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──交錯。
挨拶がわりに放った右手での一撃は大方の予想通り回避されてしまった。
そしてすぐさま間合いの外へと逃げる。
ジルバークの追撃はなんとかアークが防いでくれたが、手刀であれだけの速さとなれば容易に踏み込みにくいな……
「そのような術士が剣術をかじった程度の攻撃では私を倒すことなどできませんよ」
いくら利き腕が右ではないとはいえ、これでもクロスドミナンスなんだけどな……
まあこいつに通用しないようじゃ魔王戦では使えない。
それがわかっただけでもよしとするか。
「なら少し本気を出すことにするわ!」
もう一度大きく踏み込んで右手で一閃をしかける。
スピードは牽制程度に少し早めただけ。
しかしだからこそ効果がある。
ジルバークがさっきと同じ動作で後ろへ回避する。
さあ、準備は整った。
「まったく……舐めたまねをしてくれますね!」
ああこの大一番で失敗するかね普通。
いくら薬指と小指に挟んで投げないといけないといっても、これだけ大きな的の頬をかすめるくらいの精度じゃクナイも使えねぇわ……
「滅びを──レグナサールト!」
自分の城ではないというのにジルバークは魔法で火の玉を放った。
これは間違いなくあれだ。
さっきの俺の攻撃で完全にキレてるやつだわ。
それでも威力はそうでもない。
月詠のローブとバリードシークのコンボがあれば正面から受けてたっても問題はないだろう。
──問題ないはずだった。
「はっ!?」
火の玉は俺の頬をかすめていった。
まさかのこいつもノーコンか……
そんなことを一瞬考えてしまったが、狙いは俺じゃなかったことに気付く。
「──リリィ、避けろ!」
叫ぶも時既に遅し。
火の玉はミリエリ姉妹の防御陣を突き破り、俺の防御に集中していたリリィに直撃した──はずだった。
「えっ!?」
予想外の攻撃に対応しきれていなかったリリィの身体が、火の玉を避けるように突き飛ばされる。
「正成さーん!!」
「はあ、もう一匹鼠がいましたか……まあ、どうせ皆殺しですから順序が変わったくらいどうということもありませんけどね」
リリィの悲痛な叫び。
ジルバークの蔑むような言葉。
視界がはれたそこに正成の姿は跡形もない。
「クソがー!」
左手を刀にあてさっきよりも強く踏み込む。
「篩水流抜刀術奥義改──霧雨一閃!」
霧雨一振に魔石による雷属性の攻撃をプラスした一撃。
最大火力の技で勝負をしかけた。
「その程度──っ!」
攻撃を回避しようとしたジルバークの足が止まる。
そしてそのまま雷がその身を焦がした。
「この私としたことが……」
「二乃型──逆さ時雨」
攻撃をもろに受けても跪きながらまだ生きているジルバークにとどめの一撃を放つ。
そこにはもう殺戮への躊躇いなどは残っていない。
さすがに首を落としておけば生き返ることもあるまい。
「さっさと先に進むぞ!」
「マスター、でも、正成さんが!」
「そうだよ。ござるの人が──」
「──お前らがついてこないならそれはそれでいい。俺は1人で先に進ませてもらう」
「召喚士殿、某もお供しよう」
「アクルセイドまで!? あんたたちに心はないの? 仲間が殺されたのよ!?」
「だからこそだミリス殿。正成殿の死を無駄にすることが一番の冒涜ではないか?」
「それは……」
「わかったなら先を急ごう。これだけ派手にやったのだ。時間はないぞ」
そして俺たちは城の中を駆け抜けていく。
「これでよかったのか?」
「後回しにするだけだ」
ゼノの姿こそは見えないが、きっと呆れた顔をされてるんだろうな……
まあ、それも仕方ない。
だって──
「召喚士、次を右に曲がった先がバルハクルトの部屋だ」
今はそんなこと考えてる場合じゃないか……
さて、貴族様との邂逅の時間だ。
「──他人の城で好き勝手暴れよって……」
ってなんでわざわざ部屋の外まで出てきてるんだよ……
「──まあいい。これ以上暴れられても困るから中に入るがいい」
なんて思っていたらあっさりと部屋の中へ通された。
うん。
ここは背後ががら空きだから攻撃するところかな?
「止めとけ」
そう思って左手を刀にあてたところでゼノから止められた。
せっかくのチャンスだが、ゼノにも何かしらの考えがあるのだろうからやめておくか……
そして俺たちはムダに広いバルハクルトの部屋で、ゼノと同じように人の形をしたそいつと対面した。




