保安隊海へ行く 110
誠はアイシャの部屋を通り過ぎてカウラの部屋に入った。踏み台に乗った島田がクーラーの前の部分を外してドライバーで中の冷却剤の流れている管を叩いている。
「おっかしいなあ、漏れてるわけじゃないんだけど」
拡げられた新聞紙の上の部品を一つ一つ手にとって眺めているカウラ。
「どうしたんですか?島田先輩」
「神前か。実は冷却剤が漏れてるみたいなんだけど。さて、どうしたもんかね」
頭を掻く島田。
「冷却剤の缶ってこれですか?」
足元の缶を眺める誠。それがすぐになんであるかわかった。
「島田。これが原因なら間違いなく入らないだろうな」
カウラもそれを見て人工的な笑いを浮かべる。
「これエアソフトガン用のガスですよ」
「おいホントかよ!吉野か上島の馬鹿、あれほどエアコンのガスかっぱらうなって言ったのに」
島田はそのまま踏み台から降りた。
「これじゃあ買出し行かないと無理っすね。ベルガー大尉、すいませんが明日の朝には都合つけますから」
そう言ってクーラーの組み立てにかかる島田。
「神前。西園寺大尉には午後になるって言っといてくれよ」
全面のカバーを組み込んで、手にしたボルトを刺していく島田。
「手伝わなくても大丈夫ですか?」
「技術屋を舐めるなよ」
「誠。まだ西園寺の部屋は終わらないのか?」
島田にねじを渡しながらカウラが誠に向き直る。
「今、アイシャさんと茜さんが手伝ってますからすぐ終わると思うんですけど……」
「あいつまたサボってタバコでも吸っているのか」
カウラはあきれたような顔をして、小さな基盤を島田に手渡す。
「じゃあ戻ります」
作業の邪魔にはなるまいと、誠はそのままカウラの部屋を出た。
「お昼だよ、神前君」
突然目の前に現れたサラ。そしてパーラが要にヘッドロックを食らっている。
「昼って、どこか食べに行くんですか?」
「あまさき屋の女将が来てるんだ。海に連れてってくれたお礼だってよ」
そう言うとギブアップしたパーラから手を離す要。
「結局要ちゃんは手伝わなかったわね」
「そこが要さんらしい、ところですわ」
雑巾とバケツを持ったアイシャと茜が恨めしそうな目で要を見ている。




