保安隊海へ行く 159
誠はまさに針のむしろの上にいるように感じていた。言葉をかけようと要の顔を見れば、隣のアイシャからの視線を感じる。カウラの前のしょうゆに手を伸ばせば、黙って要がそれを誠に渡す。周りの隊員達も、その奇妙な牽制合戦に関わるまいと、遠巻きにそれを眺めている。
「ああ!もう。要ちゃん!なんか不満でもあるわけ?」
「そりゃあこっちの台詞だ!アタシがソースをコイツにとってやったのがそんなに不満なのか?」
「あまりおひたしにソースをかける人はいないと思うんですが」
二人を宥めようと誠が言った言葉がまずかった。
「アタシはかけるんだよ!」
「良いわよ。ちゃんとたっぷり中濃ソースをおひたしにかけて召し上がれ」
アイシャに言われて相当腹が立ったのか、要はほうれん草にたっぷりと中濃ソースをかける。
「どう?おいしい?」
「ああ、うめえなあ!」
「貴様等!いい加減にしろ!」
カウラがテーブルを叩く。要もアイシャも呆然と彼女を見守っている。
「食事は静かにしろ」
そう言うと冷凍みかんを剥き始めるカウラ。要は上げた拳のおろし先に困って、立ち上がるととりあえず食堂の壁を叩いた。
「これが毎日続くんですか?」
「なに、不満?」
涼しげな目元にいたずら心を宿したアイシャの目が誠を捕らえる。赤くなってそのまま残ったソーセージを口に突っ込むと、手にみかんと空いたトレーを持ってカウンターに運んだ。
「それじゃあ僕は準備があるので」
「準備だ?オメエいつもそんな格好で出勤してくるじゃねえか……。とりあえず玄関に立ってろ」
「でも財布とか身分証とか……」
「じゃあ早く取って来い!」
要に怒鳴られて、誠は一目散に部屋へと駆け出した。




