保安隊海へ行く 45
「それよりそんな話切り出すなんて……会ったのか?アメリカの兵隊さんにでも」
里芋の煮物を器用につかんで口に放り込みながら要が不思議そうな目で誠を見る。
「昨日、風呂場で会いました」
誠のその言葉に、隣のテーブルのアイシャが突然噴出した。
「なんでオメエが噴出すんだよ!」
変わらない目つきで今度はアイシャを見つめる要。アイシャは慌てて立てかけてあったペーパータオルを何枚も取り出してテーブルの掃除を始める。
「腐った脳みそが動き出したんだろ」
淡々とメロンを食べ続けるカウラ。その表情はいつものメロン好きな彼女らしい至福のひと時のように見えた。
「カウラ、知ってんだな、第四小隊の面子」
ようやく理解したと言うように要がカウラに話題を振る。
「おとといの部隊長会議で書類には目を通した」
それだけ言うと、なぜか慎重にメロンをスプーンですくう。
「なんだよ、アタシだけのけ者か?」
すねたように外の庭園に視界を移す要。
「あの誠ちゃん……」
テーブルの掃除を済ませたアイシャの目つき。何を期待しているのかは良くわかった。
「すいませんアイシャさん。お望みの展開にはなっていないので」
アイシャが目を輝かせて見つめてきたので、つい誠はそんなことを口走っていた。彼女の思惑通りにロナルドとくんずほぐれつになって見せてやるほど誠はお人よしではない。
「まあ、誠ちゃんはシャイだから。そのうち目くるめく男同士の……」
「遠慮します!」
さすがにこれが限界だったので、語気を荒げてそう言うと誠は味噌汁を口の中に流し込んだ。
「でも男同士で裸だったら……」
「しつけえんだよ、腐れアマ!本人が違うって言ってるんだからそれで良いじゃねえか!」
さすがに癇に障ったように、要がアイシャをにらみつけた。口の中でもぞもぞ言葉を飲み込みながら、アイシャはメロンの皿をカウラに渡した。
「いいのか?」
嬉しそうでありながら信用できないと言うように複雑な表情を浮かべているカウラ。
「カウラちゃん、メロン好きそうだからあげるわ。怖い『山犬』が怒ってるから噛まれないうちに準備してくるわね」
そう言うとアイシャは食事を終えて入り口で手を振っていたシャムやサラ、そして島田達に向かって歩いて行った。
「ここの露天風呂を使ってたということは、ここに泊まっているはずだが、それらしいのは居ねえな」
周りを見渡し、納得したように今度は煮物のにんじんを箸で口に運ぶ要。
「別館なら完全洋式でルームサービスが出るだろ。そちらに泊まっているんじゃないのか」
カウラはそう言うとアイシャの残していったメロンをまたゆっくりと楽しむように味わっている。
「そう考えたほうが自然ですね」
誠がそう言うと、目の前に恨みがましい目で誠を見つめている要の姿があった。
「誠!テメエ、カウラの話だとすぐ同意するんだな」
「そんなこと無いですよ……」
助けを求めるようにカウラを見たが、メロンを食べることに集中しているカウラにその思いは届かなかった。




