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保安隊海へ行く 87

 嵯峨は困ったような顔をしていた。誠はこんな表情の嵯峨を見たことが無かった。常に逃げ道を用意してから言葉を発するところのある保安隊隊長。のらりくらりと言い訳めいた言動を繰り返して相手を煙に撒くのが彼の十八番だ。だが、要の質問を前に明らかに答えに窮している。

「どうなんだ?心当たりあるんじゃねえのか?」 

 要がさらに念を押す。隊長室にいる誰もが嵯峨の出方を伺っていた。誠を襲った刺客。前回は嵯峨が吉田に命じて行った誠の情報のリークがきっかけだった。全員が嵯峨をにらみつけていた。

「それがねえ……」 

 頭をかきながら隊長用の机の引き出しを漁る嵯峨。一つのファイルをそこから取り出した。

「遼南帝国、特務機関一覧」 

 カウラが古びたファイルの見出しを読み上げる。

「この字は隊長の字ですね。それにしてもずいぶん古いじゃないですか」 

 うっすらと金属粉末が積もっているファイルに目を向けながらアイシャがそう言った。

「まあな。俺が胡州帝国東和大使館第二武官だった時に作ったファイルだ」 

「そんな昔の話聞くためにここに来たんじゃねえよ」 

 要はそう言うとくみ上げた拳銃をまた分解し始めた。

「まあそう焦るなって。俺が吉田の仕組んだクーデターで遼南の全権を掌握した時、当然そこにある特務機関の再編成をやろうとしたんだが……カウラ125ページを開いてみろや」 

 そう言われてファイルを取り上げたカウラが言われるままにファイルの125ページを開く。要以外の面々がそのページを覗き込んだ。

「法術武装隊」 

 その項目の題名をカウラが読み上げた。

「俺や茜、誠の力をとりあえず『法術』と呼称している元ネタは遼南帝国の特殊部隊の名称から引っ張ってきてるんだ」 

「そんな力の名前がどうこうした話を聞きに来たわけじゃねえ」 

 吐き捨てるように言うと机を叩く要。

「じゃあ率直に言おうか?他の特殊部隊、秘密警察の類は関係者と接触を取ることができた。必要な部隊は再編成し、必要ない部隊は廃止した。だが、法術武装隊の構成員は一人として発見できながった」 

「調べ方が甘かったんじゃねえの?」 

 挑戦的な笑みを浮かべる要。隊長の椅子に深く座った嵯峨は大きく伸びをした。

「それだったらよかったんだけどねえ」 

 そう言うと今度は机の上に乱雑に置かれた書類の山から一冊のノートを取り出して要に投げた。

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