NG集
──レディ、アクション。
ボーイはタツを挟み撃ちにした。
顔めがけて殴りかかる一人目。タツは左手でその腕を掴むとそのまま上腕部に右手の平で関節とは逆の方向に打撃を与えた。もう一人が背後から蹴りを入れようとすると、タツは掴んでいた相手の身体を盾にして防ごうとしたが手を滑らせ、股間を蹴られた。
七階を示すパネルが点灯。青い絨毯が敷かれた広い廊下を行き七○ 二号室へ。
エリカが呼び鈴を押すと、スーツ姿の痩せたダンディな男性が出てきた。
「チンさんおはようございます」
彼女が挨拶すると、李と呼ばれるハズだった男は固まった。
「いつ役が変わったんだね」
タツの目の前で抱き合う親子。
「あのー、李さん。俺はいつ帰れますか」
「帰ることの心配はしなくて良い、君とのベッドも用意してある。……あれ」
慌てる彼に明蘭が思わず失笑した。
ダリアはゆっくりとタツに歩いて寄ってきた。
「ダリア、よせ……」
「問答無用だ」
次の瞬間ダリアは飛び上がり、全身のバネを捻らせて脚を振り回してきた。
タツはとっさに腕で防いだが、脚は当たることなくダリアは転んだ。
明蘭はニコニコしながら細かく切ったフォアグラを口に運んだ。
「なぁ、たまに忘れるけどフォアグラは中華出身だよな」
ナイフとフォークをぎこちなく使いながら、タツが明蘭を見つめると彼女はフォアグラを吹き出した。
「俺らの参加は今日限りだ」
皇子服の男は叫びながらサーブルを抜き、タツに振りかざしてきた。
「イヤ……」
明蘭の悲鳴を発端に、会場がパニックに陥る……が、サーブルは男の手からすっぽ抜けていった。
タツはバック転からの後転で下がり、和装の男が落とした刀を拾って降り注ぐサーブルをふさいだ。金属同士ぶつかる音が何度も鳴り響く。
「む……」
タツが少し間を取った時だ。男が長いチェーンを踏んでいた。タツはそれが自分側まで伸びていることに気がつき、拾い上げて思い切り引っ張ったがそのままちぎれてしまった。
「……太ったかい」
「うるせぇ」
エリカは血走った目でタツを睨んだ。その顔にダリアも思わず後ずさる。
「今度は逃がさない……」
エリカは一枚の紙切れを投げ捨てた。タツがお茶会の会場に残していったメモだ。
「死んでやる」
その台詞に全員固まった。エリカは顔を赤くして車に隠れた。
頬を染める明蘭を見て、タツは微笑む。
「……よし、今から荷造りするぜ」
「タツ君……謝謝」
明蘭が声を上げてタツの胸に飛び込むと、彼は何かに躓いて明蘭ごと倒れてしまった。
「痛え……」
「カットだ、カット」
李も師匠もやれやれとため息した。
「ごめん、痛かったでしょ」
「意外と重いんだよな……」
次の瞬間、明蘭の顔が鬼となりタツは顔をひっぱたかれた。
──終劇──




