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ミキタビ始めました!  作者: feel
4章 決闘の街
289/293

思い出の修復 289


「守れなくて、ごめんなさい……。私がもっと……。……ごめんなさい。オーナー、リーナさん、アムリテさん……。ごめんなさい」


 ヒイロは涙を流し、声を震わせながら真っ暗な闇の中で謝罪の言葉を口にしている。魔族によって作られた偽りの記憶が、ヒイロの心を破壊し続けているのだ。


「……私が、私が、……何も、できない」


「そんなことないよ。ヒイロは私を助けてくれた。初めて会った時もリュックを取り返してくれた。決闘場で弱かった私に戦い方を教えてくれたでしょ?」


 リーナはヒイロの自虐を思い出で否定する。だが、ヒイロの震えは止まらない。


「ごめんな、さい。ごめんなさい。私がいなきゃ、皆さん死ぬことなんて──」


 ──ヒイロがその言葉を口にした瞬間、リーナは見えない闇の中で正確にヒイロの頬を叩いた。衝撃音が周囲に広がり、反響して消えて行く。


「ヒイロ。自分が死ねばいいなんて思ってないよね?自分がいなくなれば、皆が助かるなんて。そんなの許さないからね。ほら、早く立つ!」


 リーナは背中を丸めて縮こまっているヒイロの脇に両腕を通し、無理矢理に立たせた。ヒイロは足を延ばした後、後方に倒れようとするが、リーナはその肩を掴み支えた。


「私はヒイロの昔の事は知らない。だけど、街の人達の笑顔を見てると、ヒイロが今までどんな風にしてきたのかは分かる。それは、ヒイロが誰かの助けになったって事じゃないの?」


「でも、結局は、皆さん、死んで…………。私がいなければ、魔族も来なかった……」


「何時死んだの!?昨日!?今日!?じゃあなんで、私は今ヒイロと喋ってるの!?誰も死んでなんかない!ヒイロが全員を助けたの!」


「………………」


 ヒイロは俯き、口を閉じた。それは会話を拒否するという意志表示。会話が成立しなければ、ここで言葉を発しているリーナはヒイロの中で幻想となる。


「ふざけないで!」


 リーナはヒイロの自分を見ようとしない様子に怒りを感じ、足を鳴らした。すると、ただの闇だった足場に小さな光を放つ欠片が生まれた。


 リーナはその欠片を手に取り、光の中に視線を送った。


 そこには、ヒイロの目の前で魔族によって惨殺されるオーナー達、決闘場のメンバーが映っていた。


「これは、ヒイロの記憶……?」


 光の中ではヒイロ以外の人間が殺害されると、再び魔族が現れる寸前まで巻き戻っていた。


「ヒイロ、シャンシャンと遊びに行ったの覚えてる?シャンシャンが私達の服を選んでくれるって言って、アムリテと四人で買いに行ったこと。ヒイロも新しい服買ってたよね?」


 ヒイロがリーナの言葉に反応することは無い。だが、リーナはある自信を持って言葉をつづけた。


「この記憶に映ってるシャンシャンって結構前だよね?雰囲気も違うけど、背が少し低い。この時に死んだなら、どうして私達と買い物に行けたのかな?」


「…………!」


 リーナは自身とヒイロが共有する記憶を言い、手にしているヒイロの記憶で起こっている事件の矛盾を指摘した。


 その矛盾を耳に入れないようにとヒイロは耳を塞ぐが、その行動がリーナの自信を確信に変えた。


「ロミオさんとジュリエットさんが指輪してないってことは、結婚はもう少し後なのかな?私達と会った時にはもうしてたもんね。オーナーさんも少し若いのかな?はは、ちょっと失礼になっちゃった」


 リーナは笑いながら、次々とヒイロの記憶に存在する矛盾点を指摘していく。


「ヒイロもおかしいなって思ってるんでしょ?この先もヒイロの記憶では、何回もオーナーさんやシャンシャン、私達が殺されていくんじゃないの?」


 手で覆われているヒイロの耳にリーナの言葉が入り込んでいく。


 リーナが言葉を終えると、真っ暗だった闇から光を放つ大小さまざまな光が記憶の欠片が現れた。


「そうだよね。ヒイロもこんな記憶、嫌だよね。絶対に元通りにしてあげるからね!」


 リーナはなるべく大きな欠片を掴み上げ、その記憶に生じる矛盾点を指摘し続けて行く。そのたびにヒイロの記憶が現れ、現れた記憶は徐々に重要度、ヒイロが大切に想う人たちとの出会いや思い出を映していった。


 そして、リーナとアムリテとの出会い、オーナーとの出会いをリーナが解くと、赤く光る丸い球体に刺さった長剣が闇の中から現れた。



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