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「あんな化け物勝てるわけがないじゃん」
圧倒的な力の前におかしくなったのか、控え室へ戻ってきたエリスは満面の笑みを浮かべていた。
落ち込んでいないだけいいが、これはこれでなんか怖いな……
「お疲れ様でした。私でもどちらに転ぶか分からないような相手ですので仕方がありませんよ」
「そうよ。文句があるなら全て召喚士にぶつけなさい」
「もう作戦たてるの嫌になってきたわ……」
理不尽過ぎる。
負けたら俺のせいになるし、勝っても俺のおかげではないしわりに合わなくね?
「──三厳殿はしっかりやってくれておる」
そんな落ち込みそうな俺をフォローしてくれたのはまさかのアークだった。
「…………アクルセイドの言う通り……」
「そうでござるな。──もう大丈夫でござるか?」
「ああ、心配をかけてすまない。今はもう落ち着いている」
戻ってきたアークを囲んで話が広がっていく。
もちろん俺は蚊帳の外だ。
それはそれでいいんだけどな。
うん。
悲しくなんてないんだからねっ!
うわ、俺気持ち悪いな……
「──それで三厳殿、次は誰が出るのだ?」
「次は正成だな。──相手は第2貴族。急進派の中で最強にして最凶と呼ばれるルール上では一番厄介な相手だ」
「それならば私が戦うべきではないでしょうか?」
「そうよ。ござるが弱いとは言わないけど、さすがに荷が重すぎるわ」
「三厳はござるの人の扱いが酷すぎるよ」
「拙者は正成でござる……」
もういや……
少しは俺にも優しくして欲しい。
「…………お兄さん……大丈夫?」
うなだれる俺を慰めるようにサシャが頭を撫でてくる。
少し元気が復活した。
しかしそれを通り越して少し恥ずかしさの方が勝ってしまったから、「サシャ大丈夫だよ」と優しくサシャの頭を撫で返して逃げた。
「正成、行くぞ!」
「御意!」
そしてまた通路での作戦会議。
「拙者はどうしたらいいでござるか?」
「正成は忍だよな?」
「当たり前でござる!」
「ならこの作戦を完璧に実行してくれ」
正成にこの戦いにおいて一番頭を使ったかもしれない作戦を伝える。
それを聞き終えると正成は笑みを見えた。
「合点承知でござる。忍としての戦いをたっぷり見せてくるでござる」
「ああ頼むぞ。──後のことは俺の指示だということにしておくから」
「その必要はないでござる。──拙者は忍。闇に生きるが我定めでござる」
「そうか。勝ってこいよ」
「もちろんでござる!」
そして準備をする正成を残して俺は控え室へ戻る。
次はあいつらへの説明に追われるのかと思うと気が重くなるが、それ以上の戦い方を正成が見せてくれるだろう。
「──それでどうしてリリィや私じゃなくてござるなのよ?」
「正成が適任だからだよ。あいつはこのメンバーの中で卑怯な手への対処が一番うまいんだ」
「なるほど……これまで正々堂々戦う相手が多かったから悪れかけていたが、相手は魔族であったな」
「そういうことだ。今回の相手は急進派の魔族だから降伏は認められない。その上近接戦闘も得意としているから召喚を使えない事態に陥る可能性もある」
「それならば──」
リリィも思うところがあったのだろう。
言葉をそこまで出して引っ込める。
なんだかんだ言っても責任感の強いやつだからな。
一番危険な戦いを自分が背負いたかったんだろうな。
「リリィじゃダメなんだよ。相性が悪すぎるんだ。──そしてミリエリ姉妹では勝機がない。サシャは論外として、アークはヴァレリア戦に当てないといけなかった。ここは正成に賭けるしかないところだったんだ」
戦闘順を決める際に注意しろとゼノから言われたのは殺すことをいとわない急進派の3人に誰を当てるかだった。
1人目のウレーヌスはその性格を利用してサシャを、2人目のヴァレリアは剣術使いだからアークを当てるところまではすぐに決まった。
しかしこの3人目はすぐには決まらなかった。
リリィとの相性さえなければ任せていただろう。
ただリリィを出して負けてしまったらその先の打つ手がなくなってしまう。
だからこその正成という選択。
問題はあいつが覚醒してくれるかどうか。
ただそれに賭けるしかなかったんだよな……
「正成殿は大丈夫なのか?」
「問題はないだろう。あいつはこの戦闘のためだけに俺と特訓を繰り返してきた。今のあいつなら余裕で対処ができると思う」
「三厳がそう言うなら信じるしかないね」
「はい。そうですね」
「いざという時は怪しまれてでも俺がどうにかするさ」
そして始まりを告げるアナウンスが響き渡った。




