プロローグ
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今からするのは、カッコ悪いまま終わった、ある一人の男の前世の話。
俺なんかの人生にはみんな興味はないだろうけど、できれば我慢して聞いてほしい。
そして、もし「先生」のことを知っている人がいれば、伝えてほしいんだ。
「ここでもなんとかやってるよ」って――
昔の自分を思い出すと、恥ずかしくて仕方がない。
そう、陳腐な言葉で当てはめると、荒れていたんだ。
孤高の一匹狼なんて気取っちゃってさ。俺なんて、せいぜい小さく力のない野良犬がいいところだってのに。
ろくでなしの親のもとに生まれ、とにかく自分勝手に育ってきた俺にできることなんて、そうやって虚勢を張るくらいだったんだ。
たまに帰ってきては俺を殴る父親。男をとっかえひっかえして、家で嬌声を撒き散らす母親。
コイツらと同じ血が流れていることが、嫌で嫌で仕方なかった。
血なんて考えたって仕方ないのにさ。
思春期ってそういうものなのか、簡単には割り切れず、本当に本当に、心の底から嫌だった。
バカな俺は、自分に流れる血を見るのすら嫌だったんだぜ。血ってそういうことじゃないのに、ほんと、バカだよな。
そんな親と俺の視野の狭さが相まって、小さい頃の俺は「大人ってみんなクズばかり」だと思い込んでしまっていた。
確かに親は根っからのクズだったさ。
でもさ、俺は恵まれていたと思うんだよ。
小学生くらいまでは、地域に住むたくさんのあったかい大人が、陰ながら俺のことをサポートしてくれた。
その中でも、特にあの「弁当屋のババア」には、あの時もっと感謝しておけば良かったと、後悔してもしきれない。
「ほら!廃棄予定の弁当、持ってきな!」
そうやって小さな俺の背中を叩き、毎日のように抱えきれないくらいの弁当を持たせてくれた。
多分俺が家でコンビニの菓子パンとかしか食っていないってこと、知ってたんだと思う。
愛情たっぷりの料理ってこんなに美味しいんだって、そのとき初めて知った。
俺、態度に出せなかったけれど、あの人が大好きだった。
小さくてしわくちゃで可愛くないババアだったけれど、かっこよかったよ。
今思えば、あれが俺の初恋だったかもしれない。
でも、「おせっかいババア」として地元で有名で、学校ではちょっとバカにされた存在だったからさ。
素直に感謝するのが恥ずかしかったんだ。
ほんと、バカだよな、俺。
あの人の愛情にどれだけ救われたのか、ガキすぎる俺はちゃんと分かってなかったんだから。
そんな愛情たっぷりの弁当のおかげか、俺はすくすくと育った。
中学生の時点で体つきも相当ゴツくなり、ガリガリの父親に殴られたところで、どうってことないくらいにまでなった。
ただ、身体だけデカくても、まだまだガキだ。
大人はみんな敵だというバカな考えは根深く、中学を卒業して働き出しても、その価値観は変わることはなかった――
卒業後の俺は地元を飛び出し、地方で住み込みの工場勤務のバイトをしながら、朝から晩まで働いた。
とにかく金を稼ぎたかったんだよ。
金さえあれば、自分のやりたいようにできる。今までできなかったこと、全部やってやる。
金は自由への切符だ。とにかく、金、金、金……
その当時の俺は、取り憑かれたように働いていたんだそうだ。
……まあ、職場のみんな、どいつもこいつも目に光のない、俺と似たような奴らばっかりだったんだがな。
で、だよ。そんなことはどうでもいいんだ。俺の人生、こっからが大事なんだから。
そんな俺の曇った瞳を、さも簡単に晴らしてくれる存在と出会ったんだ。
「〇〇君。お金を稼ぐことを目的にしちゃあダメよ。お金を稼ぐっていうのは、ただの結果。仕事をするっていうのは、社会貢献なの。どんな仕事もね」
勤務中の俺に向かって、突然説教を始めた女。
確か、ここの工場長の娘だとか、そういうやつ。
30代後半だというのに、ノーメイクで大きなメガネをかけた、飾りっ気のない、いかにも真面目を体現したような女だった。
たしか職場の奴らからは、影で「クソメガネ」って呼ばれていたはずだ。
この工場には、いかにも底辺だという空気が蔓延している。
そんな場所で誰にも物怖じをせず、口うるさい女なんて、嫌われても仕方ない。
そう、この女は、みんなから邪険に扱われていた。
だから、俺もそうしようと思ったんだ。
ただ、さ。
その女と目が合って、その綺麗な瞳を見た時。
(なんてかっこいいんだ……)
背筋がしゃんとして、その力強い目が前を向いている。
世の中には、こんなに綺麗な物があるんだって、なんか、感動したんだよな。
俺、バカだから、なんでかは分からないんだけど、素直にそう思ったんだ。
「好きだ」
気づけば、そう口に出していた。
「は?」
ははっ、そりゃ、そんな反応にもなるだろう。
こんな目の死んだ、無口でデカいだけの男にそんなこと言われたら、当たり前だ。
てか、そもそもこの時初めて話したくらいだしな。
ただ、俺の真剣な目を見て、彼女はしっかり返事をしてくれた。
「……ごめんなさい。私、夫がいるの」
俺の初恋(自覚あり)は、当たり前に実らなかった。
ただし――
俺の人生は、明確にここから変わったんだ。
「そう、よくできました。あなただってやればできるのよ。じゃあ、次は四則演算から学び直しましょうか」
何を話した結果そうなったのかは分からない。
とにかく舞い上がって、彼女にいろんなことを話しているうちに……気づけば彼女の元で、今までサボってきた「勉強」というものを学ぶことになっていた。
彼女の家で、俺が生徒、彼女が先生。我が子に教えるように、彼女は教えてくれた。
いつの間にか俺は、彼女のことを「先生」と呼ぶようになっていた。
彼女はいずれ塾の先生になりたいらしく、俺のようなろくに学んでこなかった人は、「ちょうどいい」とのことだそうだ。
「人はいつだって再スタートできるのよ」
口癖のように、先生は言う。大好きな人の言葉だからこそ、俺は信じる。
――本当に楽しかった。
先生の作るオムライスも、ふいに夫と死別したことを憂う様子も、全てが愛おしかった。
たとえ先生の気持ちが俺に向かなかろうが、どうでもよかった。
先生が幸せそうならば、それでいい。
それくらい好きだったし、大人として尊敬していた。
結局、俺が二十歳になる頃、先生をかばい、しょうもない事故で俺だけ死んでしまったけれど……
(先生。ここでも、僕はそこそこ頑張ってるよ)
先生の言った通り、再スタートだ。
ここは少し変な世界だけど、やれるだけやってみるよ。
今度の僕が生きる世界は、日本とほとんど変わらない。
……ある一点を除いて。
その違いのせいで、この世界は血飛沫飛び交う修羅の国みたいになっている。
なんて、感じることがあるんだ。
言い過ぎって思うかな? でもさ、
「「「私、お笑い芸人になる!!!」」」
俺が笑っただけ。
それだけで、僕の大切な人が人生を再スタートしてしまうような世界なんだよ。
僕の本気の笑顔には、人の人生を強引に変えてしまうほどの力がある。
だから僕は、腹の底から笑うことだけはしないと誓った。
作者の過去作↓
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