保安隊海へ行く 108
「なんでオメエがいるんだ?」
「要さん。昨日、引越しをするとおっしゃってませんでしたか?」
畳の目にそってよく絞った雑巾を動かす茜。
「オメエの引越しは……」
冷や汗を流しながら要が口を開く。
「お父様には以前から部屋を探していただいていたので、すでに終わってますわ」
すばやく雑巾をひっくり返し、茜は作業を続ける。
「でもいきなり休みってのは……」
「要さん……いや、西園寺大尉」
茜は視線を畳から座り込んでいる要に向ける。
「なんだよ」
「第二小隊の皆さんには私達、法術特捜の予備人員として動いていただくことになりましたの。このくらいのお手伝いをするのは当然のことでなくて?」
沈黙する部屋。要はあきれ返っていた。誠はまだ意味がわかりかねた。
「そんなに驚かれること無いんじゃありませんの?法術に関する公式な初の発動経験者が現場に出るということの形式的意味というものを考えれば、むしろこの機を逃すのはおろかな人のなさることですわ」
「そりゃあわかるんだよ。あんだけテレビで流れたこいつの戦闘シーンが頭に残ってる時に叩くってのは戦術としちゃあありだからな。でも……」
要は不思議そうな顔で覗き込んでくる茜の視線から逃れるようにうなだれた。
「第二小隊ってことはカウラさんも入るんですか?」
今度は窓を拭きながら誠が尋ねる。
「当然ですわ。あの方には第二小隊をまとめていただかなくてはなりませんし」
そう言うと茜は再び良く絞った雑巾で丁寧に畳を撫でるように拭く。
「結局、あいつの面を年中拝むわけか」
「他には本人の要請でアイシャさんも状況分析担当で編入予定ですわ」
「なんだってー!」
要の叫び声が響き、ドアからうわさの人アイシャが顔を覗かせる。
「なにやって……」
言葉を続けることは出来なかった。要はアイシャの顔に自分の顔をこれでもかというくらい突きつけた。
「要ちゃんには楓さんがいるじゃないの」
「そう言う話をしてるんじゃねえ!本当か?こいつの言ったことは、本当か?」
「話が見えないわよ!茜さんが何言ったのよ!」
助けを求めるように誠に視線を投げるアイシャ。
「法術特捜の保安隊からの協力者のメンバーにアイシャさんが入っているかということですよ」
誠の言葉にアイシャは余裕の笑みを浮かべていた。
「そうなんだけど、何か問題があるの?」
その挑戦的な口調に、要は思わず引き下がった。




