保安隊海へ行く 126
誰もいない踊り場。要を先頭にエレベータに向かう。
「しかし、西園寺が出たらどうなるんだ?この建物」
吉田が人気の無いフロアーを見回している。シャムもそれをまねるように首をめぐらす。
「ああ、今度、京渓電鉄が向こうの造成地に駅作るって話だから入るんじゃねえか?」
まるで他人事のように要はそう言い残してエレベータに乗り込む。
「でも、凄いですね」
ここ数日、要と自分の暮らしていた世界が余りに遠いことを思い知らされた誠はそう言うしかなかった。
「胡州帝国宰相の娘とは思えない部屋だったしな」
「吉田。どういう意味だ?」
「言ったとおり。それ以外の意味なんかねえよ」
下っていくエレベータ。シャムが不安そうに眉間にしわを寄せている要の顔を見る。
「ああ、そう言えばシャム。花屋よってかんとまずいだろ」
「そうだよ!そのためにも要ちゃんのところに来たんだから!」
吉田とシャムが要のタレ目を覗き込む。
「何が言いたいんだ?」
エレベータの扉が開く。すばやくその間を抜けて歩き始めた要が吉田達に振り向いた。
「聞いてないのか?」
「だから何をだよ!」
そう要が言い放つと、困惑したように吉田とシャムが顔を見合わせる。
「タコの奴、ようやく腹を決めたんだわ」
それだけではわからない。そう言う表情を浮かべる要と誠。
「来年の六月にね、明石中佐と明華ちゃん結婚するんだって!」
一瞬の沈黙。マンションの自動ドアを通り過ぎた地点で、要はようやく意味が聞き取れたと言うように立ち止まった。
「マジか?」
吉田を見つめる要。誠は呆然と吉田達を眺めた。
「嘘ついてどうするんだよ。シャム、カウラには連絡したろ?」
シャムが吉田を不思議そうな顔で見つめている。頭を抱える吉田。
「そう言うことは早く言えよ!それで渡す花束のコーディネートをアタシに頼もうってんだろ?」
ようやく納得がいったとでも言うように要は目の前に止めてあったワンボックスのドアを開けた。




