保安隊海へ行く 85
「なんだありゃ?」
フェデロが思わずそうこぼした。
「同志が見つかったんじゃないですか?あのクラウゼ少佐の趣味は有名ですよ」
岡部はそう言うとハンガーを見回した。
「ちゃんと俺達の機体の収納場所は確保できそうですね」
「叔父貴に会ってたのか?」
要はきょろきょろとハンガーを見て回ろうとするロナルド達、第四小隊の面々に声をかけた。
「いやあ、僕もいろいろな上官と付き合ってきたが、あれは……」
金の縁のサングラスを外しながらロナルドはそう言った。
「だろうな。ありゃあ軍人向きの性格じゃねえ」
要はそう言うとポケットからタバコを取り出す。
「優れた軍政家。そう評するのが常識になってはいますが、あくまで得意とするのは小規模での奇襲作戦。同盟上層部がここにあの人物を置いたのは正解かもしれませんがね」
タバコの煙を吐き出す要に少し眉を潜めながらロナルドはつぶやいた。
「なるほど、的確な分析をしてるんだな、米軍は。一撃、ただそこに複雑な利害関係を絡めて敵を交渉のテーブルに着ける。それがあのおっさんの戦争だ」
要はタバコの煙の行く手をのんびりと眺めていた。
「そうすると我々がどういう任務に付くかも見えてきますね」
「岡部中尉さんですね。どう読まれます?」
軽く笑みを浮かべている茜がそうたずねた。物腰の柔らかく、それでいて凛としたところもある茜にそうたずねられて、頭をかきながら岡部は言葉を続けた。
「遼州同盟は成立したものの、ベルルカン大陸はその多くの諸国は参加の結論を出していないでいますね。地球の大国、ロシア、ドイツ、フランス、インド。各国は軍事顧問や援助の名目で部隊を派遣し、利権の対立により紛争が絶えず続いています。そして他の植民星への建前もあり、アメリカ軍はおおっぴらに部隊を派遣することが出来ない……」
誠の機体を眺めていたアイシャとレベッカもこの言葉に耳を傾けていた。
「しかし、我々が同盟司法機構として治安管理や選挙管理などの名目で出動することになれば話は変わってきますね。我々はあくまで同盟の看板を掲げている以上、隣国の安定化ということで現地入りする口実があります。さらにそれを攻撃することは合衆国を敵に回すことを宣言することに等しいわけです」
「つまり、俺達は相当忙しい身になると言うことか」
ロナルドは要の吐く煙から逃げながらそう結論を出した。
「じゃあ俺等はろくに休みも取れなくなるって話ですか?」
そう言って頭を抱えるフェデロ。
「おそらく第三小隊の結成まではきつい勤務体制になるでしょうね」
岡部の言葉にフェデロは天を仰いだ。
「そいつはご愁傷様だな。せいぜいお仕事がんばってくれや」
そう言うと要はハンガーの奥へと歩き出した。
「西園寺さん。どこに行かれるんですか?」
「決まってるだろ。今日の茜を使った茶番をどうやって用意したのか叔父貴に聞きにいく」
誠、茜、アイシャ、カウラ。そしてレベッカもその後に続いて事務所に入る階段を上り始めた。




