50 ミスコンテスト
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「あー、美味しかった」
「それは何より、俺はコーヒー3つとオムライスで、吐きそう…」
コンセプトカフェを3つ回ることにした、俺たちは今最後のカフェ執事喫茶を出たとこだ。
「にしても、お前ほんとよく食べたな」
今までの店で食べたパフェは、ごく一般的な大きさのパフェをしていて、その割に由乃はケロッとしている。
「美味しかったし当然よねー。それとも何?また太るとかいいたいの?」
「何も言ってないだろ」
由乃の中で太るは禁句らしく、俺の前に握りこぶしをチラつかせている。
「というか、もうこんな時間。もうすぐミスコン始まるけど、見に行くか?」
由乃の拳を気にしないようにしつつ、スマホに目をやると時間はそろそろ文化祭の目玉、ミスコンの始まる時間を指していた。
「そうね、見に行きましょうか」
由乃からマップを借りて、ミスコンの会場へ向かうことになった。
ミスコン自体は初日から始まっているらしく、投票箱はそこかしこに置かれている。
今から始まるのは、最終投票の自己PRのようなものらしい。
「さすが私立、金あるな」
ミスコン会場に着くとそこには、大学顔負けのステージが設置されていた。
「結構本格的にやるのね」
「これくらいの規模感だと、相当人集まりそうだな」
「そう考えると、ラッキーね」
今俺たちの座っている席は、運よく一番前があいていたのもあって最前列。
「優はだれに投票するか決めてるの?」
「なんとなくな、でもこれで変わるかもしれん」
ミスコン参加者の大まかな情報は、投票箱のすぐ近くに掲載されていたため、それを読みなんとなくは決めていた。
「そういうお前は決めてるのか?」
「私は何とも、こういうのは自分の目で確認しないと」
「人材のスカウトじゃないんだから…」
そんな会話の中、ここの会場にミスコンの見物人がぞろぞろとやってきた。
「お、そろそろかもな」
時間的にもそうなのだが、ステージ上に司会進行をしそうな男が出てきた。
「皆さん!文化祭は楽しんで頂けましたか?」
司会の呼び掛けに、会場の人たちが声を上げる訳ではなく、首を縦に振って頷いている。
「そうですか、元気がないのは気になりますが、今から黒女伝統!ミスコンを開催致します!」
ミスコン開催の宣言に、さっきの反応とは打って変わって、会場全員が声を上げて喜ぶ。
「ちなみに司会はわたくし、外部から呼ばれた司会人、ゴルフボール佐竹がお送りします」
なぜ司会が男何かと、思ってたけど外部から呼ばれた人だったみたいだ。にしても、外部から司会呼ぶって、私立は金が余ってんのか?
「そんな、感じで始まったわけなんですが、皆さん投票はお済みでしょうか。済んでるという方は、ゆっくり見物を、まだの方は考えながら見ていただけると幸いです」
司会が諸注意を話している間、いろいろなとこから早く始めろとヤジが飛んでいる。
「それでは、ヤジも飛んできたとこなので、黒女伝統ミスコン開幕です!」
司会の熱い開幕の言葉で、会場全体から大きな拍手が送られる。
「それでは、まず最初の参加者の方です」
司会の言葉で、ステージの右側からミスコン用の衣装を着た、女子が出てきた。
出て来た女子は、司会の横につくと会場全体に手を振った。
司会からマイクを受け取り、彼女は名前、クラスなどの自己紹介を始めた。
「ところで、なぜこのミスコンに出ようと?」
自己紹介が終わると、質問としてミスコンへの参加理由が聞かれた。
「理由?そんなの決まってるじゃない、私がこの学校でどれくらい可愛いかを試すためよ」
「それはすごい自身ですね」
「当り前じゃない!」
確かに本人の自信通り、彼女はめちゃくちゃ可愛い。でも、その自信はどこで獲得したものなのかは気になる。
1人目の質疑応答が終わった後も、ミスコンは続く。ちなみに最初の質問である参加理由は、お試しや罰ゲームなどさまざまだった。
「さて、短いミスコンも次で最後の参加者になります」
「すっご…」
最後の1人がステージに上がると、今まで以上の歓声をたたき出した。
この人は、写真で見たときも思ったけれど、今回の参加者の中でも群を抜いて可愛い。
しかも、写真とは違い服を入れた全身なこともあって、その可愛さが際立つ。
「ほら、二月さんよ」
「がんばってー!」
どうやらこの人は、この学校では有名人なのか周囲にいる何人かの黒女生徒が反応している。
「お、」
会場全体を見渡した二月さんは、俺の方を見ると驚いたような顔をした後、なぜか手を振られた。
もしかしたら俺に向けたものじゃないかもだけど、一応振返しておこう。
「なに、あんたあの子と知り合いなの?」
「いや、まったく」
たぶんこの距離で舐め回すような強い視線を飛ばしてたから、暗に警告をだすために手を振ってきたんだろう。気を付けないと。
「会場のやる気が上がったとこで聞きます。なぜ、ミスコンに?」
「私はもともと、見物するつもりだったのですが、学友の方々に押されてしまいまして」
「つまりは、友人にすすめられてということですか?」
「そうなりますね」
さっきから思ってたけど、この人歩き方といい、手の振り方、しゃべり方がお嬢様みたいだな。
「では、次にアピールポイントはありますか?」
「アピールポイント、ですか…これと言ってないのですが、しいて言うなら昔からピアノに書道そのほかにも、いくつかお稽古をしていたことでしょうか」
しいてで出した割に、結構強いカード出てきたな。というか、さっきお嬢様みたいって言ったけど、完全にお嬢様じゃね。
「すごいですね。では、最後に一言ほどいただいても?」
「はい。私なんて、私以外の参加者様に比べて、劣るかもしれませんが、よければ投票のほどよろしくお願いいたします」
控えめな言葉を述べると、こっちに向けて礼をしてステージ左に進んでいった。
「これで全員の紹介が終わったので、再度登場…と行きたいとこですが、実は今日飛び入り参加した方がいるので、登場していただきましょう!」
突然のサプライズ飛び入り参加の言葉に、お祭りモードの会場は大いに盛り上がりを見せる。
「では!お願いします」
司会の言葉で、ファイナルラストの参加者が右側から顔を出す。
「えぇ…」
右側から出てきたのは、心底やる気のなさそうな超絶真顔の黒嶺さんだった。
しかし、黒嶺さんも二月さんに負けず劣らずの美人のためか、会場は大盛り上がりだ。
「いやー、まさか飛び入り参加とはチャレンジャーですね」
「そうですか、そんなのどうでもいいので早く終わらせてください」
「あ、はいわかりました…」
愛嬌を全く出さず、冷たい反応をする黒嶺さんに気まずそうな反応をする佐竹さん。
「まず、お名前の方を」
「1年Cの黒嶺です」
「フルネームでお願いしたいのですが…」
「それって意味ありますか?そんな個人情報をペラペラと言うなんて」
こういう場でも黒嶺さんの、喋り方や性格が変わることはないみたいだ。
「で、では最初の質問方を。なぜミスコンに参加を?」
「そんなの私が、知りたいとこです。勝手にエントリーされて、勝手に出されてるんですから」
こういうのに全く興味のない黒嶺さんだから、なんかあるとは思ってたけど、強制的に出されてたんだな。
そして、他の明るい出場者達の態度とは違い、黒嶺さんの冷めた態度に見物人の声は、全くと言っていいほど、聞こえてこない。
「え、えっとーそれでは、アピールポイントの方は?」
「そんなのないですよ、正直そういうのを本人が言うと、自慢にしかならないでしょうし」
「え、えっとー。それでは、この方を紹介できる方は…」
困り果てた司会が、黒嶺さんを紹介できる人がいないか、会場全体に呼びかける。
「そんな人いませんよ、私友達いないので」
「そ、そんなー…」
黒嶺さんの言葉を聞いて、もともと力の抜けてきていた司会の人の力がさらに抜ける。
「あ、すみません。間違えました、私を紹介できる人はそこにいましたね」
会場を見ていておもいついたみたいで、黒嶺さんは少し笑って俺の方を指さした。
「あ、ほんとですか!あなた、お願いしてもいいですか?」
「あ、はいわかりました…」
藁にもすがる思いで聞いてきた、佐竹さんのお願いを聞き入れると、俺の方にマイクが渡った。
「えっと、黒嶺さんのいいとこはですねー」
刈谷さんの時も思ったけど、俺はあまり身近な女子のことを知らないのかもしれないな。
今だって黒嶺さんのことについて、全然うまく出てこない。俺の命が危ないかもしれないのに。
「まず、頭が良くて、それに美人で…」
いつもの黒嶺さんを思い出して、そこからいい所を出してみる。それでも、表面的なわかりやすいのしか出てこない。
「なあ、由乃お前なんかないか?」
「は?私?」
何となくさっき以上の言葉が出る気がしないため、小声で由乃に話しかけ助けを求める。
「お願い!」
「しょうがないわね、そんなに出せないと思うけど、やってあげるわよ」
「あー、選手交代します」
マイクで全体に向け、選手交代を宣言して由乃にマイクを渡した。
「黒嶺ちゃんのいいとこよね。えっと、やっぱり美人のとこよね、いままでの参加者の人と比べても、一番って言ってもいいくらいの」
由乃から最初に出てきたものは、やはり美人。黒嶺さんといえば、一目でわかる美人という印象が強い。
「で次に、芯があるってとこなのかな。今だって、全く緊張しないで前に見た時まんまだし」
黒嶺さんの場合、芯があるというか勉強以外のことに興味ないから、こうなってる気がするけど。物は言いようだな。
「私もそんなに出せないから、次で最後なんだけど。いい匂いがするとこ。見た感じめちゃ綺麗な髪なのに、いい匂いとか最高でしょ」
由乃の言ったいい匂いに反応した男性陣達が、一気に喜びのような声を上げた。正直、由乃はいつの間に黒嶺さんの匂いを嗅いだのか、気になるけど。
「ありがとうございました。ということで、これでミスコン参加者全員の紹介終わりになります。最後に全員に、ここに並んでもらいましょうか」
由乃から、司会にマイクが戻った。司会の進行で、ステージ上にミスコン参加者が一列に並ぶ。
「なにか、言いたいことがあればマイクを渡しますが」
こう見ると、黒嶺さんは飛び入りのため、制服でそれ以外はしっかりとした服を着ている。それでも、黒嶺さんはぜんぜん負けてる感はない。
「やっぱみんな可愛いわね。私顔に関しては、少しくらい自信あったんだけど、こういうの見ると自信がくじかれた感じすごいよ…」
「そうか?そんなに落ち込むほどじゃないと思うけどな。もし、由乃がこのミスコンに出ても、全然戦えると思うけど」
「ちょ、ちょっと、顔近いって」
普通に言って、由乃も可愛いから、ミスコンにでても3位とかは全然取れると思う。
「あの、すみませんそこのお二方、最前列でイチャイチャするのやめてもらっていいですか」
「「あ、はいすみません」」
わざわざ、最後の一言を使って俺と由乃を注意する黒嶺さん。
全体に聞こえるマイクで言われたから、すごい恥ずかしいし。
「え、えまあ、これで終わり…かな?とりあえず、結果発表まで残り2時間となってるので、投票をお忘れなく」
黒嶺さんの予想外の行動に、司会の人は完全にペースが崩されている。
「優は誰に投票する?」
「一応、二月さんと黒嶺さんのどっちかなんだけど、なかなか決まらないって感じ」
二月さんと黒嶺さんは、顔面偏差値でいえば同じくらいだし、二月さんの話を聞く感じスペックも同じくらいな気がして、なかなか決まらない。
「そういう由乃は決めたのか?」
「そりゃ、黒嶺ちゃんでしょ。私が紹介したんだし」
「そうか…」
でも、単純に考えて3日分の投票時間のあった、元の参加者に比べて飛び入り参加の黒嶺さんって、結構不利な状況だよな。
どれだけ行っても、4、5位が精一杯何がするんだけど。
「よし、きめた俺は…」
♦
「それでは、黒女伝統ミスコン結果発表と行きましょう!」
自己PRから2時間、ついにミスコンの結果発表が始まった。
「いやーついに来ましたね、結構面白いことになってるので乞うご期待を」
そう話す司会の後ろには、ミスコン参加者が全員立って結果発表を少し緊張した面持ちで待っている。
もちろん黒嶺さんは、興味が無さそうだ。
「では、ゆっくり発表でもしていきましょうか」
結果発表は特段工夫はなく、単純に下からゆっくり発表していく形式だ。
「さあ!次は、残りはこの3人誰が1位になるのか」
司会の人の声に熱がこもり始めた。
驚いたことに、次が3位の発表というのに、超絶不利な黒嶺さんが残っている。
残りの3人は、黒嶺さん、二月さん、赤髪の自信満々少女の3人。
「では、第3位!」
どこからか出てきた、スッポットライトが残った3人の周りをぐるぐる回る。
「この子だ!」
3位として、スポットライトが当たったのは、赤髪の少女。
「残念でしたねー。でも、いい結果ですよ」
「悔しいけど、もっとこの美貌を磨けるよう頑張ります!」
熱い決意を固めて、1歩引いていく赤髪少女。
残りは、まさかのダークホース黒嶺さんと二月さんだ。
「どんどんいきましょう!続いて、第2位!」
さっきよりも長いドラムロールで、会場全体の期待を盛り上げていく。
「第2位は、この子だーー!」
ドラムロールの最後にシンバルの音がなり、スポットライトが二月さんに向けられる。
「黒嶺さん勝っちゃったよ…」
俺が出てる訳でもないし、まじで関係ないはずなんだけど。何故だかこの結果は不服だ。
「ほんとに、まさかまさかな結果でしたね。現在の心境をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「そうですね、黒嶺さんは勉学において、学年1位方ですし、それにとても美しいですから、ある意味これは黒嶺さんの努力の結果であって、妥当なのかなと。私が、ここまで来れたこと自体が、まぐれみたいなものなのですし」
二月さんは、この結果に全く不服そうでもなく、ただ純粋に黒嶺さんを祝福している。
こう見ると、二月さんは本当におしとやかなお嬢様って感じだ。
「実は私は、二月さんに投票していたので、私としては少し悔しいとこかと」
「それは、どうもありがとうございます」
二月さんは、またこっち側に向けて綺麗なお辞儀をしてから1歩後ろへ下がっていった。
「では、最後に1位の黒嶺さんにお話を聞きましょうか。まさかのダークホースで勝利、今の心境を聞いてもいいでしょうか」
「早く帰りたいので、今すぐ賞状なりトロフィーなりを渡して欲しいのですけど」
「あ、はい」
黒嶺さんにとって、ミスコンは茶番みたいな扱いなのか、この勝率の低い勝負に勝ったというのに、全く嬉しそうでは無い。
「黒嶺さんおめでとう」
黒嶺さんの言葉で、直ぐにトロフィー、ティアラの授与が行われ全くの余韻を味わう時間なく、ミスコンは終わった。
今は、ステージの裏に回ってミスコン終わりの黒嶺さんにおめでとうを言いに来た。
「ありがとうございます。ちなみに、梶谷さんは誰に投票を?」
「実は二月さんに入れたんだけど、まさか黒嶺さんが勝つとは」
「は?」
「いえ、ごめんなさい冗談です。本当は黒嶺さんに入れてます。ほんと、ほんとだから!包丁を出さないで!」
結構まじな顔で、セーラー服の内側から包丁を取り出している黒嶺さん。
ちなみに本当に俺は、黒嶺さんに入れている。
いつも、勉強面でお世話になってるし、俺が黒嶺さんが1位とった時と顔が気になったからというのもある。
まあ、結果は平常運転だったんだけど。
「でも、ほんとに黒嶺ちゃんすごいね。私が紹介したおかげかもね」
「でも、黒嶺さんお前のこと忘れてたぞ」
「嘘!?」
黒嶺さんの勝因の1部には、由乃のあの紹介も入ってはいるかも。黒嶺さんの匂いがいいというのを聞いて、会場が大盛り上がりしてたし。
あとは、黒嶺さんのSっ気ぽいとこを見て入れた人はいたかもしれないな。
「文化祭も終わっちゃったし、私たちは帰ろうか」
「そうだな、いいものも見れたし」
「それなら、私も帰りましょうか」
「いいの?後夜祭とかあるんじゃないの?」
普通文化祭の後は、生徒だけの後夜祭があるはずだけどここはないのかな。
「ありますけど、どうせバレませんし。どうせ、見たいものもないですから」
「全くブレないね」
黒嶺さんの興味は、勉学からズレたりすることはないのだろうか。
「まあ、黒嶺さんがいいならいいけど。じゃあ帰ろうか、荷物とかない?」
「そうですね、教室にバックを置いてきてるので、それを取ってきてからですね」
「じゃあ、取ってきなよ。トロフィー持っとくから」
「ありがとうございます。それと、梶谷さん投票ありがとうございました」
黒嶺さんにしては珍しく、俺の方を見ると投票に関してお礼を言ってくれた。周囲が暗くて、よく見えなかったけどさっきの黒嶺さんは、心からの笑顔だった気がする。
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