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RPG~召喚から始まる魔王討伐~  作者: 柊雪葵
第3章 魔王城への道
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「ござるヤバいな……」



「そうだな……これは予想外だった」



「いったい何が起こってるのよ! あんたたち2人しか状況が分からないんだからちゃんと説明しなさいよ」



「気配を消した状態で道具も使わずに城壁をよじ登ってる」



 ここから見る限りでは城壁に突起物のような物はない。

 それなのに正成は壁に張り付いてするすると登っていっている。

 その姿はまるで蜥蜴の様だった。



「なあ召喚士、忍っていうのは人であることを捨てているのか?」



「あれを見る限りはどうもそうみたいだな……」



 明らかに人智を越えているそれに俺も戸惑うことしかできない。

 てか忍について聞かれたところで文献による知識しかないからな。



 あんなのが元の世界にいたらそれこそビックリ人間としてテレビに出てるだろう。

 いや、忍だからそういうのは隠して生きてるのか?



 そんなくだらないことを考えている内に正成は城壁の頂上に登り終えていた。



 どうみても5ユーレ以上はある城壁なのになんでそんなに早く登りきれるんだよ……

 リアル忍者恐るべし。



 そして登った時よりも早く降りたのか、正成から「準備完了でござる」とメッセージが届いた。



「それじゃ俺たちも行くとするか」



「はい。──我の記憶の欠片よ。時を紡ぎ我をかの地に誘い賜え──ワーティ!」



「待っていたでござる。ここからはどうするでござるか?」



 先に潜入した正成はしっかりと人気のないところで俺たちを待っていた。



 魔族の城というからもう少し不気味な感じであったり、おかしな仕掛けがあったりしそうだが現段階ではまともな城だ。

 まとももなんも城のことなんて詳しくないけどな。

 ただ始まりの街の王宮より立派だし綺麗だわ。



「どうするも何も正面突破しかないだろうな……」



「なんでここまで来てそんなに適当なのよ……」



「気配を消せないやつが文句を言うなよ……お前らが見つかるから隠密ができないんだぞ?」



「それは……ごめんちゃい」



 だからエリスはなんでそうもいい歳してそんなことをするんだ……

 28の女が舌を出して笑いながら謝るなよ……



「──まあいい。目標は敵の親玉の元。城を壊さない程度に各自暴れてくれ。──それじゃ行くぞ!」



「──汝、我を、我が友を守る盾となれ──バリードシーク!」



「うむ、援護は任せよ」



 リリィは防御魔法を、アークは宙に7本の剣を展開する。



 隣には気配を殺している正成。

 後方ではリリィとサシャを守るようにミリエリ姉妹が防御陣を形成している。



 当初の予定通りに隊列は整った。

 後は俺がどれだけ最前線で戦えるかどうかだな……



「──そんな顔してんなよ。辛気くさいのが移るだろ」



 唯一みんなに知らせた計画とは違うのはゼノが気配をたって隣にいること。

 攻略の最後のピースとして、そしてこの城の案内役として結局は同行してもらうことにした。



 その結果耳元でささやくように文句を言われるのだから判断を誤ったのかもしれない。

 余計に辛気くさくなりそうだわ……



「まずはここの階段を上に進むぞ。──正面突破とは言うが、警備が厳重なところをわざわざ進む必要はない」



「敵が少なそうなこっちから行くぞ」



 声を落としジェスチャーを加えながら後方に指示を出す。

 さすがにここで大声を出して気付かれるへまをするわけにはいかない。



「それはいいけど本当にこんな道で大丈夫か?」



「大丈夫だ。問題ない」



 アークの問いに対してフラグを立ててしまった気がするが、ゼノが大丈夫だと言ってるのだから問題はないだろう。



「その自信はどこからわいてくるのかしら……」



「まったくだよ……」



「まあ、こういう時のマスターの悪運はムダに強いですから」



 果たしてリリィのそれはフォローとして成り立っているのだろうか?

 悪運とかムダとか言われてて地味に辛いんだが……



「角を曲がったところに見回りが1人いる。しっかりと一撃で仕留めろよ」



 ゼノのナビに従って後続を手で制止する。

 壁を隔ててはいるが相手の気配が手に取るように分かる。

 不意討ちにはなるが、姿を現した時に一撃で仕留めてやる。



 3、2、1、今だ──



「──侵」



 おそらく「侵入者だ!」と叫ぼうとしていた敵を抜刀術で一刀両断する。



 手に残るイヤな感覚。

 しかし前みたいに耐えられない吐き気はない。

 これならまだなんとかいけそうだ。



「先を急ぐぞ」



 残ったこの死体は見つかれば騒ぎになるだろう。

 跡形もなく消してしまえればいいのだが、そうすれば逆に気付かれるリスクが上がってしまう。

 それは得策ではない。



 そして俺たちは順調に城の中を進んでいく。

 それもこれもゼノの適切な判断があってのことだが、黙っていれば俺の功績だ。



 そんなアホなことを考えていた矢先。

 背筋に悪寒が走った。



「バルハクルト卿の側近──ジルバークのお出ましか……こいつは厄介な相手だぞ」



 ゼノに言われるまでもなくそんなことは分かっている。

 あれだけ殺気を出されたら気配に鈍感な後ろの連中でも気付くだろ……



「全員戦闘体勢! 正面からぶつかるぞ」



「ちょ、ここは普通撤退でしょ!?」



「この状況で撤退なんて選択肢はねぇよ!」



「──賢明な判断です。ただ抵抗して死ぬか抵抗せずに死ぬかの違いに過ぎませんけれどね」



 丁寧な言葉遣いだが、完全に俺たちを見下していると分かる話し方でそいつは現れた。



 1ユーレ半の大きな身体は完全に前方を塞いでしまっている。

 後方は長い廊下。

 通常の撤退は不可。

 リリィの魔法ならなんとかなるだろうが、戦わずして逃げるような相手ではない。



「それはどうかな?」



「はっはっは、戯れ言ですね。5人で私に勝てるとでも言うのですか? 貴方は声を出すまではうまく気配を消していましたが、後ろの男と女3人はバレバレではないですか」



 後ろの男はおそらくアーク。

 そして女3人ということは正成とサシャの存在はバレていないと言うわけか。



「──刺客として送り出した術士の反応が消えたときはどうするかと思いましたが、まさかこうやってノコノコ自分達から殺されに来てくれるとは」



 あの術士を放ったのはこいつか……

 よし、手加減はいらないな。



「ご託はいい──」



 そして俺は単独で飛び出した──

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