73 甘えたがりシスターと振替休日
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「優來、起きろ」
カーテンが締切っていて暗く、床にものがちらばった優來の部屋で優來をゆすって起こす。
「お兄……今、何時……」
優來をゆすると、すぐに目を開けて、それでも眠そうな寝起きの声で喋り始めた。
「もう12時だぞ」
「お兄、不登校……」
「違う、文化祭の代休」
今日俺は、この間文化祭の代休で家でのんびりしている。決して俺が不登校になった訳では無い。
「そうなんだ、おやすみ……」
俺の事情を聞いた優來は、そのままの流れで寝ようと俺に背を向けて目を瞑った。
「どんだけ寝る気なんだよ。起きろ」
優來が昨日いつ寝たのかは知らないけど、とりあえず起きてお昼を食べてもらおう。
「お母さんは?」
「母さんは、用事。帰ってくるのは、夕方ぐらいって言ってたかな。一応昼は作ってくれてたみたい」
そういえば、いまさらだけど勝手に優來の部屋入ってきちゃったな、まあ怒られることはないだろうけど。
「はいどうぞ」
「ありがと……」
母さんの作ってくれた昼飯を、レンジで温め優來の前に置く。
優來はまだ少し寝ぼけてるのか、眠そうに目をこすっている。
「いただきます……」
「「ごちそうさまでした」」
優來の方が少しだけ早く昼を食べ始めたけれど、俺と同じタイミングで昼を食べ終えた。
「お兄、今日暇?」
「まあ、特段外出予定は無いな」
人によってはデデ二ーに行くらしいけど、俺はそういった外出予定は無い。
「それがどうかしたのか?」
「暇、ならゲーム、しよ」
「ゲームかいいけど、久々だな。いつぶりだろう」
ゲームはたしか、受験勉強の時に一回やめて、その後優來が引きこもった関係で占領し続けてたから、家庭用ゲーム機をやるのは約1年ぶりくらいか。
「でも、そんなにうまくないと思うけど、久しぶりだし、いいか?」
いくら、過去に友達とガチってたとは言え、約1年のブランクは相当実力が落ちていて、ほぼ初心者レベルになってるだろうし。
「大丈夫、2人でやりたい、から」
「そうか、じゃあやるか」
優來の部屋から、ゲーム機とソフトを引っ張ってきて、2人分のコントローラーを充電してから、俺が過去ガチハマりした格ゲー「泥沼乱闘ネコシスター」通称泥ネコを起動した。
「そこまで上手くないと思うけど、対戦よろしくお願いします」
「ボコボコにする……」
コントローラーを握る優來は、得意げにキャラを選択して俺のキャラ選択を待っている。
「俺キャラ何使ってたっけ」
遠い記憶だと、天ノ弱精神で弱いと言われてるキャラを使っていたような。
「たぶんこれだな、キャラの服装にバスローブあるし」
俺がキャラを選択してから、ゲームスタートを押して。優來との試合を開始させた。
「これで、最後」
優來との試合は、意外にも俺が前の感覚を思い出すのが早く、五分五分な戦いの末、俺の勝利に終わった。
「お兄、嘘、ついてた」
「ついてないついてない!ほんとに、久々だって。たまたま、感覚を取り戻すのが早かっただけ」
このゲームは、一般的な格ゲーよりもコンボ、技がだしやすい感覚で出来るゲームなおかげで、感覚を取り戻すのにも苦労はしなかった。
「ほんと?」
「まじまじ。ていうか、優來も全然うまかっただろ」
正直さっきの試合は、どっちが勝ってもおかしくは無かった。
「でも、お兄ひさびさ……」
「それはそうなんだけどな」
ここは少し手を抜いて、可愛い妹に勝利を譲るべきだったか。
「どうする?まだ、続けるか?」
「もちろん……」
もう一度キャラを選択して、俺たちはゲームを再開した。
「あー!負けた」
「連勝」
ステージ外に飛ばされたタイミングで、優來に下へスマッシュを決められ敗北。これで俺は、優來に4連敗したことになる。
言い訳をするなら、一応勝利回数は同じくらいというとこだろうか。
「終わった?」
試合が終わったタイミングで、リビングの入口の方から、声が聞こえた。
「おう、由乃……なんでいるんだ。不法侵入は良くないぞ、最低でも入った時にお邪魔しますぐらい」
「違うわよ!あんたの様子みて来てって、おばさんに言われたから来たの!それに声かけたけど、反応しなかったのそっちじゃない」
まじか、声掛けてくれてたのか、ゲームに白熱しすぎるのも良くないな。
「それはそれは、ごめんなさい」
というか母さん、俺の様子みて来いって俺がまだ寝てるとでも思ったのかな。
「てか、様子見るだけなら声かけなくて良かったんじゃないか?」
「ま、まあそうかもだけど。あいさつぐらいはした方がいいじゃない」
でも、挨拶のためだけにもしかしたら長い時間立って見てたって、もしや由乃相当暇だな。
「お前クラスの打ち上げとかないのか?」
「あるけど、夜だし。暇だったから、ここに来たの」
やっぱり由乃は暇だったらしい。
「そうか、それならもう帰っていいぞ」
「酷くない!?」
「それとも、やるかゲーム」
「いいわよ、2人の見てて私には到底無理って思ったし」
まあ、由乃はあまりゲームしないし、俺と優來のプレイは上級レベルすぎるからな。
「じゃあ、これならどうだ?腕もあるけど、操作覚えれば俺達くらいになら勝てると思うけど」
俺が取りだしたのは、泥ネコと同じ会社が作ってるレースゲーム。
これなら、一定の操作を覚えれば感覚でできるし、ほぼゲーム初心者の由乃も出来ることだろう。
「そう?それならやってみようかしら」
「じゃあ俺と交代な、ほれコントローラー」
俺と優來の後ろのソファーに座った由乃に、コントローラーを渡し座る位置を交換する。
「私、操作方法知らないんだけど」
「そうか、とりあえAを押したら前に進むから。優來も手加減してやれよ」
「手加減ってなに?」
こくりと首を傾げて、ハテナを浮かべる優來。
まあ、レースゲームはCPUも混じるから、手加減という手加減はできないかもだけど。
「まあ、やってればわかるから。やってみ」
「そう?とりあえずやってみるけど」
不安そうではあるけれど、画面を見てキャラ、カートカスタマイズを決める始める由乃。
「お、おう、全然ダメだな」
「しょうがないでしょ!初心者なんだから」
由乃の初レースの結果は、優來が1位で由乃が最下位とトップとドベを取る結果となった。
優來は定期的にやっていたからか、ダートに入ることなく圧倒的1位。由乃はAボタンしか教えていないのもあって、ミスしまくりのドベ。
「それに、あんたの説明が適当すぎんのよ」
「ごめんごめん。Aボタン以外も教えるから」
Aボタン以外の操作、ドリフトやアイテム使用などの加速アクションを由乃に教えた。
「えっと……ZLで」
コントローラーをくるくる回しながら、説明したボタンの配置を確認する由乃。
「わかんないんだけど。あんたら2人、ほんとにこの配置覚えてるの?」
「そりゃあ」
「やってれば、覚える……」
「あんたたちは……」
何故かボタン配置を覚えてるだけで、少し呆れられてるんだけど。
「私、わかんないんだけど」
「別にボタン配置覚えなくても、どこ押せば何があるか覚えるだけでいいと思うけど」
「そもそも、それがレース中だとでてこないの」
そうか、一定量ゲームしてれば、感覚的にできるけど初心者だと、体が覚えていないからスムーズに操作ができないのか。
「お兄が教えればいい」
「さっき教えたろ」
「指示、するか、体で覚えさせる」
「なんか、人聞き悪いな」
指示ってあれか、横から口出しする感じか。体で覚えさせるってゆうのは……そういうことか。
「よし、体で覚えさせよう」
「は!?」
やっぱ言葉が悪いのか、体で覚えさせると言うと、俺の方から一気に離れ体を守る形をとる由乃。
「意味が違うからな。その、俺が操作するからそれを覚えてもらうだけ」
「そういうことなら、最初から言いなさいよ」
由乃を元の位置に戻してから、俺も由乃と優來と同じ床の上に座った。
「で、か、から……無理やり覚えさせるって、具体的にどうすんのよ」
体という言い方は、まずいと思ったのか咳払いしてから言い直す由乃。
「いまから、やるから。ちゃんと覚えろよ」
由乃の後ろから手を回し、由乃の握るコントローラーを俺も握ろうとする。
「ちょっと待った」
「なんだよ」
「なんだよ、じゃなくて。何しようとしてんの」
「だから、体で覚えさせようと」
要は由乃のコントローラーを俺が操作して、簡単な操作を覚えてもらおうということだ。
「だからってなんで、バックハグ……なのよ」
そうか、良く考えれば俺のやろうとしてることは、バックハグになるのか。
「嫌だったらごめん。それじゃぁ普通に指示出しするか」
由乃にただゲーム覚えてもらおうと思って、バックハグしようとしたけど、由乃が無理なら横から指示出しになるか。
「い、いや嫌とは言ってないじゃない」
結局由乃は、やって欲しいのかやって欲しくないのかどっちなんだ。
「そうか、でもこの年で付き合ってるわけでもないのに、バックハグはまずいだろうし指示出しにするよ」
「い、いやだから私は別に……」
付き合ってもいないただの幼馴染の男女が、バックハグで仲良くゲームするのは変極めてるだろう。
「しょうがない、体の方が覚えやすいかも、と思ったけど指示にするか」
「だから!私は別にいいって!」
「お、おう」
さっきはキモがって引いてたと思ったら、今度はめちゃくちゃ乗り気な由乃。
「由乃ねえ、必死……」
「必死じゃない!」




