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こき使われるぜ

 七○二号室。

 自室のテーブルで紅茶を嗜む明蘭。タツはその横で、買ったお洋服をせっせと広いクローゼットにかけていた。

「いい気なもんだぜチクショウ……」

 筋肉痛の身体に鞭を打つ中で、心の声が思わず口に出る。

 まるで倉庫のようなクローゼットの中には、色とりどりのスカートやコート、パニエやドロワーズが所狭しと吊されている。タツには息の苦しい空間だ。

 彼は作業を終えると、勢いよくフリルとレースのふわふわ地獄から飛び出した。

「終わった終わった」

「次、パパのお部屋のお掃除もお願いね」

 明蘭はそう言って、ニコニコしながらお菓子を頬張る。タツは眉間にしわを寄せて李の部屋へ向かった。

 室内には大きな書斎棚があり、中文で書かれた本や小説、日本語の音楽雑誌や経済誌等がビッシリ。

「執事ってか家政婦じゃねぇか」

 布巾を絞り、手際良く家具の埃を落としていく。

 綺麗な木目のオーディオ、ガラス張りの大きなテーブル、ブランデー入りのクリスタルボトル、エレキギターが飾られている透明なケース、アクセサリーが並んだ棚……。

 掃除中、時代錯誤な二眼レフカメラの隣に、厚いカバーの本が一冊置いてあるのをタツは見つけた。

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