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RPG~召喚から始まる魔王討伐~  作者: 柊雪葵
第4章 決戦! 魔王城
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「アークお疲れ様。身体的なダメージは大丈夫か?」



「少し腕が痺れているが特に問題はない」



「そうか。なら俺は先に控え室へ戻っとくな」



「かたじけない」



 勝利したというのに顔を上げることのないアークを残して控え室へと戻る。



 あいつの気持ちが分からないわけではない。

 殺し合いをしていたとはいえ、あのような末路は望むものではなかっただろう。

 今必要なのは1人で考えを整理する時間だろう。



「──アクルセイドよくやったね! ……ってあれ?」



「すまないがアークはしばらく1人にしてやってくれ」



「さすがにあれは堪えたでござるか……」



「そうみたいだな」



 エリスを先頭にした歓喜の輪は一瞬にして終息した。

 しかし俺たちまで引きずっているわけにはいかない。



「こっちはこっちで次の試合の話をしよう。──第3試合はエリス。お前に任せる」



「分かった!」



 エリスは元気な返事をする。

 今から殺し合いの舞台に立つというのに相変わらず能天気なものだ。



「そして今回の作戦だが──俺はあわよくば勝つでいいと思っている」



「えっ?」



「せっかく1勝1敗にできたんだからここは勝ちにいくところでしょ!?」



「まあまあ、ミリスは落ち着いてください。そんなに感情を逆立てていては試合の前に疲れてしまいますよ」



 いつものように俺に突っかかってくるミリスをリリィが宥める。

 ミリスは「仕方ないわね」と言い椅子に座り直した。



「次の対戦相手についてなんだが、バルハクルトが出てくる」



「あの城の持ち主でござるか」



「そうなんだが、あいつはまともに勝ちにいくならばとても厄介なやつだ。相性次第では魔王よりも倒しにくい相手になる」



 ゼノから聞いた限りではこのメンバーで勝てる可能性があるのは正成(まさなり)だけ。

 しかしここで正成を投入できない理由がある。

 それならば敗けを前提に戦った方が賢明だろう。



「ずっと気になっていたのですが、どうしてマスターは相手の情報を知っているのですか?」



「それは私も気になるかも」



「普通に考えれば情報元はゼノ殿でござる。汚い手段でござるが召喚士殿の契約の効果で信憑性の高い情報を引き出せるでござる」



 汚いって……

 いや、確かに汚い手段だけどさ、本人の前でそれを言うか?



「…………お兄さん……悪どい……」



「いや、友好的に情報は聞き出しているからな……」



「そうなんですか?」



「噛み合わせが悪ければ俺が魔王と戦う前に5敗してしまう可能性もあるんだ。それを望まないのは俺たちだけでなく魔王も同じということだよ」



「確かに魔王さんは戦いを楽しみにしていましたからね」



 突っかからないように気を付けているのだろうか、ミリスは「もうついていけないわ」と呟く。

 燕雀(えんじゃく) (いずく)んぞ鴻鵠(こうこく)の志を知らんやとはよく言ったもので、俺にも理解できないからな……



三厳(みつよし)、それでどうして私なの?」



「別にミリスでも良かったんだが、戦闘慣れをしている分勝てる可能性がある試合に使いたかったからだな」



「そっか。それで策は何かあるの?」



「全力でぶつかる。──多分攻撃を全て防がれると思うからそうしたら降伏する。以上だ」



 我ながら策のさの字もない。

 エリスも苦笑いを抑えられないくらいだ。



「降伏が認められなければ試合は終わらないでござる」



「それは問題ない。バルハクルトはああ見えても魔族の中では魔王と同じ穏健派だ。降伏する相手を殺すような真似はしない」



「三厳がそう言うなら大丈夫だね。それじゃ行ってくるよ」



 エリスは気を引きしめて闘技場へと向かっていく。

 後はどれだけ彼女が善戦できるかどうかだろう。

 できることならば善戦しないで欲しいんだけどな。



「──ええ、それでは気を取り直して第3試合へ参りましょう! 冒険者チームは『パラディンのエリス・シュレイザー』。対する我らが魔王軍は『第1貴族──バルハクルト』! 両者の入場です」



 そして結界が発動して試合が開始される。



 エリスとバルハクルトが何かを離している様だが、ここからではその声は聞こえない。

 そして距離を取り直して戦闘が始まった。



「やはりエリスが先に仕掛けたわね」



 控え室に設置されたモニターには防御陣を展開してバルハクルトに立ち向かっていくエリスの姿が映っている。

 しかしその攻撃は想定通りにバルハクルトへ届くことはない。



「相手はまったく力を出していませんね。やはりこれでは力の差がありすぎます」



「リリィなら勝てそうか?」



「やってみないと分かりませんけど半分半分。──いえ、それ以下かもしれません」



「エリスも随分強くなったけど、リリィでも無理なら勝てるはずもないわね……」



 おそらくそれは止めどなく攻撃を繰り返しているエリスが一番理解しているだろう。

 それでもエリスは手を緩めることはない。



 ただ今まで戦ってきた集大成を見せるように鋭い突きを放ち続ける。

 あわよくばなんて言いはしたが、実際に戦っている姿を見るとそんな奇跡は起こらないと分かってしまう。



 もしあの時バルハクルトと戦っていたら俺たちはここにいたのだろうか……

 そんな弱気になってしまうほどにバルハクルトの強さは圧倒的だった。



「もう心が折れたわね……」



「はい。でもエリスは頑張りましたよ」



 エリスの攻撃がついに止まる。



 そしてバルハクルトに何かを言った。

 間違いなく降伏を伝えたのだろう。



「──何とも呆気ない幕引きだあ! 冒険者チームのエリスが圧倒的な力の差を前に降伏を宣言! バルハクルト様がそれを受け入れたためこの勝負は決まったあ!」



 結界が破れてエリスがこちらへ戻ってくる。



 この呆気ない展開にか、それとも降伏を認めたバルハクルトに対してか場内からは大ブーイングが起きていた。



 これで1勝2敗。

 計画通りとはいえ、俺たちは負け越した状態で中盤戦を迎えることとなった。

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