更に報告
「取り敢えず、数ヶ月ほどお試しで一緒に働いてみるって」
谷敷さんのメッセージに『頑張ってね〜』と手を振っている猫のスタンプを押しながら、碧に報告した。
一応碧にも相談したから、どうなるか興味があるみたいだからね。
「上手くいくといいねぇ。
旧家の人って家の古さで全ての人をランク付けする人がそれなりに多いから、一般家庭出身は一般家庭出身と組む方が多分気楽だと思うんだよね」
碧が頷きながら応じる。
「ちなみに碧とか他の藤山家関係の人って旧家扱いなの、それとも一般家庭?」
碧の親戚から見下されたと感じたことは無いが、歴史は戦国時代より前まで遡れるんだから、十分古いよね。
「あ〜。
ウチは神社系だから陰陽師系とはちょっと違うんだけど、歴史だけはあるから旧家の亜種的な扱いかな?
ある意味、鎌倉の旧家とかと似た様な扱いかも」
碧が苦笑しながら言った。
え〜?
鎌倉の旧家って下手したら戦国時代より前の人たちじゃないの??
「旧家って平安時代まで家系図を遡れないと亜種扱いなの?!」
「応仁の乱から明治維新ぐらいまで、京都はそれなりに貧しかったり混乱していたり廃れていたりしたから、家系図なんて家が燃え尽きた後に適当に祖父母が言っていた自慢話からでっち上げた希望的観測を多く含む妄想の産物な家が多いって話なんだよね〜。
それでも基本的に京都の退魔師の家系は自分たちを正当なる旧家だと思っていて、他は全部見下してるのよ。
ただ、見下しの度合いが台頭したのが鎌倉時代か、戦国時代か、江戸時代か、明治維新後かで多少なりとも違うだけで」
実際には一般家庭出身と言っても、ウチみたいに曽祖母が旧家の血を引いているとか、蓮君みたいに父親が旧家から勘当されたとか、実際に血を遡ってみたらどこかで旧家の家にも繋がっていそうだよね。
過去の先祖に一人も術師が居なかった人なんてあまり居ないだろうし、まずそれの確認が難しいだろう。
だからこそ、そう言うのを証明できない人は雑種扱いなのかな?
「退魔師なんて能力が一番重要じゃん?
旧家か否かなんてどうでも良いだろうに」
旧家の普通の術師より、特級術師である私の方がランクは上な筈だよね?
だけど実際には見下されて、『雑種だけど特別家に入れてやっても良い』ぐらいな扱いな気がする。
「旧家だと色々と先祖代々の知識や式神や符が残っている事で、一般家庭出身の術師よりも知識が多くて術師として有能な場合が多いって言うのが、旧家の連中の言い分だね。
本人の才能や学ぶ意欲とかも重要だけど、そっちは本人次第だから、最初からスタートラインが違う過去の蓄積を誇って他を見下している感じ」
う〜ん。
私なんて、バリバリに魔法文明だった前世の知識がある。だから普通には読めもしない昔の文字で書き連ねられてきた古い記録が残っている旧家になんぞ負けないと思うし、旧家の人たちだってあの複雑怪奇な古文を読める人は少ないんじゃないかねぇ?
もしくは、読める様に勉強しているなら退魔の術を勉強する時間がその分削られて、技術が伸びなそう。
まあ、良いんだけどさ。
確かに使える符の種類が多いとか、先祖代々引き継いできた式神がいるとかなら、一般家庭出身の術師よりも対応力は高そうだし。
その後も旧家の蔵探しであるあるな笑い話を碧から聞いていたら、メッセージアプリから着信音がした。
お。
今度は蓮君だ。
紹介したから結果一応報告ってやつかな?
律儀だね〜。
『取り敢えず、暫く試してみる事になった。
なんか谷敷さんは妹と凄く気があってたから、将来的にエリが退魔師になったら俺を捨てて二人で組むかも?』
おやま。これ、エリって妹のことだよね。
「妹さん、どこかに弟子入りするの?」
メッセージアプリで尋ねる。
相棒的なパートナーですら碌なのに紹介して貰えないのに、師匠に紹介なんて退魔協会に頼んだら更にリスクが高そうだけど。
まだ若い蓮君に教えられるのか不安だが、ベテランなおっさんへの弟子入りも中々危険に満ちてそう。
『そこら辺も要検討で、ちょくちょく話し合っているところ。
今度ちょっと、話を聞かせて貰えないかな?』
ありゃりゃ〜?
思っていたより早くご相談が来てしまった。
「碧、蓮君が妹の弟子入りのことで相談したいって言ってきてるんだけど、付き合ってくれる?」
私じゃあ弟子関係に関することは何も言えないからねぇ。
「良いよ〜」
ソファから碧が答えた。
「碧も参加できるって言うから、彼女がいる方がより色々と答えられるかも。
本人も含めて、4人で良いかな?」
メッセージを書いて送っておく。
相談事って事前通告なしに突然人が一人増えると波が立つからねぇ。
取り敢えず、予定を聞く前にそっちにオッケーを貰わないと。




