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ヒロイン発見!

私は、鬱屈な気分で学園行の馬車に揺られていた。その理由は、ヒロインとの対面でも、初めての学園生活でもない。夏休みの宿題が終わっていないのだ。一晩徹夜でしたのに半分しか終わらなかった。


「ねぇジジ、何で終わらなかったんだろ」


「知らないよ、サラ様が忘れてたのが悪いんじゃないか」


そうやって、愚痴を言ってる内に学園に到着していた。馬車を降りると周りから私に不思議なものを見るような視線が向けられる。私は、その視線に思わず後ずさりしてしまう。


「サラ様、貴女この学園で何したんだい」


そう言われても思い当たる節がない。その後も、行く先々で見られながら教室に到着する。今日の授業は、学期はじめのテストだけなんだけど、そのテストもエルナさんの講義を受けた私からすれば簡単な内容だったのですぐに終わり、放課後になった。私は、ジジと合流して学校を出て屋敷に帰る。


「ねぇ、ジジ私の事で分かったことはある?」


「はい、ご報告しますとサラ様の良い噂がないね。それに、一学期の途中には不登校になると、これは見られてもしょうがないよ」


そう言われてみればと、納得する。設定上サラは、引きこもりで屋敷から出てくること自体が珍しかったのかもしれない。


「まぁ、私への視線の原因は分かったけん。もう一個の方は?」


「あなたが探しているアンという女学生は貴女と同じ時期から不登校になったそうです。あとこの学園の他の生徒に脅されているみたいで、今日も登校していないね」


「えっ...不登校?」


私は、愕然とした。まさか、新学期でヒロインに一目見ておこうと思ってたのに、会えないのではどうしようもない。


「まぁ、会えないんならしょうがない。今日は、引き揚げよう」


私は、ジジと帰路につく。だけだったのだが、帰り道。それを見てしまった。


「ジジ、あれってアンだよね」


「そうだね、サラ様が調査を依頼したアンという女学生だね」


そう、見つけてしまったのだ。ヒロインが、街の裏路地で脅されている姿を。

でも、今日は何の用意をしていない。今日のところは退散して...


「ごめん、ジジ今から言うものをすぐ買ってきて」






王都のとある街の裏路地、そこで私は自分に降りかかる暴力をひたすら耐えていた。自分の目の前には、この国の第二王子、アロルド。その婚約者のアリアーヌ。その取り巻き達が罵倒や暴力を振るう。王国警察長官を父に持つ私はこの人たちのいうことを聞いてないと尊敬するお父さんをクビにすると脅されている。これからも、ひどい目にあわされるんだ。そう思った時だった。


「君たち、そこで何をしてるんだ」


遠くから王国警備隊の隊員がこっちに駆けつけてくるのが見える。アロルド達は、慌ててその場から逃げ出していく。私は、警官にお礼を言おうとしたんだけど、そこである違和感に気が付いた。この通りは、警備隊の管轄外。こんなところを巡回していることは明らかに不自然、そこまで考えた所で目の前まで警官が近づく。


「大丈夫ですか、僕に付いて来てください。安全な場所で手当てをしましょう。」


「ありがとう警官さん」


「こちらで手当てをしましょう。アン様」


私は、この言葉を聞いて少し眉をしかめる。そして、一つの質問を聞いてみることにした。


「ところで、貴方の隊員番号は何番ですか?」


「えっ。ば、番号!?...568番であります!」


それを聞いた私は、感じていた違和感が確信へと変わった。そもそも、隊員番号なんてものは初めから無い。私は、その隊員の手を取り組み付く。偽の隊員は、驚いた顔をしている。


「残念だったわね、隊員番号なんてないわよ。引っかかってくれてありがとう、警備隊に代わって私があなたを逮捕します!」


ジジに頼んで男装の用意と王国警備隊員の服を着た私は、アンを助けるために路地裏に乗り込んだのだけど、アンは、予想に反して私の偽装を見破って捕まえた。

私は、とんでもない勘違いをしていたのかもしれない。脅されているヒロインは力の無い、小心者だろうと思い込んでいた。だけど、このヒロインは違った。冷静で強い正義感を持っていた。不登校って聞いた時にはどうしようかと悩んでいたけど、そんな心配はいらなかったみたい。そんな考え事をしている間にもアンの拘束が強まってきているのに気付く。だけど、やっぱり拘束は甘い。


(見た目は完璧だけど、どうやら実践で試したことがないようね。まだまだ、甘いわ!)


簡単に拘束を振りほどいて、逆にアンを拘束する。


「なっ!しまった」


しかし、ここにきて困ったことが起きてしまった。


(どうしよう、勢いで拘束し返してしまったけど、此処からどうするかなんて考えてなかった...)


困惑していた私なんだけどアンの変化に気付いた。


「う、うぅぅぅ。こんな奴に...」


泣いていた...それも大泣き。

私は、ジジなら何とかしてくれかもと思って近くで隠れているジジにアイコンタクトを送った。


(ジジごめん、助けてください...)


少し離れたところでその様子を見ていたジジは、こんなことになるなと思っていたのであらかじめ顔を布でぐるぐる巻きにして体をローブで覆い隠した姿に着替えて待機していた。


(さてと、しりぬぐいに行きますか!)


「そこまでだ!」


「き、貴様は!」


私は、ジジのアドリブを理解して演技を続ける。アンの方は、突然の乱入者に困惑している様子だ。ジジは、乱入した勢いそのままに私の顔をを蹴り飛ばした。私は、鼻を抑えつつ建物の陰に隠れて後の様子をうかがう。


「大丈夫だったかい」


アンは、出されてあ手を取りゆっくりと起き上がる。


「ありがとう、貴女のおかげで助かりました。あの、お名前をお聞きしても?」


「僕はは名乗るほどの者じゃないよ。それより、もう暗いさっさとおうちに帰りなよ。気をつけね」


「あっ」


そう言って、引き留めようとするアンをほってジジはアンのもとから姿を消した。アンも少しの間その場に立ち尽くしていたけど、何かを決意した顔で帰路についた。



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