保安隊海へ行く 154
あからさまに嫌な顔をしているアイシャがいた。
「何よ、食事当番ならもっと適当な奴がいるじゃないの」
その場の全員が、自称食通ことヨハンを思い出していた。
「アイシャ……その適当な人間が今夜は徹夜なんだ。早くこっちに来てジャガイモの皮を剥け」
カウラの言葉にあきらめた調子でそのまま厨房に入ってくるアイシャ。
「要、鍋をかき混ぜるぐらいならできるだろ?」
「わかったよ、その段取りになったら呼んでくれ」
そのままタバコを取り出し喫煙所に向かう要。パーラが取り出した食材をまな板の横で眺めているカウラ。
「ジャガイモ、牛肉、にんじん、たまねぎ」
「ちゃんと揃えてあるのね」
「本来は買出しなんかも担当するんですが、今日は島田先輩が用意してくれましたから」
そう言うと誠はにんじんに手を伸ばした。
「カレーのルーはブロックの奴なのね」
「ああ、この前まではシン大尉が持ってきてくれた特製ルーが有ったんですが切れちゃいましてね。まあ代用はこれが一番だろうってお勧めのルーを使っているんですよ」
「ああ、あの人カレーにはこだわるもんね」
そう言うと皮むき気でジャガイモを剥き始めるアイシャ。パーラは鍋を火にかけ油を敷いた。
「にんにく有る?」
「にんにく入れるのか?」
「ああ、そちらの奥の棚にありますよ」
「サラ、とりあえず二かけくらい剥いてよ」
サラは棚からにんにくを取り出すと剥き始める。
「臭くなっちゃうじゃない」
「当たり前のことを言うな」
慣れない包丁でにんじんを輪切りにするカウラ。その視線が食堂に注がれる。
「要ちゃん!手伝ってよ」
喫煙所から帰ってきた要が手持ち無沙汰にしているのを見つけたアイシャ。その言葉を聴いて躊躇する要だったが、誠と目が合うとあきらめたように厨房に入ってきた。
「何すればいいんだ?」
「ジャガイモ剥いていくから適当な大きさに切ってよ」
アイシャに渡されたジャガイモをしばらく眺める要。
「所詮コイツはお姫様だ。下々のすることなど関係が無いんだろ?」
挑発的な言葉を発したカウラに一瞥かました後、むきになったように要はジャガイモとの格闘を始めた。
「あまり無茶はしないでね」
そう言うとパーラは油を引いた大鍋ににんにくのかけらを放り込んだ。




