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ミキタビ始めました!  作者: feel
2章 旅に出ます!
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お願い 36

 リーナは朝になって目を覚ますと、宿の食堂に朝ごはんを食べに行った。すると、そこにはクラムの姿があり、手を振っていた。


「おはようございます。リーナさん」

「おはようございます。昨日はとても楽しかったです!」


クラムのお皿を見ると、運ばれてきたばかりなのか一口も手を付けられていなかった。リーナは食堂の人に声を掛け、朝ごはんを注文する。


「リーナさんは、もうこの村を発たれますか?」

「そうですね。急ぐ用事もありませんけど」


リーナの目的は旅をすること。メルモに行かなければならないわけではない。


「なら、少しお願いを聞いてくれませんか?」

「いいですよ!どんな事でしょう?」


クラムにはいい音楽を聞かせてもらった恩がある。簡単な手伝いでいいなら、大歓迎だ。


「実は昨日の晩、食事処の主人に倉庫から氷を出してほしいと頼まれまして…。しかし、僕は力に自信がある方ではなく…」


クラムの華奢な体を見れば、力が弱いことなど一目瞭然だった。そんなクラムにお願いをした主人に多少の不信感を抱くも


「わかりました!朝ごはんの後で大丈夫ですか?」

「はい、ありがとうございます!お礼は出しますので!」


クラムは懐から小さい袋を取り出し、お金を取り出そうとする。


「いらないですよ!これは、音楽へのお礼と思ってください」


リーナは慌てて制止し、にっこりと笑う。その様子を見ると、クラムは袋をしまった。


「では、食べ終わったら食事処に向かいますね」

「はい、お願いします!」



 リーナが朝ごはんを食べ終え、昨晩の食事処に着くとクラムが店の前で待っていた。


「お待たせしました!主人さんは…?」


「裏で待ってますよ!手伝ってくれた後にはお昼ご飯をサービスしてくれるそうです!」


リーナはクラムに案内されて店の裏に行くと、昨日の主人が待っていた。


「クラム君、このお嬢ちゃんが運んでくれるのかい?」


主人は心底驚いたようにリーナを見つめる。確かに、身長はクラムよりも低いがリーナはクラムよりも力があると思っている。


「大丈夫ですよ、主人。リーナさんは、こう見えてすごい力持ちなんですよ」

「なら、いいけど…。こっちだ、着いてきてくれ」


リーナとクラムは主人の後をついて行くと、倉庫というよりも蔵と言った方が想像のしやすい建物があった。主人がその扉を開くと、中からひんやりとした空気が漏れだした。


「こいつを五つくらい店の中に運んでくれ」


そう言われ、倉庫の中を見るとリーナの身長よりも少し大きい氷が大量に置かれていた。


「うわぁ…。これ、いけるかなぁ?」


リーナは箱か何かに入っている氷を想定していた。しかし、目の前の氷は裸のまま置かれていて、素手で持つと凍傷を起こしそうだった。


「お嬢ちゃん、よかったらこれ使ってくれ」


そう言って、店主が投げてきたのは使い古された軍手だった。ないよりはマシだと思い、軍手をはめる。氷に近づくとさらにその大きさが伝わる。


「とりあえず、ふん!」


腕で氷を囲むように回し、腰に力を籠める。


「やっぱ、むりぃ!」


精一杯の力で持ちあげようとするが、氷は一切動く気配を見せない。おまけに、軍手でも手が冷えてしまい何度も挑戦できるようなものでもない。


「クラムさん、これは無理ですよ…」

「もう一度だけ挑戦してみてください。今度は僕も手伝いますから」


リーナは半ばあきらめ気味に、もう一度氷に手を回す。手伝うと言ったクラムは反対側から持ちあげるのかと思っていたら、手に持った楽器で音楽を奏で始めた。


「ほら、リーナさん。頑張ってください!」


応援するくらいなら、直接手伝ってほしいと思いながらも、リーナは一人で氷に力を入れる。すると、先ほどは一切動かなかった氷が浮き上がった。


「え、え!?」

「お、お嬢ちゃん!?」


リーナと店の主人はその光景に驚きの声を上げた。


「一体全体でどういうことだ!?」


リーナ本人も戸惑っている状態で、説明どころではない。


「リーナさん、早く店に運びましょう!」


クラムに背を押され、店の中に氷と一緒に移動する。その最中も手から落ちるような不安は一切なかった。


「ご主人さん、ここでいいんですか?」


厨房の手前に広いスペースがあり、そこに氷を置こうとする。


「あぁ!ありがとう!残りもお願いできるかい?」

「わかりました!」


重さも冷たさも全く感じなかったので、これなら何個でも運べると一個ずつ運び、気付いた時には既に五個の氷を運び終えていた。


「ありがとね!お昼まではもう少しだから、また食べに来てくれ!」


そうして、リーナとクラムは店を後にした。



「クラムさん、あれってクラムさんの魔法?ですよね?」


クラムが演奏する前はびくともせず、冷たさも確かにあった。しかし、クラムが演奏してから運べるよう

になったのだ。クラムの演奏には応援以外の何かがあるとみて間違いないだろう。


「ただ単純にリーナさんが、頑張ったからかもしれませんよ?」


クラムはおどけたようにカラランと楽器を鳴らした。


「ごまかさなくても…。でも、クラムさんのおかげでなんとかなりました!ありがとうございます!」

「ふふふ、僕からのお願いなのにお礼をされてしまいましたね」


その後二人はお昼まで、街の本屋で暇を潰した。

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