やれやれ……
タツは自分の目を疑った。明蘭が自分に背を向け立っているのだ。
ダリアの足は、彼女の目の前で止まっている。
「メイの執事をいじめないで」
叫ぶ明蘭。ダリアは次の構えに移りながら言い返した。
「危ない、どくんだ」
「嫌だ」
お互いに睨み合う。が、ダリアは溜め息をした後構えを解いた。
「タツ、腐りきったな。だが、次は嫌でも闘ってもらう」
彼はそう言い残し、苦い表情をして去っていってしまった。数人の男が彼の後へ続く。
明蘭はタツの前で立ったまま固まっていた。
「お、おい……」
タツが声をかけると、彼女は事が切れたのか、ふっ……と倒れてしまった。慌ててその身体を支えたタツは、そのまま彼女を抱きかかえて表へ出た。
彼は駐車場へ向かう途中に、普通のビジネスホテルを見つけた。
「まぁ、いいか……」
そう呟き、彼は入っていく。
手続きを済ませ、受付のホテリエに協力してもらって明蘭を部屋に運んだ。
ベッドに寝かされた彼女は、微かな寝息をスースー立てている。見たところ、怪我は何処にもない。
「黙っていてくれれば、ちょっとは可愛いのにな……」
そう言いながら彼女の頬を指で撫でた。柔らかく、赤子のような滑らかな肌触りに、タツは思わず唾を飲む。
「……きっと疲れてるんだ」
彼は自分に言い聞かせ、床に座り込んだままベッドに突っ伏して眠りについた。




