保安隊海へ行く 151
「すまんが西、これでコーヒーでも買ってきてくれ」
食堂についたカウラが西に一万円札を渡す。
「ああ、俺も出しますよ」
そう言ってロナルドがポケットに手を伸ばすのをカウラは視線で制した。
「アイシャが出すのが良いんだけど、あの娘、漫画とか読み始めると止まらなくなっちゃうから」
パーラがロナルド達に微笑みかける。
「しかし、本当に変わった人が多いですよねえ」
ロナルドの言葉に顔を見合わせるサラとパーラ。西は敬礼してそのまま近くのコンビニへと走る。
「でも良い人が多くて良かったです」
レベッカはそう言うと恥ずかしそうに視線を落とした。
「そいつはどうかねえ」
タバコを吸い終えた要が食堂に入り、誠の隣に席を取る。反対側に座っていたカウラがいつものように冷たい視線を送るが、まるで気にする様子は無い。
「しかし、神前君は良い上司に恵まれてるな」
「そうかねえ、俺はそうは思わないけどな」
フェデロの一言で、要とカウラの視線が彼に向かう。助けを求めるようにレベッカを見るフェデロだが、レベッカはもじもじしながら下を向いてしまった。
「余計なことは言わない方が良いな。お前も岡部もアサルト・モジュールでの本格的な実戦を経験したことは無いんだ。それに対し神前君は撃墜スコアー7機。立派なエースだ」
「なんだよ、海軍の精鋭と聞いていたわりにはただのひよっこじゃねえか」
挑発的な視線を送る要だが、岡部もフェデロもそれに食いつく様子は見せない。
「我々と西園寺大尉では保安隊に所属する意味はまるっきり違う。そう遠くない時期にベルルカン大陸に保安隊の旗を持って派遣される予定だ」
ロナルドのその言葉に場の空気は固まった。
「そうか、あそこは遼州のアキレス腱だからな。小隊一つ送るにしても、微妙なパワーバランスや政治的配慮やらでお偉いさんも及び腰になっているのが実情だ。まああそこに利権を持つロシアやフランス辺りの面子を潰さずにアメちゃんの兵隊を送り込む方法としては、そう言う発想はありなんじゃないかな」
一人その空気を読めていた要の言葉、ロナルドは静かに頷いた。
「先月誕生したスラベニア文民政権の正当性をめぐって遼州同盟は苛立っている。後ろにあからさまにロシアの影がちらついているからな。再来月の選挙がどういう形で行われるかであの大陸の運命が決まる」
ロナルドはそう言いながら一同を見回した。
「まあ、第一小隊は同盟加盟国の法術武装組織の教導任務で手が離せない。アタシ等は目立ちすぎて動けない。そうなるとどこかからそれなりの腕前の奴を引っ張ってくるしかない。そこに遼州での存在をアピールしたかったアメリカ海軍が目をつけたって事だな」
要のその言葉を否定も肯定もせず、ロナルドはただ笑みを浮かべるだけだった。




