保安隊海へ行く 128
住宅街に伸びる細い道が途切れ、アーケードが続く商店街に車はたどり着いた。白いワイシャツがまぶしい部活帰りと言ったような高校生の自転車の車列。宅配便のワゴン車が通り過ぎるのを確認すると、吉田はそのままメイン通りを右折した。かなり寂れた商店街である。郊外型大型店の人気は豊川でも例外ではなかった。
『平河花店』と書かれた看板の前でワンボックスは止まった。
「ちょっと俺は車置いてくるわ」
シャム、要、誠が下りるのを確認すると、吉田はそのまま車を走らせた。
「またここか」
要はそう言うと店の中に入った。名前の工夫の無さに比べて、店内は比較的明るく改修されたばかりという雰囲気だった。
「いらっしゃい……ってシャムちゃん!また来てくれたのね」
「へへへ。来たよ」
店の奥から出てきた若い女主人はシャムの頭を撫でていた。しかし、彼女の視界に要が入ると、少し緊張したような表情を浮かべた。
要は冷蔵庫の中の花を一つ一つ確認するように見つめている。
「今日はどう言った花をお探しで……」
おどおどとした調子で要に話しかける女主人。
「花の保管方法は教えてやったようにしたんだな」
要はそう言うと女主人の方に目をやった。
「ええ、保存温度も西園寺さんのおっしゃるとおりにしましたから」
その声を聞くと笑顔を浮かべた要が冷蔵庫の薔薇の花に手を伸ばした。
「これが商品になるのは今日までだな。まずはこれを頼む」
要が手に取った黄色い薔薇を女主人に手渡す。
「これなんてどうでしょうか?」
女主人はその隣にある豊川市の花でもある赤い百合を手渡した。少しばかり要の頬に皮肉めいた笑みが浮かんだ。女主人もそれを感じているのか、手が震えている。
「色の取り合わせとしては悪くねえが、二つも目玉を持たせるのはどうもねえ。こっちの白いのなら脇で締まって見えるようになるんじゃねえか?」
そう言うと要は冷蔵庫の隅にまとまって置かれていた白い小ぶりな百合を手に取った。誠は要と女主人のやり取りから目を離してシャムのほうを見た。
じっとひまわりの花とにらめっこをしているシャム。誠は再び視線を要達の方に向けた。




