55 お昼にビンタはつきもの
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「お兄、戻った」
「戻ったか…確かにいい髪だな」
髪が乾かされた優來が、5歳ぐらいの子供っぽく、俺の元にやって来た。
髪を触ってみると、ふわっとしていて触り心地がとてもいい。
「由乃は、まだ乾かしてるのか」
そもそもとして、2人の髪はそこそこ長いから、乾かし終わるのは、もう少しかかりそうだ。
「終わったわよ」
「由乃、ちょっと髪触ってみてもいいか?」
「なによ、突然。ま、まあいいけど」
由乃から許可を貰って、由乃の髪を触ってみる。優來の髪とは違って、サラサラとしていてこちらも触り心地がいい。
由乃と優來で、髪質が違うのか気になったから、触ってみたみたけど、いやはや髪は奥が深い。
「ちょちょっと、そろそろ離してもらっていい」
「あ、ごめん」
ずっと髪を触っていたら、由乃から注意された。
「にしてもいい髪だな」
「そりゃ、そうでしょ。髪には気を使ってるからね」
「さすがJK」
やはりJKは、髪をのことをよく気にするんだな。フィクションじゃなかった。
「そんなことより、何か作ればいいんでしょ」
「はい、お願いします」
料理をお願いすると、由乃は俺の方にタオルを投げキッチンに立った。
「なんか使っちゃダメなのとかある?」
「多分特には。そもそも、使えるのそんなにないし」
「ほんとだなんも無い」
冷蔵庫の中身を見て、使えるものがないと言う由乃。
「まあ、この中身だと炒飯かな」
「それじゃあ、お願いします」
作るものが確定すると、早速調理に取り掛かり始めた由乃。
俺としては、由乃の料理事態が少し楽しみだし、とりあえず空腹で早く何かを食べたい。
というか、優來の身長のせいか無駄に子持ち新婚感…
「はい、できたわよ」
「ナイスー」
米や野菜を炒める音が消え、ようやく炒飯が完成したらしい。
「よそうの手伝うよ」
「ほんと?ありがとう」
「優來は、どんくらい食べられそうだ?」
優來はいつも夜や朝は食べていないのか、母さんが頭を悩ませてたし、量は聞いておかないと。
「わかんない」
「わかんないって、自分のことなのに。でも、前に由乃のカレー出した時は、全部食べてたよな」
いつぞやの勉強会の時、優來に渡したカレーは綺麗に完食されていた。
「てなると、大丈夫そうだなとりあえず普通ぐらい盛っとくぞ」
俺と優來、それぞれの皿に炒飯を盛り付け、食卓の方へ運ぶ。
「ほれ、持ってきたぞ。ちゃんと食べろよ、お前痩せすぎてあばら骨見えてたし」
「あばら骨…」
母さんが頭を悩ませるぐらい、優來は食事を取っていないのか、さっき見た時、あばら骨が綺麗に浮き上がっていた。
「わかった、頑張る」
「ほどほどにな」
頑張ると言って、優來は黙々と由乃の炒飯を食べ始めた。
「ねえ、優。ひとつ聞いていい?」
「俺に答えられればなんでも」
「優來ちゃんのあばら骨なんて、いつ見たの?」
「あ」
完全にミスったな、優來の健康を気遣ったつもりの言葉だったけど、普通に禁句レベルだった。
「あんたが嫌がってたってことは、最近見た訳じゃないし。それに、さっきお風呂のトビラ開いたわよね」
由乃が勘づき始めてきたみたいで、少し怒りの籠った声で詰め寄ってくる。
「いや、えっとですね……お2人の体は、とても綺麗でしたよ」
「この変態!」
またもや由乃から平手打ちが飛んできた。今度は、右のほっぺにクリーンヒットした。
俺が開けた訳じゃないのに。
「痛い…」
「見た方が悪いでしょ」
「酷くない!?」
噛む度に、少量の痛みがほっぺに襲ってくるから、米の咀嚼に時間がかかる。
「優來、由乃の料理美味しいか?」
「食べやすい」
「まあ、由乃の料理は美味しいからな」
「なんで、あんたが自慢げなのよ。でも、ありがと…」
今年になって由乃の料理は、何度か食べていて味の保証はされている。
俺の中じゃ、刈谷さん、石橋さん、由乃の料理が美味しいのは周知の事実だしな。
「ごちそうさま。ほんとに、今日はいろいろとありがとな」
「まあ、別に私もそこまで嫌なわけじゃないし」
ほんと、今日は何から何まで由乃に助けられてばかりだ。その分、ビンタも多かったけど。
「それにちゃっかり、優來も全部食べたみたいだし」
あまり食べないかと思っていた優來は、意外にも俺と同じ量をたいらげた。
「お兄と、由乃ねえは…付き合ってるの?」
「なっ」
先ほどからの会話を聞いていた優來から、変な質問が飛んできた。
「ち、違うにきまってるでしょ!」
「そんなに強く言わなくたって、実際そうだけど」
「そう、なんだ」
異様なまでに我が妹は、聞き分けがいいのか一言でいうことを信じてくれる。
「でも、将来俺に相手がいなかったら、結婚してくれるみたいだけどな」
「キープ…」
「それは言い方悪いから、やめようね」
今思ったけど、俺に相手がいなければ結婚してくれるっるて、由乃は今のところそういう予定ないんだな。
♦
「やっと終わった」
皿洗いに使ったスポンジを、定位置に置いて、手に着いた洗剤を洗い流す。
「お疲れ」
「由乃、暇じゃなかったのか?」
由乃は俺が皿を洗っている間、ソファーに腰掛けテレビを見るとかせずに、皿を洗う俺を見ていた。
「あんたがいつ失敗してもいいように、ニヤニヤしてたから」
「うわ、性格悪」
「それに、テレビ見るとね」
俺が疑問に思うと、顎で由乃の目の前を見ろと言う、サインが出されてみてみると、優來が静かに眠っている。
「お気遣いどうも」
「別にあんた見てても、楽しかったしね」
「そんなに、失敗してほしかったのか」
「それだけじゃないわよ」
それだけじゃないって、失敗を笑う以外に、見る理由があったのか。
「優來はこのまま寝かせておくか。今日は1時間ぐらいしか、寝てなかったみたいだし」
「あんたら兄妹、不健康過ぎない?」
まあ、父さんも勉強とかで、夜更かししてたみたいだし、ここまでくると遺伝だな。つまり、俺たちは悪くない。
「とりあえずは落ち着いたし、由乃は帰りたかったら帰っていいぞ」
風呂に昼食と、由乃を想定以上にここに拘束させちゃったし。
「まだ、残るわよ。優に聞きたいこともあるし」
「聞きたいこと?」
聞きたいことというと、由乃が今日の中で一番真剣な顔つきになる。
「ねえ、優來ちゃんってなんで、引きこもってたの?」
「その話か」
俺があまり触れなかった話題について、聞いてくる由乃。優來の前で聞かないのは、由乃が気遣ってくれたのだろう。
「まあ、今日のお礼も兼ねて話そうか。その前に長くなるかもだし、お茶でも」
なんとなくこれからの話が、長くなる予感がしたため一旦台所へ行き、紅茶を入れる。
「味はお好みでどうぞ」
食卓中央に砂糖と牛乳を置く。
「さて、話せるだけ話そうか。優來の引きこもってた理由を」
紅茶の中に砂糖を3杯、牛乳適量を入れてかき混ぜ甘い紅茶を口に入れた。




