保安隊海へ行く 102
「いい身分だな」
コンビニの弁当を下げた菰田が食堂に入ってくる。誠は苦手な先任曹長から目を逸らす。管理部は保安隊でも異質な存在である。隊舎の電球の交換から隊員の給与計算。はたまた所轄の下請けでやっている駐車禁止の切符切りの時に要が乱闘で壊した車の請求書の整理まで、その活動範囲が広い割にあまり他の隊員との接触が無い。
野球部員という以外に接点の無い菰田とはあまり口も利くことが無い。
さらにいつもカウラと一緒に行動していると言うことで、島田やキムからかかわらないように言われていることもあってヒンヌー教の教祖と言う以外のイメージがわいてこない。
「リゾットねえ、確かにシュペルター中尉のそれは絶品なんだよな」
菰田はそのままコンビニの袋から握り飯を取り出して包装を破る。
「そうだな。これはなかなか捨てたものじゃない」
「そうでしょベルガー大尉!」
我がことのようにカウラに視線を移す菰田。だがすぐにカウラの顔が誠を見ていることに気づいて視線を落とす。
「シーチキンかよ。男ならそこで梅干じゃねえのか?」
「西園寺さんが食べるわけじゃないでしょ?好きだから仕方が無いんですよ」
そう言って握り飯にかぶりつく菰田。
「残りは明太子と高菜ねえ、いまいちぱっとしないわね」
「クラウゼ少佐。余計なお世話です」
テーブルに置かれたやかんから番茶をコップに注いでいる菰田。
「そう言えば部屋なんですけど、三つのうちどこにしますか?」
明らかにアイシャと要を無視してカウラに話しかける。
「私は別にこだわりは無いが」
「それじゃあお前が一番奥の部屋な」
「じゃあ私が手前の……」
「テメエだといつ誠を襲うかわからねえだろ?アタシがそこに……」
「それはやめるべきだな。アイシャより西園寺の方が危ない」
「どういう意味だ!カウラ!」
完全に菰田のことを忘れてにらみ合うカウラと要。
「やめましょうよ。食事中ですし」
誠のその言葉でおとなしく座る二人。そんな二人の態度。誠の言うことは聞くカウラと要。痛い視線を感じて振り返った誠の目の前に、嫉妬に狂うとはどういうことかと言う見本のような菰田の顔があった。




