保安隊海へ行く 125
「終わった」
一言そう言って酒瓶に手を伸ばす要。
「早過ぎないか?まあ西園寺らしいがな」
そう言うと吉田は要からリモコンを奪い取りモニターを消した。静かに上がって収納されていく画面を不思議そうに眺めるシャム。
「それじゃあ、どうする?」
「商店街でも顔出すか」
そう言って立ち上がる要。そのままベランダのドアを開け、吉田の肩を叩いた。
「帰るのも当然こっちだろ?」
ニヤニヤとベランダの向こうに垂れ下がっているロープを指差す要。
「俺の車に乗るんだろ?ちゃんとロープは回収するから頼むわ」
そう言うと吉田はベランダに出てロープを一回弛ませる。すぐさま上から鉤爪が落ちて来るのを受け取るとロープをまとめ始める。
「そう言えば吉田。最近、叔父貴に仕事を頼まれたことあるか?」
部屋を出ようとする吉田に要が声をかける。
「仕事ねえ、年中頼まれてるがどんな仕事だ?」
「『カネミツ』がらみ、またはこいつの『クロームナイト』の関係でも良いや」
そう聞いて少し怪訝な顔をする吉田。
「遼南叩きのサイトなんかで流れてたな、そんな噂。年中立つ噂だが、ちょっとソースが特殊なんでね」
頭を掻きながら靴に足を突っ込む吉田。
「やっぱりデマか。でもどこだって言うんだ?ソースは」
「東モスレム解放戦線の公然組織、東和回教布教団だ。東モスレムの連中にしたら確かにあの化け物が央都鎮座しているってことが安心して眠れない理由なんだろうが、持ち主の遼南軍とは関係の無い連中だ。もし本当ならもっと早い段階で水漏れして俺のところにもいくつかの情報屋から知らせがくるもんだけどな」
そう言うと吉田はゆっくりと靴を履く。
「つまり今回アタシが手に入れた情報は無意味だったと」
「まあそう言うこと。とりあえず騒ぐことが無いからでっち上げたんだろ。だが、東モスレムの情報が嘘だからといって豊川工場に『カネミツ』が存在しないかどうかは俺もわかんねえよ」
吉田はゆっくりと立ち上がる。要はそれ以上聞くつもりは無かった。誠もそのわけが最近わかってきた。ネット上の情報をほぼその神経デバイスにリアルタイムで流している吉田すら嵯峨の特殊な情報網は把握できてはいない。そして吉田もそのことを追求することは無い。
いつものことだ。そう割り切った誠はさっさとサンダルを履く要の後に続いて靴を履いた。




