準備完了 51
アムリテは十匹のハタアラシを狩ったころに、目の前を走る抜けていくリーナを発見した。
「何やってんの…?」
アムリテの声はリーナに届かず、アムリテの視界からリーナは消えて行った。
「あいつも必死なんだろうし、あたしも早く討伐クエストに行けるようにしないと」
アムリテは尾根であるシオンから貰った杖を光らせ、隣にある川から水を自分の周りに浮遊させる。
「浮かせれる水は増えてきたけど、形状変化が問題ね…」
アムリテは水球と水矢を作り出す。そして、水矢をハタアラシに放つ。ハタアラシが飛びつのを許すことなく、体を貫いた。
アムリテはハタアラシが地面に落ちる前に水球でキャッチする。すると、次第に水球が赤く染まる。赤く濁った水球がアムリテの正面まで来ると、アムリテは水球の下に手を出す。すると、処理が終わったハタアラシがアムリテの手に収まった。
「ま、形状変化なんてアイデアの問題だしね。剣とか作っても体力ないし…」
アムリテはハタアラシをカバンの中に入れると、水球と水矢を川に流し新たな水で再び二点を作り出した。
「……あたしも走りこもうかしら」
その後もアムリテは次々とハタアラシを狩っては処理を続けた。
アムリテに発見されたのに気づかないでいたリーナは、一時間もしないうちに成果を感じていた。
「鳥を見ながら走っても、止まらないでよくなったなぁ」
リーナはその場に立ち止まり、リュックから矢を取り出す。そして、もう一度走り出した。
「うん。さっきと比べたら全然走りやすい!」
前方の木に止まっているハタアラシに照準を合わせる。木の根っこが足元に広がっているが、しっかりと転倒を回避する。
十分に射程距離に入れると、矢を放つ。矢はハタアラシが飛び立つ瞬間に羽に当たり、ハタアラシは墜落した。
「この調子で…!」
リーナはハタアラシをリュックにしまうと再び走り出し、ハタアラシに向かって次々と矢を放った。
三十本ほど撃った矢は、十三匹のハタアラシを狩った。
日が沈み始め、周囲が暗くなったところでアムリテは雑木林の入り口に戻った。リーナと待ち合わせをしたわけでないが、先に帰るとは思えないので、アムリテは待つことにした。
「まだ走ってんのかかしら。……腕立てでもしてよ」
アムリテは杖を置き、地面に腕とお腹をついて腕立ての態勢をする。腕に力を籠め、腰を浮かそうとする。
「いっち…!」
一回腕立てをしただけで、腕から力が抜けてお腹を地面に打ってしまう。
「……やっぱ魔法使いは魔法だけでいいわね」
「あ、アムリテー!」
アムリテが体力づくりを諦めると、雑木林の中からリーナの声がした。
「待っててくれたんだね!泥が付いてるけど、寝てたの?」
「うるさいわよ!どうせ、あたしは魔法だけよ!」
アムリテは自分でも理不尽だと分かりながら、リーナに怒鳴ると服の汚れを払う。
「それより、明日はもう決闘だけど何か掴めたの?走り回ってたみたいだけど」
「見てたの!?」
見てたと言うよりは見せられたの方が正しいと、アムリテは思った。
「何かは掴めたと思う。きっと、アッシュさんにも勝てる自信はついたよ」
「そう。なら、早く帰って換金して寝ましょう。夕飯を豪華にするのは明日よ!」
「うん!応援しててね!」
こうしてリーナはニョルデゴートに、アッシュに挑む用意を済ませた。




