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保安隊海へ行く 129

 要と女主人は相変わらず話し込んでいる。ここ数日で要の保安隊では見れない一面を見ることが多かった。胡州帝国の名家のお嬢様と言う生まれ、そのことを皮肉るような殺伐とした部屋、そして花を選ぶ時の真剣な目つき。

「気に入ったのか?シャム」 

 ようやく花束が一つ出来上がったところで要がシャムのほうを見た。

「これ良いよね」 

 そう言いながら笑みをこぼすシャム。

「オメエも選んでみるか?」 

 その要の言葉にはじかれたように、シャムが店の中の花達を物色し始めた。

「よう、先生。お気に召すモノでも有ったのか?」 

 自動ドアが開いて現れた吉田の顔がほころんでいる。

「まあな。明華の姉御は手を抜くと見抜くからな。それなりのものが出来たと思うぜ」 

 そう言うとそのままシャムのほうに歩み寄る要。

「ひまわりを目立つようにしたいんだろ?だったら桔梗はこっちの落ち着いた色の方が映えるぞ」 

「そうなんだ。じゃあこれをつけてと!」 

 シャムはうれしそうに花を選んでいる。女主人は包み終わった花束を吉田に渡す。吉田はカードで支払いを始めた。

「オメエの頭の中みたいだな」 

 要はシャムの手に握られたひまわりのインパクトが強い花束を女主人に渡す。

「そっちの会計は自腹な」 

 会計を済ませた吉田の一言で、シャムの表情が泣きそうなものになった。

「そうだろ?それシャムが持って帰るんだから」 

「ったく度量がないねえ。高給取りなんだから払ってやれよ」 

 目じりを下げて要が吉田を見つめる。仕方ないと言うようにまたカードを取り出す吉田。花屋の女主人は再び花束を作り始める。

「いつものことながら見事なもんだねえ」 

 手にしている要の選んだ花束を見つめる吉田。要はさもそれが当然と言うように自動ドアから街に出た。慌ててその後に続く誠。

「凄いですね、西園寺さん」 

 要が言葉の主の誠を見てみれば、感動したとでも言うような顔がそこにあった。

「ちょっとした教養って奴だ。こういうことも役に立つこともある」 

 それだけ言うと要はあまさき屋のある方向に向かってアーケードの下を歩き出した。

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