灰の瞳のレラ

第29幕

「ユコ、ニス……」

　目の前で、成長したユコニスとデイジアが死闘を演じている。

「やめて、デイジア姉様……」

　しかしレラの言葉は、血を滾（たぎ）らせた暗殺者の耳に届くには、あまりにか細い。

「そこ！」

　デイジアの短剣が、ついにユコニスの短剣を弾き飛ばした。

「しまっ……」

　ユコニスが思わず動揺する。

「いただき！」

　デイジアが勝利の笑みを浮かべた。

　凶刃が、ユコニスを襲う。

「だめ、デイジア姉様！」

　その瞬間、レラの体が疾風（しっぷう）のように弾けた。

「！」

　予想外の攻撃に、今度はデイジアが動揺し、目を見開く。

　その瞳に、レラの顔が映る。

「あんた……！」

　レラの刃が、デイジアの腹部に深々と突き刺さった。