保安隊海へ行く 96
サングラスの二人は車を降りた。目の前のスポーツカーには人の気配が無い。
「とりあえず確認だ」
助手席から降りた男は、そう言うとそのままスポーツカーのシートを確認するべく駆け寄った。エンジンは切られてすぐらしく、熱気を帯びた風が頬を撫でる。二人は辺りを見渡す。明かりの消えた高校の裏門、ムッとするコンクリートの焼ける匂いが二人を包んでいた。
とりあえず確認を終えた二人が車に戻ろうとした時だった。
「動くな」
女の声に振り向こうとする助手席の男の背中に硬いものが当たる。相棒はもう一人の女に手を取られてもがいている。
「そのまま手を車につけろ」
指示されるままに男はスポーツカーに手をつく。
「おい、どこのお使いだ?」
右腕をねじり上げられた運転手が悲鳴を上げる。
「要ちゃんさあ。二、三発腿にでも撃ち込んであげれば、べらべらしゃべりだすんじゃないの?」
サブマシンガンを肩に乗せた闇の色の髪の女性が、体格に似合わず気の弱そうな表情を浮かべる若者を連れてきた。
「それより誠。せっかく叔父貴からダンビラ受け取ったんだ。試し斬りってのもおつじゃないのか?」
「わかった、話す!」
スポーツカーに両手をついていた男が、背中に銃を突きつける緑のポニーテールの女性に言った。
「我々は胡州帝国海軍情報部のものだ!」
「海軍ねえ、それにしちゃあずいぶんまずい尾行だな。もう少しましな嘘をつけよ」
さらに男の右腕を強くねじり上げる要。男は左手でもれそうになる悲鳴を押さえ込んでいる。
「本当だ!何なら大使館に確認してもらってもかまわない。それに尾行ではない!護衛だ」
両手をついている男が、相棒に視線をうつす。
「それならなおのこともっとうまくやんな」
そう言うと要は右腕をねじり上げていた男を突き放す。カウラは銃を収め、不服そうに眺めているアイシャを見た。
「上は親父か?」
「いえ、大河内海軍大臣の指示です。西園寺要様、神前誠曹長の安全を確保せよとの指示をうけて……」
安心したようにタバコに火をともす要。
「紛らわしいことすんじゃねえよ。そう言うことするならアタシに一声かけろっつうの!」
「要ちゃんなら怒鳴りつけて断るんじゃないの?」
アイシャはサブマシンガンのマガジンを抜いて、薬室の中の残弾を取り出す。
「そんなことねえよ」
小声でつぶやいた要の言葉にカウラとアイシャは思わず目を合わせた。




