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第38幕
レラと別れたユコニスは、父王の元へ急いだ。
警護は万全かもしれないが、相手は魔女リヨネッタだ。往年の魔力は失っているとはいえ、油断していると足元を掬われる。
今、父を……王を失う訳にはいかなかった。そんなことになれば、我がミューキプン王国は麻のように乱れ、たちまち諸国に食い潰されてしまうだろう。
大広間が近付くにつれ、宴の声が大きくなる。盛況なようで、ひとまず安堵する。
そのとき、廊下の陰から何者かが現れ、ユコニスの前に立ちはだかった。
「え……」
それは、美しいドレスを着た貴婦人だった。
「ご機嫌麗しゅう、王子。ずいぶん慌てているようですが、何かございましたか?」
「あ……」
ユコニスは目を見張った。
顔を合わせるのは、十年ぶりくらか。だがその顔、その冷ややかな双眸は忘れようがなかった。
「リヨネッタ伯母さん……」
「ずいぶんと立派になられて。ずっと、お会いしたかったのですよ」
言葉とは裏腹の、井戸の底のように冷たい声が、ユコニスの心臓を鷲掴みにした。




