おはようさん
ーータツが目を覚ますと、日差しが窓から自分を照らしていた。
彼はゆっくり起きた。その時、肩から何かが滑り落ちる。毛布だ。
「あれ、明蘭は……」
目をこすって見渡したが、部屋には彼女の姿はない。ベッドの上には、昨夜彼女が着ていた赤いベロア生地のスカートと、タツにはよくわからない小物や、白くてふわふわな布を重ねたスカートのような物、あとは淡い水色の下着が畳まれている。
しばらくキョロキョロしていると物音がした。彼が振り返ると、ちょうどバスルームの扉が開いた。部屋中に百合のような甘い香りが広がる。タツは慌てて元の寝ていた姿勢に戻った。
タツの耳に入るのは、彼女の鼻歌と歩く音。
今、明蘭はどんな姿で歩いているのか……。想像しただけでタツの鼓動が強くなる。
やがて、足音が近づいてきた。
「あれ、毛布……落ちちゃった」
タツの身体に温もりが戻る。
明蘭は溜め息しながら呟いた。
「それにしても、もっとマシなホテルがよかったな……」
その言葉にタツは起き上がった。
「何だよそれ、苦労して運んでやったんだ……」
二人は固まった。
タツの目の前には、バスタオル一枚で身を隠す彼女の姿が。
「な、何で起きているの」
顔を真っ赤にして震える明蘭。
「めい……お嬢こそ何で裸なんだよ」
彼が言い返した瞬間、彼女の重たい平手打ちが……。
その後、頬を冷やすタツの後ろで、明蘭は手際良く着替え終えた。
「もういいか」
「うん」
彼が振り返ると、昨夜と同じようにつま先まで着飾った彼女がいた。だが、その顔は浮かない。
「何だ、どうした」
「ブラウスだけでも着替えたいの。お店はここから近いし。それに……」
明蘭はタツの全身を見渡した。
「そっちの服も着替えてほしいの。全身ボロボロだよ」
彼女の言うとおりだった。ボタンは取れ、袖や裾はほつれ、そこら中に靴の跡が付き、おまけに埃まみれ。
タツはすんなり納得した。
「そう……だな」
こうして二人はホテルを出て、その洋服屋のあるビルへ入った。




