保安隊海へ行く 18
急に店の奥から電波ソングが流れる。シャムと小夏。小柄なシャムの方がまるで妹に見える奇妙な光景だった。
「行けー!」
アイシャが叫ぶとシャムと小夏が腰を振ってこれまた電波な踊りを始める。はたから見れば奇妙な光景だが、健一は何度か見慣れているらしく拍手をしながら笑顔で見守っている。
「どうだ?萌え評論家の神前誠君」
ニヤ付きながら話しかけてくる要。いつもならこういうドサクサは見逃さない彼女が誠のグラスに細工をするわけでもなく、ただ笑いながら誠の顔を覗き込んでいる。
「これは実に萌えですね。猫耳万歳です」
『みなさーん!ありがとう!』
シャムと小夏がぺこりと頭を下げる。そしてあまり長くない電波ソングライブは終わった。
「猫耳か……」
ポツリとカウラが呟いた。
「なに?カウラちゃんも猫耳つける?」
笑顔のアイシャがカウラに言った言葉に、すぐ視線を走らせている要を見つけた誠。不思議そうにアイシャを見つめるカウラ。自分が猫耳をつけたときを想像しているように誠には見えた。
「私はそういうことには向かない」
しばらく真剣に考えた後、そう言うといつもどおりウーロン茶を飲み始めるカウラ。
「確かにテメエにゃ無理だ。キャラじゃねえ」
「それじゃあ要ちゃんがやったら?」
アイシャがそう振ったとき、いつもなら怒鳴り声が飛んでくるところが別に何も起きなかった。ここまで来てようやくリアナにも要の反応の違和感が感じられたようで、どこか不思議そうな目で要を見つめているリアナを誠は見逃さなかった。
「やっぱり変よねえ」
首を傾げるリアナ。しばらく考えた後、一つの結論に達したように手を叩いた。
「もしかして要ちゃんて好きな人と海に行くって初めてなのかしら?」
空気が止まった。
全員がその可能性は否定していなかったが、その後に訪れるだろう報復を恐れて選べないでいた結論。それが判っていても全員の視線が要の方を向く。
要は何が起きたかわからないとでも言うようにきょとんとして、全員の顔が自分のほうを向いていることを確認した。
「どうなの?要ちゃん」
確かにこの場でこんな事を要に確認できるのはリアナしかいなかった。島田なら救急車が必要になる。カウラやアイシャなら店が半壊の憂き目にあうだろう。誠とサラ、パーラ、キム、エダにはそんな度胸も無い。
全員の視線が要に集中した。




