言葉を出す優來。
「でも、優が楽しそうなのって、ただ運で周りの人を引いただけでしょ。優來の代の人が、優の周りの人みたいになる可能性って、未知数だよね」
「それは……それでもいきたい!」
1回怯んだけれど、もう1度力を入れ言葉を出す優來。
「今の状況だって、トラウマ克服までは行かなくても、改善できるようにするし。それに、勉強、頑張るから!」
最後の力を振り絞ってか、最後に1番大きな声で締め括る優來。
「だから、お願い……」
優來自身が、今のじゃダメと思ったのか最後のお願いには、覇気がない。
「そう、じゃあいいわよ」
「え、軽」
また、優來に対して反論するかと思ったら、拍子抜けなことに許可が出た。
「軽いって言っても、元からこうなっても、優來の好きなようにさせるつもりだったし。ただ、優來の覚悟が見たかっただけ。だから……」
席から立ち上がって、優來の方まで行くと座る優來を抱きしめる母さん。
「さっきまでのは、優來を思ってのことなの。そこまで、本心じゃないから、お父さんのことは嫌いになっても私は嫌いにならないでね」
「なんで俺!?」
優しく優來を抱きしめ、頭を撫でながら自己保身をする母さん。
「俺結構いいことしたじゃん。優のこと止めたりさぁ」
「まあ、そんなのは置いといて、ご飯食べましょ。冷めてるなもだし、温め直して」
さっきまでの温度から真逆の、ほんわかした感じで料理を温めに行く母さん。
「そうだ、優はしばらく優來の勉強見てあげなさいよね」
「俺?塾とかじゃダメなの?」
「ダメじゃないけど。最低限の学力みにつけてからじゃないと、あと急に知らない人の前は優來にとってブランクありすぎるし、軽くリハビリして欲しいしね」
まあ、いままで知らない人に会うにしても、俺か母さん達がいたからな。
「そういうことだから、よろしく」
「はーい。とりあえず、明日からよろしくな」
「お願いします……」
中学の範囲なら、まだいけるだろうけど何個か苦手とか、あやふやなのもあるし誰かに助力を頼もう。




